Genetic engineering(遺伝子操作)

ロバート・パウエル医師との面会

                八章


バージニア州 ジョージタウン大学病院 二〇一五年六月一一日 午後五時〇〇分

 ワシントン大学で発生した事件の真相を確かめるため、急遽きゅうきょ『ジョージタウン大学病院』へ向かうことになった香澄とフローラ。数十年前に【ルティア計画】を発表したとされるルティア夫妻が、かつで勤務していた病院。まさに【ルティア計画】の原点とも呼べる場所の一つで、“何らかの手がかりが得られるのでは?”と内心期待している香澄。

 バージニア州にはFBIやホワイトハウスなど、アメリカでも重要な施設や建物が数多く並んでいる。アメリカ南東部に位置する州の一つで、数多くの観光名所もある有名な場所だ。


 ワシントン州のシアトル・タコマ空港からバージニア州のダレス空港行きの飛行機に搭乗し、二人は約束の午後五時〇〇分にジョージタウン大学病院へと到着する。名門校 ジョージタウン大学のすぐ北の場所に設立されており、色んな研究や治療を行っている病院でもある。

 だが香澄とフローラはバージニア州へ遊びにきたわけでもないため、要件を済ませるためさっそく病院へと入る。このジョージタウン大学病院は多くの患者や医師・看護師などが常駐しており、名門病院の名に恥じない雰囲気だ。


 周りの空気に飲まれないないように気を持ちながらも、受付を見つけた香澄とフローラは待機している職員に声をかける。

「すみません。私はAMISAから来たフローラ・S・ハリソンで、こちらの女性は私のパートナーの高村 香澄です。本日の午後から、こちらでロバート・パウエル医師と面会の約束をしているのですが……」

事前に用意していたAMISAの身分証を、受付職員へ見せるフローラ。身分証の内容に目を通した後、

「はい。AMISA所属のフローラ・S・ハリソンさま、そしてパートナーの高村 香澄さまですね? お待ちしておりました。担当の者が待合室までご案内致しますので、少々お待ちください」

受付職員は机に置いてある電話の受話器を取る。


 そしてフローラが到着したことを電話口で伝えると、すぐに若い女性看護師がやってきた。

「お待たせしました。お部屋までご案内致しますので、こちらへどうぞ」

「えぇ、ありがとう」

フローラが軽く挨拶を済ませると、看護師は二人をエスコートする。


 案内されること数分後、香澄とフローラは待合室へと到着する。案内をしていた若い女性看護師が先にノックして、フローラが面会にきた旨を伝える。するとドアの奥から男性の声が聞こえ、“どうぞ”という声が聞こえてきた。声を聞いた看護師はそっとドアノブを回し、二人を部屋へ招き入れた。

 部屋には白衣を着た四〇代後半~五〇代と思われる中年男性が一人立っており、香澄とフローラを快く出迎えてくれた。

「遠くからよくお越しくださいました。私はこの病院の精神科医、ロバート・パウエルです。どうぞお座りください」

ロバートに勧められるまま、香澄とフローラは用意されていた椅子へと腰を下ろす。

 香澄たちが席に着いたことを確認すると、“君はもう仕事にもどっていいよ、ありがとう”と看護師に指示するロバート。ロバートの許可が出たこともあり、二人を案内していた看護師はそのまま自分の仕事へと戻る。


 用意されていたコーヒーを飲み、軽く喉を潤した香澄とフローラ。彼女たちがコップをテーブルに置くのを確認したロバートは、

「お話を始める前に一つだけお断りしておきます。今回の面会で知った内容については、出来るだけおおやけの場では公表しないでください。病院の名誉に関することなので……」

守秘義務について語る。だがそれは香澄もフローラも承知の上、ロバートの問いかけにただ首を縦に振る。

「……私の答えられる範囲内の内容でしたら、可能な限りお答えします。一応夜まで時間を確保していますが、ストレートに質問していただいても構いません」


 ロバートの合図をきっかけに、フローラは香澄が質問したい内容の答えを彼に問いかけた。だが時間も限られていることもあり、先日香澄が残したメモとは内容が一部異なっている。

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