ルティアNO.Ⅰ~NO.Ⅳの人物像(香澄とフローラによる考察)

       『『ルティアNO.Ⅰ~NO.Ⅳ』の人物像について』


一 『ルティアNO.Ⅰ~NO.Ⅳ』の性別は不明。だが生存していると仮定した場合、年齢はいずれも二十歳前後くらいか?


二 超能力に関する記述がなかったことから、いずれも不死身や超人的な能力は持っていないことが推測される。しかしいずれもIQが一六〇以上、かつ攻撃的で狡猾こうかつな性格であるため、彼らを捕まえる際には一筋縄ではいかない。

 特にルティア夫妻の遺伝子・『ルティアNO.Ⅰ~NO.Ⅲ』の長所を受け継いでいる、『ルティアNO.Ⅳ』には要注意だとフローラは推測する。そして『ルティアNO.Ⅳ』に関する供述が残されていないため、と香澄は考察する。


三 『ルティアNO.Ⅰ』の正体は、そして『ルティアNO.Ⅱ』の正体はである可能性が高い。カルテに記載されている被験者のファミリーネームが、それぞれミラーとオリーブだったことが関係している。なお『ルティアNO.Ⅲ』『ルティアNO.Ⅳ』については手がかりが少ないため、その正体は不明。


四 『ルティアNO.Ⅰ』をシンシア・ミラー、『ルティアNO.Ⅱ』をモニカ・オリーブと仮定した場合、ルティア夫妻は近いうちに彼女たちへ接触する可能性が高い。そのためシンシア・モニカの両名の動きを観察することで、ルティア夫妻の行方もつかめる可能性がある。

 なおルティア夫妻がどのようにして、彼女たちの行動を把握しているかは不明。


五……ルティア夫妻によってされていることから、罪悪感・法を守るといった概念が、『ルティアNO.Ⅰ~NO.Ⅳ』らにはないと思われる。

 しかも何らかの方法やきっかけによって、『ルティアNO.Ⅰ~NO.Ⅳ』にかけたマインドコントロールが途中で切れる・自我に目覚めると仮定した場合、最悪の結果を迎える可能性が高い。早急に『ルティアNO.Ⅰ~NO.Ⅳ』ならびにルティア夫妻を捕まえ、安全確保することが急務。

 なおシンシアとモニカの両名が『ルティアNO.Ⅰ・NO.Ⅱ』だったと仮定した場合、ワシントン大学で発生した二つの事件は彼女たちの精神が錯乱したことによって、起きたものと推測される。


バージニア州 ジョージタウン大学病院 二〇一五年六月一一日 午後八時三〇分

 それはあまりにも恐ろしく、そして香澄たちを驚愕させる考察だった。香澄の考察通りだと仮定した場合、数週間前まで一緒にサークル旅行を楽しんでいたシンシア・モニカの両名はということになる。そんな重苦しい雰囲気の沈黙を破ったのは、他でもないロバートだった。

「私も一人の医療関係者として、これまで色んな経験をしてきました。ですが今回知った事実については……言葉もありません」

 言葉を失ってしまったのはロバートだけではなく、香澄とフローラも同じ気持ち。だが彼女たちは事前に資料を一部読んでいたためか、大まかな内容について予想していたようだ。

「フローラ、お嬢さん……私はこれで失礼します。なお面会の時間はこれで終わりとなりますが、お帰りになる際は受付へ一言お願いします。それでは……」

そう言い残して、一人部屋を出て行くロバート。

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