アルバートのアリバイ
フロリダ州 フローラの別荘 二〇一五年七月六日 午後一〇時三〇分
形式的な流れでフローラへの事情聴取を終えたダグラスとレベッカは、次にアルバートから詳しい話を聞くことにした。だがアルバートの様子はどこかおかしく、何か苛立っているような雰囲気を見せる。……やはり弟が亡くなるのを間近で見たので、心のショックも大きいのだろう。
『アルバートのアリバイについて』
一 毒が混入されたと思われる時間帯について、アルバートは一人でトイレに行っていた。その後香澄たちを手伝おうと思いとキッチンへ入るが、すでに準備は終わっていたとのこと。
二 エドガーが亡くなった時、アルバートは彼と世間話をしていた。その内容は最近の近況報告といったもので、エドガーが悩みを抱えているような素振りは感じられなかったと語る。
「はい、これで事情聴取は終わりです。……最後に何か私たちへの質問はあるかな? アルバート」
エリノアへの質問はレベッカが行ったのに対し、アルバートへの対応は同じ男性のダグラスが行った。
「……弟の遺体はどうなるんですか? やはり死因を明確にするため、解剖するんですか?」
少し怖い目つきで、FBI捜査官の二人へ問いかけるアルバート。非常に心苦しい心境であるが、ダグラスは“はい、残念ながら……”と語る。
「こんな時に不謹慎かもしれませんが……アルバート。犯人を見つけるための一環として、弟さんの遺体を司法解剖してもいいかな? 身内の君の意見を聞かせてくれ」
目の前でエドガーを亡くしたばかりのアルバートには、つらすぎる選択肢。しかしその気持ちを何とか押し殺し、ダグラスの提案を了承してくれた。
「あいつ……今日のパーティーをとても楽しみにしていたんです。それに今日は無礼講だからって、普段は飲まないシャンパンをエドは何杯も飲んだんです。……あの時俺がエドに“飲み過ぎだ”って言っていれば!」
「…………」
悔んでも悔やみきれないアルバートの想いが、ダグラスとレベッカの胸に突き刺さる。
形式的な事情聴取を終えたダグラスとレベッカは、皆をリビングへと集める。そこで彼らは、
「以上で事情聴取が終わりです。先ほど私が電話で警察へ連絡しておきましたので、それまでの間はここでくつろいでください。……もうしばらくの辛抱です」
と語る。この緊迫した状況下の中において、誰もダグラスの意見に反対する者はいなかった。
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