香澄からフローラへのお願いとは!?

      『ファイルを読み終えた香澄が感じた疑問点とは!?』

一……今から二〇年近く前に起きたこの事件について、ルティア夫妻がかつて勤務していた『ジョージタウン大学病院』側は、今現在どう思っているのか? また治療結果や検査記録などは、今も残されているのか?

二……ルティア夫妻こと アーサー・ルティアとリサ・ルティアの両名は、今現在どこで何をしているのか? そして二人の生死について、現状はどうなのか?

三……【ルティア計画】は最終的に中止になったのか? またルティア夫妻が特別目を付けていたと噂される数名の子どもは、その後どうなったのか?

四……【ルティア計画】とワシントン大学で起きた二つの事件について、果たして関連性はあるのか?


   ワシントン州 ハリソン夫妻の自宅 二〇一五年六月九日 午後九時三〇分

 率直に自分が感じた疑問点をノートに書き残した香澄は、その答えをフローラに聞いてみる。だが当事者でないフローラに分かるはずもなく、どの質問に対する答えも検討がつかない状況だ。

 まさにお手上げという状況におちいってしまうのだが、なぜか香澄の瞳は依然として輝き続けていた。……香澄にはまだ状況を打開する考えや策でもあるのだろうか?

 その場で軽く深呼吸をした後、心と体をリラックスさせる香澄。その後香澄は何の迷いもなく、まっすぐとフローラの瞳を見つめている。

「どうしたの、香澄? 私の顔に何か付いているの?」

まっすぐな瞳で見つめる香澄に対し、いつもの落ち着いた様子で言葉を返すフローラ。


 一方のジェニファーは、一人蚊帳かやの外に置かれている気分で、どこか寂しそうな雰囲気だ。

「ちょ、ちょっと二人とも……どうしたんですか!? こんな時に喧嘩しないでくださいよ!?」

とっさに険悪な雰囲気になると思ったのか、慌てて仲裁役を買って出るジェニファー。

 だがこの時、ジェニファーはとんでもない誤解をしていた。香澄はフローラに対して、文句や愚痴などを言う気持ちなど一切ない。ましてフローラと喧嘩するつもりも、もちろんない。

『大丈夫よ、ジェニー。別にフローラやあなたと喧嘩するつもりもなければ、この場の雰囲気を壊すようなことはしないから安心して』


 ジェニファーの心に言い聞かせるように、まっすぐ彼女の瞳を見つめる香澄。そんな香澄の心の声を察したのか、それ以上ジェニファーがリビングに漂う和やかな雰囲気を乱すことはない。香澄とジェニファーの関係は、阿吽あうんの呼吸と呼べるような素晴らしい間柄。


 ジェニファーと心のやりとりを終えた香澄は、改めてフローラの瞳を見つめる。

「無理を承知で、フローラにお願いしたいことがあります」

「何かしら、香澄? そんなに改まって……」

 まるで分からないことだらけという状況だが、何故か香澄の瞳は依然として強いまなざしをしている。“【ルティア計画】について調べることによって、真相が明らかになる”と、香澄自身は確信しているようだ。

「現状ではこれ以上調査を進めることは、今の私には出来ません。ですが同時に、いくつかの疑問点も残ってしまいました。でも私は謎を謎のままにしたままで……終わらせたくありません! でもに属しているフローラなら、きっと……きっと……」


 自分が属している組織の話題が出るとは思っていなかったフローラは、コーヒーカップを取ろうとした手の動きを止める。そして香澄の名前を呟いた後、フローラはテーブルに置かれていたコーヒーカップを手に取りそっと喉の渇きを潤す。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る