対決! 香澄vsルティアNO.Ⅳ(三)

     フロリダ州 フローラの別荘 二〇一五年七月七日 午前〇時四〇分

 ほんのささいな発言から、香澄とジェニファーの尊敬を手に入れたアルバート。まさに両手に花という状態で、心なしかアルバートの顔もどこか照れ笑いを浮かべている。そして香澄たちに誘われるがまま、自分の考えを述べるアルバート。

「おそらくエリノアは、シャンパン入りの瓶に毒を入れたんだろうね。実際にエドが亡くなる少し前に、エリノアがシャンパンコルクを開けていたのを俺が偶然見ていたからね。きっとコルクを開けた瞬間に、すかさず毒を入れた。うん、間違いないよ!」

エリノアの不審な行動を元に、自分の考えを述べながら推理を始めるアルバート。

「……そう考えると、あの時偶然カスミがシャンパングラスを割ってくれなかったら、僕らも亡くなっていたんだね。いや、恐ろしいな……」

 

 そのように仮説を述べ続けるアルバートだが、ここで再度香澄が彼の口を止めてしまう。

「……ちょっと待って。エリーがシャンパンに毒を入れたと考えると……彼女にはエドを殺害するつもりは、なかったのではないかしら? どうも腑に落ちないわね」

「? 香澄、それはどういうことですか?」

「考えても見て、アルバート。エドガーはまだ二〇歳なのよ。シアトルの法律では、と定められているでしょう? 真面目な性格のエド自身も、そのことはしっかりと認識していたはずよ」

「それは確か……フローラが“今日は無礼講なので、学生たちの飲酒も特別に許可します!”と言ってくれたからでは? だからエドも“今日は特別な日だから”と思って、シャンパンを飲んだのだと思うな」


 あくまでも“エドガーがシャンパンを飲んだのは、フローラの何気ない一言がい理由”と主張を続けるアルバート。しかし“その主張を通すにはさすがに無理がある”と、ダグラスも続けて反論する。

「アルバート、君は重要なことを忘れていないかい? あの時フローラが“学生の飲酒を認める”と言ったのは、なんだよ。……さすがにフローラが何をしゃべるかなんて知ることは、マーティーとドグの名コンビでも難しいと思うよ? ……仮に僕がエドガーを殺害するつもりで毒を仕込むなら、コーラやソーダに入れるけどね。あくまでもに入れるとしたら……ね」

“飲み物にいれるなら”という言葉を強調しながら、ダグラスはまっすぐアルバートの目を見つめる。

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