ルティア夫妻の行方について
『香澄とフローラがパウエル医師へ質問した内容とは!?』
一 ルティア夫妻の行方について。彼らは今、どこで何をしているのか?
二 表沙汰にはなっていない、【ルティア計画】の詳細。例えばルティア夫妻が研究に使用したと思われる、ノートやカルテなどの有無について。
三 【ルティア計画】で生き残ったと噂されている、数名の子どもの行方や詳細について。
バージニア州 ジョージタウン大学病院 二〇一五年六月一一日 午後五時二〇分
あまり時間もないということで、自分たちが確認したい事項を簡潔にまとめたフローラ。その内容を確認したロバートは、眉間にしわをよせながらも質問に答えてくれた。
「分かりました。私の知る範囲内で、お答えしていきましょう」
本来ならどれも口外したくない内容だが、AMISAに所属するフローラの質問となるとそうはいかない。心の中で決心がついたのか、軽く深呼吸をしてから真相を語るロバート。
「最初の質問についてですが――すみません、私たちも彼らの行方については把握していません。むしろこの手の内容については、AMISAのデータベースを調べた方が早いのでは?」
「いえ。彼らの情報については、今こちらで調査を始めたばかりなので……詳しいことは後日判明するかと思います」
「そうですか。出来る範囲内ではありますが、こちらも彼らの行方について調べていますので……
近日中に彼らの居場所が判明すると聞き、少し胸をほっと下ろすフローラ。
早くも謎が残ってしまったと一人落胆している香澄をよそに、
「ここだけのお話ですが……私の知り合いにTSA(運輸保安庁)へ勤務している友人がいまして。その友人にルティア夫妻の入国歴について、調べてもらったところ……数ヶ月前にアメリカへ入国していることが判明しました」
ロバートから思わぬ情報が得られた。
なおTSAとはアメリカ国内における公共機関の安全を守ることを職務としており、テロ対策や麻薬密輸などの防止に貢献している組織のこと。
フローラからの質問が一区切りついたところで、今度は香澄がロバートへこんな質問をする。
「パウエル先生。二人は名前を変えずに、本名でアメリカへ入国したんですか? そして今現在も、彼らはアメリカに在籍しているんですか?」
「えぇ、友人からはそう聞いています。そして彼らが国外へ行ったという情報は聞いていないので、国内のホテルやモーテルなどを転々としていると思います。しかしだからといって彼らが偽名を使用していない――という保証ではありませんよ、お嬢さん」
「そうですか……わかりました、ありがとうございます」
ここにきて、早くも最初の答えを手に入れることが出来た香澄とフローラだった。
出だしは順調なスタートとなっており、上手く波に乗ることが出来た香澄とフローラ。さらにコーヒーを一口含むと、ロバートは二の質問内容について香澄とフローラに説明する。
「この件については、私の口から説明するよりこちらを読んでもらった方が早いでしょう――これは彼らが病院を去る前に残したノートとカルテです。しかし数十年前の資料であるため、あくまでも参考情報という形で目を通してください」
どこか口を濁しながらも、彼らが残したと思われる資料をテーブルの上に並べるロバートだった。
二つ並べられた資料のうち、自分から見て右隣に置いてあるノートを手にした香澄。そこにはルティア夫妻が実際に行っていたとされる、【ルティア計画】の詳細が書き記されていた。そして香澄の横から顔をのぞかせるように、フローラはノートの中身を確認している。
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