事件の真相(二)

     フロリダ州 フローラの別荘 二〇一五年七月七日 午前一時五〇分

 予想外の真相を知り驚きを隠せない香澄たちをよそに、FBI捜査官のダグラスとレベッカは次の質問をアルバートへ問いかける。

「その話は後ほど、ゆっくりと聞くわ。続いて二つめの質問よ、アルバート。……あなたたちがワシントン大学で二つの事件を起こした理由は、一体何なの?」

 落ち着いた口調で問いかけるレベッカに対し、アルバートはここでもただ淡々と質問に答えていく。

「あぁ、そのことか? 理由は簡単だ……俺たち三人の手で、だよ」

「俺たち? 君以外の二人というのは……エリノアに危害を加えていた、シンシアとモニカのことかい?」

「そうだよ、デイル捜査官。あいつらも俺と同じように、ただの研究材料として実験に利用される日が続いた。いつか復讐してやろうと思っていたけど、当時の俺たちはまだ子どもだったんだ。子どもの状態ではどうあがいても、大人のあいつらには勝てない。……そこで俺たちは大人になるのを待った。そして“大学でシンシアとモニカが何か小さな事件を起こせば、きっと二人は精神鑑定に出される”と俺は考えた。そうすれば否が応でも、アーサーとリサはこっちへやってくる。……すべては俺の計算通りだったんだよ!」


 驚くべき真相が、アルバートの口から語られる……数ヶ月ほど前にワシントン大学で起きた事件の黒幕は、アルバートだったのだ。そして事件を起こした理由についても、“自分たちを作り上げたアーサーとリサをおびき寄せるために行った”と、アルバートは自慢げに語り続ける。


 だがそんな自分勝手な理由が通るはずもなく、横で話を聞いていた香澄が強く問いかける。その気持ちは香澄だけでなく、ジェニファーやエリノアたちも一緒。

「ふざけないで! どれだけ大学側に迷惑が……そしてエリーの心にどれだけ深い傷を残したと思っているのよ!? あなたも結局……ルティア夫妻と同じよ。自分さえ良ければ……そして自分の利益のことしか考えず、人の気持ちを平気で裏切り踏みにじる犯罪者よ!」

「ふん、何とでも言うがいいさ!」

 必死な香澄に説得にも、まったく耳を貸そうとしないアルバート。あまりにも身勝手な言動や態度を見せるアルバートに対し、思わず頬を叩きたいと衝動になる香澄。だが“感情で動いては彼らと同じね……”という自尊心が働いたのか、香澄は何とかその気持ちを心の奥底に抑え込む。

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