対決! 香澄vsルティアNO.Ⅳ(二)
フロリダ州 フローラの別荘 二〇一五年七月七日 午前〇時三〇分
ついにエドガーを殺害した犯人が判明し、これまで緊迫した空気にも一点の光が灯る。だがフローラの別荘は少し道路から入り組んだ場所にあるためか、警察の到着ももうしばらくかかりそうだ。
ソファーに一人座るアルバートの元へ、水の入ったコップを差し出すダグラス。“ありがとうございます”と言いながら、水を一気に飲み干すアルバート。
「……どうだい、アルバート。少しは落ち着いたかい?」
「はい。……先ほどは失礼しました。つい頭がカッとなってしまって」
表面上は大丈夫と語るアルバートの顔を見て、そっと肩に手を置くダグラス。ダグラスに続いて、香澄とジェニファーもアルバートの様子をうかがっている。
しかし突然弟を失った悲しみを抑えきれないアルバートは香澄たちへ、どうしてこんなことになったのか訴えかける。
「ごめんなさい、アルバート。それは私にも分からないわ。ダグラス、エリーはどうしてこんなことをしたのでしょうか?」
「それは今後の取り調べで分かるんじゃないかな? とにかくもうしばらくの辛抱だよ、みんな」
「それもそうね。とりあえず最悪の状況は乗り越えたわ。後は警察の到着をのんびりと待ちましょう」
だが香澄の言葉もアルバートには届いていないようで、相変わらずエドガーを殺害したエリノアへの恨みを募らせている。
「
抑えきれない感情を吐き続けるアルバートだが、そこへダグラスが彼の気持ちを抑えつつも質問を投げる。
「アルバート、僕から一つ質問してもいいかい?」
「……何でしょうか?」
少し迷惑そうな表情を見せるアルバートだが、特に気にすることなく話を続けるダグラス。
「まだ断定は出来ないんだけど、僕らはどうしてエドガーが亡くなったのかいまだに分からないよ。……君はどう思う?」
「どう思うって、さっきあなたたちが言っていたじゃないですか? 何者かが……いえ、エリノアが毒を入れたって。俺はその話を聞いただけなので、詳しいことは何も……」
両手を前に組みながら、ありのままの事実を語るアルバート。
長い沈黙に耐えられなかったのか、二人の間に香澄が割り込んでくる。
「……ここだけのお話ですけど。私はタイミングを狙って、エリーが食べ物に毒を入れたのではないかと思っています。動機は分からないけど今頃レベッカたちが事情聴取をしているから、いずれ判明するでしょう」
「わ、私も香澄と同意見です。もそう思いますよね?」
「……詳しいことはまだ断定は出来ないけど、僕もそう思うな」
必死に香澄たちがエリノアの毒混入方法について議論していると、そこへアルバートが意見を交える。
「俺は何らかの方法でエリノアが飲み物に毒を混入した……と思いますよ。もし食べ物に毒を入れたとしたら、今頃俺たちも亡くなっているはずだからね」
自信を見せるかのように言い張るアルバートだが、そんな彼の回答に疑問を持ち始めるダグラス。
「確かにその可能性もあるね。そうか……君はそういう風に思っていたから、“毒が飲み物に入っている”と私たちへ教えてくれたんだね。……君の冷静かつ的確な推理力には、僕も驚いたよ」
「いえ、俺の考えなんて大したことありませんよ」
そう謙遜するアルバートだが、現役FBI捜査官のダグラスに褒められたためか、その顔にもどこか照れ笑いを浮かべている。
意外な一面を見せるアルバートに、香澄とジェニファーの視線も一気に集まる。さらにアルバートの考えを知りたいと思ったのか、質問を続ける香澄たち。
「すごいわね、アルバート。まさに理にかなった推理ね! ジェニーもそう思うでしょう?」
「えぇ、頭の良い男性って尊敬します。……せっかくなので、もっとあなたの考えを聞かせてください!」
「い、いや……参ったな」
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