Whereabouts of psychological warfare(心理戦の行方)
対決! 香澄vsルティアNO.Ⅳ(一)
フロリダ州 フローラの別荘 二〇一五年七月七日 午前〇時〇〇分
一通りの事情聴取や香澄たちによる議論などが終わり、日時は七月七日午前〇時を迎えた。暗い闇が外を支配する時間帯となり、フローラの別荘では緊張感が漂っている。
そんな中レベッカが香澄たちへ、犯人の目星がついたことを皆へ伝える。
「みんな、聞いてちょうだい。さっき事情聴取をしたおかげで、誰が毒を持ってきたか分かったわ!」
「えっ!? それ本当ですか、レベッカ?」
突然の発表に動揺を隠しきれない一同のなか、レベッカに問いかけるジェニファー。“えぇ、もちろんよ!”と述べた上で、
「時間がないから単刀直入に言うわ。犯人は……あなたよ!」
自信に満ちた表情と声でレベッカが指差した先にいたのは、なんとエリノアだった。すると皆の視線が一斉にエリノアへと集まる。だが当の本人は突然犯人呼ばわりされたことに、目を点にしながらも混乱している素振りを見せるエリノア。
「……えっ!? な、何でそこで私の名前が出るんですか!? こ、根拠は何ですか!?」
「あくまでもシラを切るつもりね。いいわ、あなたが犯人だという決定的な証拠は……これよ!」
そう言いながらレベッカが皆の前に出したもの、それは一本の小瓶だった。
先ほどダグラスとレベッカが事情聴取をした際に、エリノアが持っていたバッグから発見したもの。これは動かぬ証拠だと思ったレベッカは、エリノアに気付かれないようにこっそりと小瓶を抜き取っていた。おそらくダチュラを入れるために使用されたもので、毒を混入後処分する時間がなかったと思われる。
「エリノア。事前にあなたはこの小瓶に毒を入れておき、パーティーの途中で食事を入れ替えるタイミングを狙って混入した。……違うかしら?」
「ち、違います。そ、その小瓶は今日パーティー会場に来る前のお店で、たまたま見つけたものです。毒なんか入れていません」
レベッカの推理を断固として認めないエリノア。“やれやれ”と首を横に振るレベッカは、一向に罪を認めないエリノアに言葉を投げる。
「……悪いけどエリノア。警察が到着するまでの間、あなたには別室で待機してもらうわ。私と一緒にね」
そう言い張るとレベッカはエリノアの腕を強くつかみ、先ほど事情聴取を行った部屋へと連れて行く。だがいまだに罪を認めないエリノアは、
「私じゃありません、信じて! ……か、香澄、ジェン、フローラ。あなたたちからも何か言ってください!」
親友の香澄とジェニファーに助け舟を求める。だが香澄とジェニファーはエリノアの問いかけに答えようとはせず、ただ冷たい視線だけを送る。
親友の香澄とジェニファーに信じてもらえなかったことがショックだったのか、ついにエリノアの体から力が抜ける。そしてもうこれで終わりと観念したのか、まるで人形のようにレベッカと一緒に連れていかれてしまう。
「待って、二人とも。私も一緒に行きます! ……心理学サークル顧問として、エリーから詳しいお話を聞かないと!」
“サークル顧問の自分になら正直に話してくれるかもしれない”、そう思ったフローラはエリノアたちと一緒に別室へと向かう。
ついにエドガーを殺害した犯人が特定され、これで一見落着かに見えた。だがここで感情を抑えられなくなったアルバートは、弟エドガーを殺害したであろうエリノアに取っ組みかかる。
「……この野郎、よくも俺の弟を殺しやがったな! お前も殺してやる!!」
「!!」
怒りの感情に支配されたアルバートに、強い力で首を締め付けられるエリノア。……本当にアルバートがエリノアを殺しかねないほど、緊迫した場面だ。
「アルバート、止めるんだ! 落ち着きなさい!」
興奮を抑えられないアルバートの後ろに回ったダグラスは、何とか気持ちを抑えてもらうために説得を続ける。
だがアルバートは説得に応じないため、ダグラスは仕方なく彼の襟元をつかみ叫び続ける。
「止めろ、彼女はどのみち法によって裁かれる。……仮に君がここで彼女を殺しても、亡くなったエドガーは浮かばれないぞ!」
「…………」
ダグラスの必死な想いが通じたのか、ようやくアルバートの体から力が抜ける。そして何も言わずにただエリノアを睨み続け、そのままソファーへと座った。
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