新たなる謎

    カンザス州 ルティア夫妻の家 二〇一五年六月一三日 午前〇時一五分

 気持ちを切り替えた香澄たちは、現場を荒らさないことを前提に手がかりがないか調べ物を開始する。簡単に安全確認をFBIが行ったものの、彼らの行方や新たな手かがりを探索についてはこれからが本番。

 各部屋の前にFBI捜査官が待機している最中、香澄はレベッカと一緒にリサの部屋を探索していた。多数のパソコンが置かれていることから、家の中にいながら様々な情報を検索・および調べ物が出来る環境が揃っているようだ。現に夫婦用の部屋とは別に、アーサー・リサ個人が使用出来る環境もしっかりと用意されている。


 部屋の様子を見た香澄は、“まるで自分たちの教員室のようね”とどこか感心しながら調べ物を行う。だがここでレベッカが何かを見つけたようで、

「……かすみ。ちょっと来てくれる?」

こちらへ来るように香澄へ問いかける。すぐにレベッカの元へ駆け寄る香澄。

「レベッカ、一体何を見つけたんですか?」

「えぇ。さっき机の中を調べていたら、これを見つけたの。引き出しの奥に隠すように入っていたから、何か重要な情報が書き記されているはずよ!!」

ノートの表紙に『研究結果を照らし合わせた、子どもたちへの影響について』と書かれていたことから、もしかしたら新たな【ルティア計画】の情報が得られるかもしれない。

 そんな期待を胸に秘め、レベッカと香澄はノートを一枚ずつめくっていく……


   『研究結果を照らし合わせた、子どもたちへの影響について』


 [これまでの幾多による研究・実験の結果、私たちは無事四名の優れた頭脳を持つ子どもたちを誕生させることに成功した。しかし私たちの研究はこれで終わりではなく、これからが重要なのだ。四名の子どもたちを世間の流れを知ってもらうために、それぞれを被験者のもとへ返す予定。なお『ルティアNO.Ⅳ』については、私たちが心から信頼する知人に預け、そこで面倒を看てもらう予定になっている。


 表向きは普通の子どもとして成長してもらうため、私たちもそれなりの準備はしてきた。特に教育機関で行われる健康診断においては、私たちは最新の注意を払っている。子どもたちへ血液サンプルを用意し、血液の提出が必要になった場合にはこれを使用すれば良い。その点についてはしっかりとマインドコントロールしているため、ごく自然な形で子どもたちも偽装してくれることだろう……


 また大量の薬を投与・過多におよぶマインドコントロールによる副作用なのか不明だが、『ルティアNO.Ⅰ~NO.Ⅳ』のいずれも何かに依存しやすいという、少し変わった傾向が見られる。今のところ私たちの研究に支障をきたす恐れはないが、常に不安は残ってしまう。

 今後の研究結果と照らし合わせるために、それぞれの特徴を別途記しておく。


   『子どもたちの依存性における特徴から見た、性格の違いについて』


ルティアNO.Ⅰ……四人の中で一番攻撃的で、人に危害を加えることに対して罪悪感がない模様。しかし自分を慕ってくれる同年代の人に対しては、心を許すこともある。『ルティアNO.Ⅱ』と非常に仲が良いのも、その傾向の表れだろう。


ルティアNO.Ⅱ……四人の中で一番人に依存しやすい傾向が強く、自分の考えや意見をあまり述べない性格。そのため思ったことを口にする・行動に移す『ルティアNO.Ⅰ』とは相性が良く、本当の姉妹のような関係にある。


ルティアNO.Ⅲ……四人の中で一番単独行動を好む傾向が強く、チームワークや協調性といった概念がほとんどない。口数もあまり多くないため、『ルティアNO.Ⅰ~NO.Ⅱ』からはあまり好かれていない模様。


ルティアNO.Ⅳ……四人の中で一番冷静・論理的な性格で。子どもたちの中で、一番社会に馴染みやすいことが確認出来る。

 表向きが良すぎるということもかねて、心の中で何を思っているのかその真意を確認することは出来ない。また目的のためなら手段は選ばないという点においては、『ルティアNO.Ⅰ~Ⅲ』と共通している。普段は目立った行動や言動を取ることがないだけに、怒らせたら一番怖い子どもでもある。

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