Trickery and betrayal(裏切りと策略)
戻ってこないアーサー
テキサス州 ルティア夫妻の隠れ家 二〇一五年六月一二日 午後一一時四五分
香澄たちがオクラホマ州のルティア夫妻家へ突入しているほぼ同時刻、当の本人たちは国外逃亡のためテキサス州のある住宅に身を潜めていた。以前住んでいた家に不動産のパンフレットを残してしまったのは痛手だが、香澄たちがそれを発見することにはルティア夫妻はもうアメリカにはいないだろう。
自分たちの勝利を確信しているルティア夫妻は、自分たちが心から信頼する『ルティアNO.Ⅳ』を隠れ家へ招き入れる。そして彼らは、自分たちの計画を『ルティアNO.Ⅳ』へ語る。そんな彼らの計画を知りながらも、シンシアとモニカはただ従うしかなかった……
「よし、『ルティアNO.Ⅳ』も揃ったことだし、そろそろここを出発しよう。一刻も早く国境を抜けないと。僕は二階に置き忘れた資料を持ってくるから、リサたちは先に車で待っていてくれ」
景気づけという意味を込めて、飲みかけのコーヒーを一気に飲み干すアーサー。
「分かったわ。……さぁ、あなたたちも行くわよ」
リサに連れられて、三人の子どもたちは先に車へと向かう。
リサが子どもたちを車へ連れてゆき、資料を置き忘れたというアーサーが戻ってくるのをただ待つ。時折『ルティアNO.Ⅳ』が景気づけにと用意してくれたコーヒーを飲みながら、ひたすら帰りを待っている。
しかし一〇分程経っても、アーサーはリサたちの元へ戻ってくる気配がない。“隠れ家の中で何かあったのでは?”とリサは不審に思い、三人の子どもを連れて隠れ家へと戻る。
隠れ家へと入ったリサは、家中に響き渡るような声でアーサーの名を呼ぶ。しかし当の本人から返事が聞こえることはなく、ただ沈黙と静寂が支配している。
「何か様子が変ね――私は二階を調べてくるから、あなたたちはリビングで待っていなさい」
バッグに隠し持っていた拳銃を取り出し、息をひそめながらゆっくりと二階へとかけ上るリサ。
“もしかしたら警察にここが知られたのかも!?”という緊張と恐怖がリサの心身を襲いかかり、彼女の心拍数もこれまでにないくらいに上昇している。
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