Joint investigation(合同捜査)
AMISAとFBIの合同捜査
バージニア州 ジョージタウン大学病院 二〇一五年六月一一日 午後九時三〇分
エリノアが電話に出なかった事情を知った香澄は、すぐに椅子に座っているフローラへ今までの流れを報告した。シンシアとモニカがいなくなったことを知ったフローラは、すぐにジェニファーのスマホへ連絡し、事の一部始終を伝える。そして事の真相を知ったジェニファーはあっけにとられた様子で、一種の放心状態となってしまう。
だが“今は呆けている場合ではないわ”とジェニファーを説得しつつも、今後の大まかな流れについて語るフローラ。その表情はいつになく真剣だ。
「これから私と香澄は自宅へ戻ります。飛行機の時間を考慮すると……ワシントン州へ戻れるのは、多分明け方になると思うわ。ちなみにジェニー。今お家にいるの? それとも大学?」
「今はお家です。フローラと香澄が戻ってくるなら、私もお二人の帰りを待っています」
「お願いね、ジェニー。……あっ、それともう一つ報告があるの。香澄にはもう伝えたんだけど……今回の事件について、AMISAとFBIが合同捜査をすることになったの。事情が事情なだけに、アメリカも事態を重く受け止めてくれたのよ!」
フローラの口から驚くべき真相が語られた。香澄がジェニファーとエリノアへ電話している間、フローラはAMISAへ近況方向をしていた。そこで人命にかかわるとフローラが報告したためか、AMISAは【ルティア計画】を止めようと考えた。
しかしAMISAはあくまでも一介の連邦医療組織に過ぎない。だが事態を重く受け止めたAMISAは急遽FBIへ連絡し、“【ルティア計画】を阻止すべき”だと協力を求めた。国内でテロ行為が行われる可能性を危惧したのか、AMISAの申請を快く承諾してくれたFBI。
「それ本当ですか、フローラ!? あのFBIと一緒にお仕事が出来るなんて!」
「えぇ、本当よ。ちょうど二名のFBI捜査官がワシントン州の近くにいるみたいだから、明日の午前中に私たちの家に来てくれることになっているのよ。それから……【ルティア計画】に
アメリカ市民なら誰でも憧れるFBIとの合同捜査と聞いたためか、案の定興奮を抑えられないジェニファー。どこか浮かれ気味のジェニファーを叱ることなく、ただ的確に状況を伝えるフローラの姿があった。
バージニア州 ダレス空港 二〇一五年六月一一日 午後一一時三〇分
ジョージタウン大学病院でパウエル医師と面会し、ルティア夫妻や【ルティア計画】などの新情報が得られた香澄とフローラ。フローラがAMISAへ事の一部始終を報告した結果、FBIが連携してこの事件を解決することになった。
病院で色々と連絡などしていたためか、一通りの業務を終えた時には午後一〇時三〇分を過ぎていた。“このままではシアトル行きの最終便に乗り遅れるわ!”と焦ったフローラは、香澄を連れて急いでダレス空港まで車を走らせる。
夜道ということもあり多少車道は混んでいたものの、午後一一時過ぎに何とかダレス空港へと到着した二人。空港の駐車場に車を停車させると同時に、急いで空港へ走る香澄とフローラ。……全速力で走ったためか、“ドクドク”と二人の心拍数はかつてないほど上昇している。
全速力で走ったおかげか、ぎりぎりではあるがシアトル行きの最終便に間に合った香澄とフローラ。彼女たちは座席に座ると同時に、乱れた呼吸を整えるため何度も深呼吸する。
「ふぅ……な、何とかぎりぎり間に合ってよかったですね、フローラ」
「そ、そうね。……おそらくこの便がシアトルに着くのは、明日の明け方になるわ。今日の疲れを明日に残さないためにも、今のうちに体を休めましょう……香澄」
フローラは左腕に着けている腕時計で時刻を確認しながら、優しく香澄に伝える。走って軽く汗をかいたためか、肩にかけているバッグの中からウェットティッシュを二枚取り出すフローラ。一枚を香澄に渡すと彼女は笑みを浮かべ、すぐに首回りを綺麗にする。そして静かに眠る二人の間に、ラベンダーのほのかで心地よい香りが漂っていた……
なおフローラがAMISAから確認した指令は、以下の通りである。
『AMISAがフローラへ命じた指令内容について』
一 AMISA・FBIに共通する最優先事項は、【ルティア計画】に加担した関係者(ルティア夫妻や協力者、ならびに『ルティアNO.Ⅰ~NO.Ⅳ』)らの拘束。フローラからの連絡を受けたAMISAは、FBIに協力を依頼する。そしてテロの可能性を予測したFBIは、ルティア夫妻を最重要容疑者として指名手配した。
二 この一件が解決するまでの間、捜査に加わるAMISA職員へ捜査権・逮捕権が与えられる。ただし一般市民への混乱を避けるため、捜査は非公式で行う。
三 二で捜査権・逮捕権が与えられたAMISA職員(現状ではフローラのみ)については、銃の発砲許可も認められる。銃は原則、AMISAへ登録している銃を使用する。
また相手が説得に応じず拘束が困難であると判断した場合には、銃を使い事態を掌握する。
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