夜.一

 俺はヒナというジュソのことを何も知らない。


 だが、普段のミの様子を見るとそれがミにとって、とても大きな存在であることが見て取れた。

 ただ単にジュソと戦う術として、武器としてではなく、もっと他の、それこそ家族のような、理由なく大切に思える存在、そんな風であった。


 ヒナという存在を許すミに対しては依然、愚かであり、浅はかであり、危険を知らない命知らずという感情以外持ち合わせることができない。


 ただ、夜になると唄が聞こえるのだ。

 ヒナが口ずさむ唄が。

 どこか聞き覚えのある旋律に、もしかしたら生前はそこまで遠くない過去の、俺と近い故郷の娘だったのだろうかと考えてしまう。


 ジュソを人として見ることを許せない俺は、その唄を聞くたびにどこか懐かしい思いにもなり、未だそのような感情を持つ自分を戒めるのであった。


 ジュソは人ではないと。

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