ジェニファーが感じる違和感とは!?
フロリダ州 フローラの別荘 二〇一五年七月六日 午後九時一五分
料理もすべて温め終わり、パーティー会場へ戻る準備に取り掛かる香澄。だが慌ててお皿を持ち上げたためか、ビニールに包装された紙皿をテーブルに落としてしまう。“あっ、ごめんなさい”と言いながら、とっさに紙皿を戻すジェニファー。そして何気なくシャンパン入りの瓶を一本持ち上げると、
「……あら? 何かしら、これは?」
テーブルに付いているシミのようなものをジェニファーは見つける。すると何かを思いついたのか、とっさに冷蔵庫を開け始めるジェニファー。
「ちょ、ちょっとジェニー、一体何をしているの!? 早くしないと、お料理が冷めてしまうわよ」
香澄からの問いかけにも、返事をしないジェニファー。だがここで“そうだ、香澄にも聞いてみよう”と、何かを思いついたジェニファーは香澄の元へ駆け寄る。
「いきなり変な質問をするけど……香澄。今日のパーティーのお料理の中に、牛乳やクリームシチューってあったかしら?」
「……確か今日のお料理はすべてデリバリーだから確証はないけど、私の知る限りではなかったと思うわ。ジェニー、突然どうしたの?」
香澄の言葉を聞いて、ますます疑問が深まってしまったジェニファー。そこでジェニファーは、自分が感じている疑問点を香澄に話す。それを聞いた香澄はその正体を確認しようと、テーブルについているシミを発見する。さらに良く調べてみると、そこには確かに何か白い液体の跡のような物が数滴ほど残っている。
「これは昔からある白いシミではなくつい最近、それも数分~数十分くらい前に付いた――という感じね」
頭の中であらゆる可能性を考慮しつつ、独り言をつぶやいている香澄。そんな真剣な香澄の顔を見て、ジェニファーも思わず緊張してしまう。
「冷蔵庫に牛乳は入っていなかった、コーヒーや紅茶に入れるコーヒーフレッシュもない。もちろん料理にも白いシミがつくようなものは一切ない――どういうことなの!?」
軽い気持ちで質問をしたジェニファーだったのだが、今度は逆に香澄が考え込んでいる。しかし早くパーティー会場へ持っていかないと、せっかく温めた料理が冷めてしまう。
「……とりあえずお料理を持っていこう? 多分私の考え過ぎだよ、きっと。 事件も無事解決したのだから、私たちもこの雰囲気を楽しもうよ。香澄」
早く戻ろうと催促するジェニファーの言葉を聞いた香澄の脳裏には、ある可能性が浮かびだす。
「もう事件は解決した……! ま、まさか!?」
とんでもない仮説が思い浮かんでしまった香澄は、思わず声を荒げてしまう。
「わっ! 急に大きな声を出さないでくださいよ、香澄。……香澄? ねぇ、どうしたの!?」
「……ジェニー。今すぐフローラたちの所へ行くわよ!」
これまで穏やかだった表情が一変し、温めた料理を持たずにパーティー会場へと向かう香澄。……一体香澄は何を発見したというのだろうか?
「ちょ、ちょっといきなりどうしたの!? 香澄、香澄ってば!」
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