第三の犠牲者
フロリダ州 フローラの別荘 二〇一五年七月六日 午後九時四五分
最悪の事態になる前に何とかしないとという焦りの気持ちの中で、急いで香澄たちがパーティー会場へ向かう。するとその時、
「キャ―――!」
という女性の悲鳴が聞こえてきた。声の正体が女性であったことから、悲鳴をあげたのはおそらくエリノアだろう。急いで香澄たちがパーティー会場へ向かうと、そこには体を震わせながら立ちすくんでいるエリノアの姿があった。
「どうしたの、エリー!? あなたの悲鳴が聞こえたけど……」
「か、香澄……あ、あれを……」
急いで香澄たちがその場へ向かうと、うつぶせに倒れ込んでいる誰かを介抱している大柄な体格の男性がいる。その男性とはアルバートのようで、彼は弟のエドガーに向かって何度も叫び続ける。
「エド、しっかりしろ! おい!!」
「…………」
だがエドガーは何も言葉を返すことはなかった。
「君、ちょっとどいて。私が看るわ!」
とっさにレベッカがエドガーの容体を確認しようと、彼の手首の脈を計る。だがエドガーの脈の鼓動はすでに止まっており、もだえ苦しんだような表情をしている。
『……だめね、この子はもう手遅れだわ』
エドガーの死を確信したレベッカは、目をつぶりながら皆の前で首を横に振る……
これまで楽しいムードに包まれていた雰囲気が、一気に険悪かつ重苦しいものへと変わってしまった。ほんの数分前まで楽しく話をしていたエドガーが、突然亡くなる。その悲しさと悔しさのあまり、エドガーの亡骸を抱えながら泣き崩れるアルバート。
エドガーの死を悲しんでいるのはアルバートだけではなく、側にいた香澄たちも同じ気持ち。特に人の死に直面することに慣れていない香澄たちは、思わず目を背けてしまう。一方 職業柄死体を見慣れているためか、ダグラスとレベッカはテキパキとエドガーの遺体を別の場所へと移す。
「……ず、随分と手慣れているようですけど。お二人は一体? もしかしてお医者様ですか?」
不思議そうな顔でエリノアが問いかけると、
「本当はお嬢さんたちには知らせたくなかったのですが……我々はFBIです」
そう言いながらダグラスとレベッカはFBIの身分証を提示する。
「え、FBI!? な、何でFBIがここにいるんですか!?」
雲の上のような存在だと思っていたのか、FBI捜査官が二名表れたことに動揺を隠しきれないエリノア。それはアルバートも同じで、目を大きく見開いている。
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