第3話釣具店
学校の終わりを告げる校内放送が流れる。それと同時に私たちは学校を出た。
「ねえねえ、どこの釣具店行くの?おすすめあるの?」
由紀の腕を掴んできたゆんが言った。由紀はニヤリと気持ち悪い笑みを見せる。
「いいところだよ。フフフ、着いてきなさい」
「笑みが気持ち悪いけれど、楽しみだね。どんなところか分からないけど」
「そこには触れないで……」
電車に乗り継いで、学校から三駅のところに由紀の言っていたお店があった。
外見は木造建築で、ガラス張りから店内の光が明るい。非常におしゃれな雰囲気だった。
店内に入ると、ガラス棚の中には、リールなどが多数並んでいた。品ぞろえも非常に多かった。階段を上がればまだ見ぬ出会いもありそうだ。
「凄いよ……、凄いよ、由紀ちゃん!」
ゆんは目を輝かせながら、ガラス棚にあるリールを見た。由紀は顎に手をおいて、ニヤリと微笑んだ。
「ふふーん。最近見つけたんだよね。しかも、聞いて驚け、一週間前からセール中だ!全品十%オフだ」
「なんだって!お買い得だね。やったよ、由紀ちゃん、買いこまなくちゃ」
「お小遣いの範囲でな……」
由紀はガラス張りのリールを見つめながら、遠い目をしていた。そんな顔を見てか、ゆんは由紀の顔を心配そうに見た。
「え?由紀ちゃん、なんかあったの?」
由紀は額に右手を置いて、「フっ、」と息を吐き、チラリとゆんを見た。
「買いすぎると、今月ピンチになる。実際、ピンチだ」
ゆんは口をぽかんと開けて、呆れた顔を見せた。ハッと気づき、由紀にツッコミを入れた。
「結局、買いすぎたんかい!」
「仕方ないだろ、欲しいものだらけだったんだから」
由紀はポリポリと頬をかいた。ゆんはジトーという目で由紀を見る。
「由紀ちゃんって計画性ないよね」
ゆんの目線がイタイ。何とも言えない気持ちになる。ゆんはため息交じりの息を吐くと、由紀に向かって、口を開いた。
「せっかくだし、なんなら貸すよ。今日は買いこもうと思って、多めに持ってきたし」
由紀はゆんに手を向けて、首を横に振った。
「いや、いいよ。私の予算内で買うよ。お金の貸し借りは友情の破綻の原因になるしね」
腕組をしながら、こくこくと由紀はうなずいた。店内の蛍光灯の明かりが、ガラス棚と反射してまぶしい。
「本当に大丈夫?まあ、そう言うんだったら大丈夫だね」
ゆんはニコリと笑みを浮かべた。それを見た由紀はニコリと笑みを返す。
「それじゃ、欲しいもの買いますか!ゆんは何が欲しいの?」
ゆんは人差し指を上にあげて、店内を由紀と共に歩き出した。
「私はメバル用に、ワームでも買おうかなっと、それと今日は買わないけど竿の方も見たいかな」
「へー、そうなんだ。それだったら、二階にあったはずだよ。行ってみようか」
「うん!行ってみよう」
由紀とゆんは階段をのぼった。多数の釣り具に胸を躍りながら、壁にはあらゆる網がかけられていた。そして、大きな鯛の魚拓が二階の入り口に貼ってあった。
「凄いね。由紀ちゃん。こんな大物釣りたいね」
目を輝かしながら、じっとゆんは見ながら言った。由紀は顔をこくこくとうなずく。
「そうだね、いつかは釣らないといけないね。私たちなら釣れるよ。けどゆんの場合は、目指せ一匹だね」
ゆんを見ながら、由紀はニコリと笑った。ゆんは頬を膨らましながら、
「絶対に由紀ちゃんより早く、大きな魚釣ってやるんだから!」
「はは、楽しみにしてるよ」
そう期待を胸に、二人は鯛の魚拓の前で立ち止まりながら誓った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます