遠い真相と近い嘘
テキサス州 ルティア夫妻の隠れ家 二〇一五年六月一三日 午前六時〇〇分
オクラホマ州でルティア夫妻の行方に関する、新たな手がかりを発見した香澄たち。その手がかりを頼りに、AMISA・FBIの合同捜査に協力する香澄とジェニファー。だが時間に一刻の猶予もなく、早急にルティア夫妻らを拘束する必要がある。
今度こそルティア夫妻らが潜伏していると睨んだダグラスとレベッカは、数名のFBI捜査官と一緒に隠れ家に突入した。だがそこで見た光景は、彼らの考えとはまったく異なる結末が待っていた。
FBI捜査官の許可が出たということで、早速ルティア夫妻らの隠れ家に入りこむ香澄たち。中の光景を見た香澄たちの様子は、案の定ダグラスやレベッカたちと同じ。
「こ、これはどういうことなの!? 私たちが主犯だと思っていたルティア夫妻が……死んでいる!?」
リビングに並べられているテーブルに向かい合うかのように、アーサーとリサは並んでいる。
そして彼らの腕にはに飲みかけのコーヒーマグと缶コーヒーがそれぞれ握られており、アーサーの横には銃・リサの横には白い液体が入った小瓶が置いてある。
誰もが予想しなかった結末にあっけを取られるのもつかの間、何かの音に気が付いたジェニファーがいる。
「み、みんな……あれを見て!? キッチンの近くで何か物音がしたよ」
動揺を隠しきれないジェニファーが指差したキッチンには、確かに人の気配がする。すぐにレベッカが相手に警告すると、そこにいたのは思いもよらぬ人物だった。
「う、撃たないでください! い、今出ますので……」
怯えている女性と思われる声が聞こえてくると同時に、少しずつだが両手がゆっくりと見えてきた。
FBI捜査官たちが全員銃口をキッチンへ向けている最中、その人影はゆっくりと姿を見せる。その人影の正体こそ、香澄たちが探しているシンシアとモニカ。両手を上にあげて、自分たちが武器を持っていないことを意思表示するシンシアとモニカ。
香澄たちが“一体何があったの!?”と尋ねると、それを聞いたモニカが泣きながら状況説明をする。
「……し、仕方がなかったのよ。ふ、二人に“毒を飲め”って強要されたの。それを断ると、今度は“銃で殺す”って脅されて。だ、だから私たちは毒を飲んだフリをして、アーサーとリサの隙を待ったの。そこで隙を見計らって……その……」
「……ということはモニカ。あなたとシンシアは【ルティア計画】によって誕生した、『NO.Ⅰ』『NO.Ⅱ』であることを認める……ということでいいのね?」
レベッカの問いかけに、ゆっくりと首を縦にふるシンシアとモニカ。
「ねぇ、お願い。早く私たちを別の場所に連れて行って。ここにいると気分が悪くなるのよ。私たちが知っている【ルティア計画】のすべてを……あなたたちに教えるわ!」
さすがに“FBIを敵に回したくない”と思ったのか、シンシアとモニカは“自分たちの身柄はあなたたちに委ねるわ”と告げる。
「……随分とあっさりしているわね。ちょっと腑に落ちないけど……まぁ、いいわ。これからあなたたちを、近くの精神病棟へ身柄を移すわ」
だが香澄とジェニファーの心中はおだかやではなく、事情が事情とはいえシンシアとモニカをあっさりと許すことは出来なかった。彼女たちは自分たちの親友エリノアに暴行を加えた、れっきとした容疑者かつ加害者でもある。
しかし“国の安全が脅かされている以上、今は個人的感情で動くのは得策ではないわ”と心に言い聞かせた香澄とジェニファーは、シンシアとモニカの両名の身柄をダグラスとレベッカに託す。
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