第4話棚にあるワーム
「あ、由紀ちゃん、あったよ。これこれ、これ探してたんだ」
ゆんは、棚に置いてあったピンク色のワームをかごに入れた。尻尾のところがひらひらとしていて、匂い付きと袋に書いてあった。ゆんは、かごに入れたワームを手に持ち、由紀に見せつける。
「ちょ……顔に近づけないでよ。分かったから。んー、これは釣れそうだね。私も買っておこうかな。ゆんがピンク買うんだったら、黄色でも」
「あー、黄色もいい、由紀ちゃん、買ったら一個ちょうだい。ピンクの一個あげるから」
「いいよ。それじゃ、黄色買うね。ゆんも買ったら分けてね」
「分かってるよ。次のメバル釣りが楽しみだね」
ゆんは顔を縦に振りながら、「うん」と答えながら由紀を見た。由紀は黄色のワームをかごに入れた。
すると、ゆんが店内に張り出されたポスターに指さした。
「由紀ちゃん、由紀ちゃん。今度、イカキャンペーンするらしいよ」
由紀はゆんが指さしたポスターを見つめた。ポスターの内容には、実写のアオリイカがど真ん中に写っていて、ポスターの下側には竿やエギなどと言った写真が写っていた。
「なんだ、最大半額キャンペーンってすごいな。うーん、イカもやってみたかったし、欲しい……」
ゆんが由紀の顔を上目遣いで見ながら、
「それじゃお金貯めないとね。今度イカ釣り行こうよ」
「うん……、節約しないとな。バイトできればいいんだけどね」
由紀は腕組をしながら、考え込む。ゆんは手を背中の腰に置きながら、ニコリと言う。
「私も節約するからさ。なんなら、バイト一緒に探そうよ」
「んー。釣りの時間が減るのもな。ま、考えとくよ」
由紀はゆんの頭をぽんぽんと撫でながら言った。ゆんは「うん」と言いながら、顔を縦に振った。
由紀はポスターを再度見ながら、胸に拳を置いて、つぶやいた。
「イカか、考えておくかな……」
「それじゃ、私は節約するから、このワームだけで良いわ。由紀ちゃんも会計行きましょう」
「あ、ちょっと待って、針も買っておきたい、ああ、重りも欲しいかな、あ、これも」
「……由紀ちゃん。ちょっとは計画性を持とうね」
ゆんがニコリと笑顔ながら、背中には火のような威圧感、怒りの感情が見える。心なしか、ゆんの顔が真っ赤になっている気もする。
「分かったよ、ゆん。ワームと針だけにするよ。今度お金があれば買うことにします」
由紀はかごに入れてあった商品を棚に戻した。一息吐くと、グッと拳を両手で作り、
「よし、気合入った。イカ釣り用品買ったら、絶対にかごに入ってあった商品買ってやるからな」
「その意気だよ。由紀ちゃん!」
ゆんが述べると、気が変わらないうちに、二人で一階の会計場まで、早歩きで向かった。正直、誘惑が多かった。それだけ胸がときめいてしまう場所だったのは、言うまでもなかった。
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