事件の真相(一)

     フロリダ州 フローラの別荘 二〇一五年七月七日 午前一時三五分

 本格的にダグラスとレベッカがアルバートの取り調べを行っており、その横で香澄たちが順番に座っている。……果たしてアルバートは、何を語るのだろうか?

「ここは警察や取り調べ室などではないから、あくまでも形式的な質問だけにするよ。では最初の質問に答えてくれ。……ルティア夫妻を殺害したのも君の仕業かい?」

 ダグラスたちは【ルティア計画】の創設者でもある、ルティア夫妻の死の真相について問いただす。最初は何も答えないと思っていた一同だが、以外にもアルバートは事の真相を語り始める。

「はい。俺がアーサーとリサを殺害しました。殺害方法は……言わなくても分かりますよね?」

正体がばれたことで何かの区切りがついたのか、落ち着いた口調で犯行を認めたアルバート。


 するとそこへレベッカが、

「……どうしてなの? 確かに普通とは違う形で君は生まれたけど、それでもルティア夫妻はあなたの親でしょう!?」

生みの親でもあるルティア夫妻の殺害動機を問いかける。

 しかしアルバートは悪びれた様子を見せることはなく、“あんたたちは何も分かっていない!”と言いたげだ。

「……人間として生まれたあんたたちに言っても分からないと思うけど、俺はんだ。それもアーサーとリサたちの“偉大な歴史を残したい”という自己満足のために、俺は誕生した。いや、俺だけじゃない……シンシアやモニカ、そしてエドも……」

「ちょ、ちょっと待って。何でそこでエドの名前が出てくるの!? あなたが『NO.Ⅳ』ということは、エドが『NO.Ⅲ』? 確か『NO.Ⅲ』のファミリーネームは“レイブン”ではないし、年齢も違うでしょう」

 ルティア夫妻が残したカルテとアルバートが語る自供では、まったく内容が異なっている。だが“それは間違っていない”と述べた上で、アルバートが事情を語る。

「確かだったかな、エドのファミリーネームは。表沙汰にはなっていないが、アーサーには一人の姉がいたんだ。その姉もリサと同じ子宮内膜症を患っていて、彼女も【ルティア計画】の被験者に選ばれた。だからそっちの世界の常識で言うと、俺とエドはなんだよ!」

「そ、そんなことがあったなんて……」


 ここにきて驚愕の事実が判明する。香澄たちは『ルティアNO.Ⅲ』は今回の事件と無関係だと思っていたが、実はその正体はエドガー・レイブンだったのだ。あまりに以外すぎる真相を知り、香澄たちは混乱してしまう。

「そ、そんな……私が顧問を務めるサークル部員の中で、エリー以外がクローンだったなんて……」

 まさにSF映画のような真相が語られ、早くもフローラの精神は疲労してしまう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る