リサへ迫る魔の手

  テキサス州 ルティア夫妻の隠れ家 二〇一五年六月一三日 午前〇時三〇分

 二階の廊下でリサがアーサーの死体を調べていると、後ろにシンシア・モニカ・『ルティアNO.Ⅳ』の三人が立っていた。だが死体調べに気を取られているのか、リサは三人が後ろにいることに気がつかない。そんなリサの神経を刺激するかのように、ある驚きの言葉をシンシアが発する。

「どんな気持ちかしら、リサ。最愛の夫が突然いなくなった気分は?」

「し、シンシア!? それにモニカに『NO.Ⅳ』も!? いきなり声をかけないでちょうだい」

 だがシンシアたち三人の顔には、悲痛・泣き崩れるといった素振りはまったく見せない。むしろアーサーが亡くなったことを喜んでいる……そんな風にも見える。


 そんな三人の姿を見たリサの脳裏には、ある結論が思い浮かぶ。そう、アーサーの謎の死にはこの三人が関与している。リサはそう直感すると同時に、左手に握っていた銃をシンシアへ向ける。

「シンシア、これもすべてあなたの仕業ね!? 何らかの方法で私たちの隙を狙って毒を混入し、夫を殺害した――そうなのね!? 命が惜しかったら、今すぐ本当のことを言いなさい」

“これは脅しではないわ”という意味を込め、拳銃のスライドを引きいつでも発射出来る準備を整えるリサ。その拳銃をシンシアに向けるが、彼女の表情は一向に変わらない。むしろシンシアは不気味な笑みを浮かべており、その顔から自分の勝利を確信しているかのようだ。

「……そういう反抗的な態度をとるなら、いつものように少しお仕置きが必要みたいね」

リサがそう言葉を発すると同時に、左手に持っていた拳銃の銃口をシンシアの右足へと向け、引き金を握っている指先に力を込める。


 だがリサが指先に力を込めようとするが、なぜか自分の腕に力が入らない。それどころかリサの体は突然“プルプル”と震えだし、そのはずみから手に握っていた拳銃も床に落としてしまう。

「な、何なのこれは!? か、体に力が……入らない……」

 その後もリサは自分の体の震えを抑えることが出来ず、ついにお尻を床についてしまう。同時に呼吸困難・幻覚といった症状がリサに襲いかかり、彼女はその場に倒れこむ。

「……心配することないわ、リサ。あなたもすぐにアーサーの元へ行けるんだから」


 自分の目の前で苦しんでいるリサの姿を見て、手を差し伸べるのではなく追い打ちをかけるシンシア。同様の理由で、モニカも不敵な笑みを浮かべている。

「リサ、今まで散々私たちを実験に利用してきたんだから――これもすべて自業自得だよ」

「まさか私たちがかけたが、すでに解けていたの!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る