楽しいパーティーのはじまり
フロリダ州 フローラの別荘 二〇一五年七月六日 午後八時一五分
前回のサークル旅行では怪我をしていたため、数ヶ月前のサンファン諸島へいけなかったアルバートは、今回のホームパーティーの雰囲気を思いっきり楽しんでいる。無礼講という形で主催されているため、アルバートも肩の力を抜いてパーティーを満喫している。
「いやぁ、エド。サークルに復帰してからいきなり廃部って聞いた時は驚いたけど、まさかこんな豪華なパーティーがあるとはね。まったく驚きだよ!」
「本当だよね、兄さん。……でもこれで香澄たちに会えないと思うと、少し残念だけどね」
「……もしかしてエド。お前、あの美人顧問に気があるのか!? ……ったく、この間は俺に“兄さん、あまり香澄にはちょっかいをださないでね”って言っていたくせに。そうか、お前はあんな雰囲気の知的美人が好みなんだな? ……頑張れ、弟よ。恋愛に関する駆け引きなら、いつでも俺が相談に乗るからな!」
「な、何を言っているんだよ、兄さん!? ぼ、僕は別に……」
年頃の大学生らしい会話を楽しんでいる、アルバートとエドガー。その後も彼らは恋愛の話をはじめ、最近楽しかったことなどを語り合う。
思わぬ形でダグラスと再会することになった香澄は、彼と一緒にパーティーの雰囲気を楽しんでいる。一緒に調査をした時のダグラスの印象として、“寡黙で冗談も言わない真面目な性格なのかしら?”と香澄は思っていた。しかし今目の前にいるダグラスという男性は、時折優しい笑顔を見せジョークも言う気さくな男性。
どことなくケビンに似ている性格なので、そんなダグラスに香澄も安心して接している。
「お疲れ様、カスミ。さっきフローラから聞いたのだけど、君も臨床心理士を目指しているんだってね。……色々と大変だと思うけど、勉強は進んでいるかい?」
「はい、大丈夫です。ただフローラと同じことをするのではなく、私なりの方法で臨床心理士の道を目指そうと思います」
香澄なりの方法に興味を持ったダグラスは、具体的な事例を彼女に尋ねる。すると香澄は、
「心理職に直結するかは分かりませんが、お薬について勉強しています。と言っても独学なので、私の知識はたかが知れていますけど」
個人的に薬学を学んでいることを語る。
「心理学に薬学……か。いや、カスミは本当に努力家だね。……これだったら、いつでも薬局を開業出来ると思うよ」
「もぅ、ダグラスたら。そんな冗談を言わないでください!」
シンシアとモニカといういじめの加害者がいなくなったことで、エリノアの心は少しずつ晴れていく。本来はこうしたパーティーにはあまり参加しない性格なのだが、彼女は自分を変えようと必死に努力している。
そんなエリノアが一人でいるのを見かけたフローラは、右手にジュース入りのコップを持ちながら彼女へ話しかける。
「どう、エリー。パーティーは楽しんでいる?」
フローラからジュースを受け取ったエリノアは、“ありがとうございます”と一言お礼を述べる。
「……こういう雰囲気はあまり慣れていないんですけど、私なりに楽しんでいます」
「それなら良かったわ。せっかくのパーティーだもの、今日は楽しまないと損よ」
「そうですね。……あっ、あそこに香澄とジェニーがいる。すみません、ちょっと失礼します」
やはり一人でいるのは心もとないのか、親友の香澄とジェニファーの元へ歩みよるエリノアだった。
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