食べ物と飲み物の補充

     フロリダ州 フローラの別荘 二〇一五年七月六日 午後九時〇〇分

 心理学サークル最後のパーティーは楽しい時間の絶頂を迎えており、午後九時〇〇分を迎えてますます盛り上がる。するとちょうど飲み物が切れたことを受けて、香澄たちは冷蔵庫に冷やしてあるコーラとシャンパンを取り出す。そして各自新しいコップやグラスを用意し、パーティーの雰囲気を皆が堪能している。

 そんな中で一人コーラを口にする香澄の顔は、どことなく不機嫌そうだ。実は香澄はあまり炭酸飲料があまり好きではなく、独特の“シュワシュワ”という喉越しが苦手。そんな香澄の好みを後で思い出したフローラは

「そういえば香澄は、コーラやソーダのような炭酸飲料は苦手だったわね。ごめんなさい、私ったら無神経なことを……」

と一言謝罪しつつ、冷蔵庫にミネラルウォーターが入っていたことを思い出す。“それでは私はそちらをいただきます”と言いながらキッチンへ向かう香澄。

「……それだったらついでに、お料理も補充してくれるかしら? 追加用の食べ物は冷蔵庫に入っているから、それを適当に出していいから」

「分かりました。……でも私一人で全部持っていけるかしら?」

香澄がテーブルに視線を向けると、見るからに大皿数枚分は必要だと直感する。さすがに香澄一人では無理だと判断したフローラは、

「それもそうね……あっ、ジェニー。ちょっと来てくれる?」

ちょうど一人で歩いているジェニファーへ声をかける。


 フローラに呼ばれたジェニファーは、片手ずつにお皿とグラスを持っていた。

「はい。何でしょうか、フローラ?」

「……悪いけど香澄と一緒に、追加用のお料理を持ってくれる? 香澄一人だと、ちょっと時間がかかりそうなの」

「えぇ、私は構いませんよ。……さぁ、香澄。早くキッチンへ行こう」

突然のお願いだったにも関わらず、快く承諾してくれたジェニファー。そして二人は冷蔵庫があるキッチンへと向かう。


 仲良く世間話をしながら、冷蔵庫の料理を順番に取り出す香澄たち。だがここで香澄の脳裏に、一つの疑問が浮かぶ。

「……あら? ジェニー。あなたはコーラとサイダーは飲まないの?」

香澄の問いかけに最初に答えたのは、少し恥ずかしそうにしているジェニファー。

「実は最初に少しソーダを多く飲み過ぎたみたいで、軽くお腹が痛くなってしまって。……恥ずかしいから、みんなには言わないでね?」

炭酸飲料の飲み過ぎによる軽い腹痛。思わず呆れてしまう香澄だったが、“それもジェニーらしいわね”とどこか納得した素振りも見せる。

 気を取り直して冷蔵庫に用意されていた、料理一式を取り出す香澄とジェニファー。電子レンジを使い料理を温め終え、両手にお皿を持ちながら二人はパーティー会場へ戻る準備を整える。

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