ジュソ祓い.一

 人の辿る人生の道程とは、枝分かれした川の流れに似ている。


 例えば、笹舟を作り川に浮かべてやる。


 すると、手を離れたその瞬間から笹舟の行方を知ることはできない。


 西へ行くのかと思いきや、何かの拍子で東へ行くのかもしれない。

 はたまた途中岸に打ち上げられてしまうかもしれない。

 そろそろ海へ流れ出ただろうかと想像するのは容易いが、川の流れは思う程速くはないのだ。


 肉が軋む耳触りな音と共に、獲物の体から血に濡れた刃を引き抜く。


 瞬間、考えてしまう。


 ここは、わたしのいるここは、一体何処なのだろうと。


 笹舟のように流れている最中なのかと。

 もう、海まで着いてしまったのかと。


 何かきっかけがあって、例えば、誰かが何気なく投じた小石のようなものによって、わたしの進む道は簡単に変わっただろうかと。そう、思うのだ。


 申し訳ありません、母上。


 眼前で苦しみ、醜くのたうち、消えゆく化け物の断末魔を耳に、ゆっくりと瞼を伏せる。


 このような娘をどうかお許し下さい。

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