第2話
囚人はその申し出を聞くと、再び考え込んだ。小さな欲の火はさらなる欲を呼ぶものだ。命の火が消されて、目の前が漆黒の闇に沈む前に、やっておきたいことはあるだろうか。
「そうですね。では東洋の花火というものが希望します。我が国にも花火工場はありますが、その造りはとても大雑把です。ただの明るい光と表現できなくもありません。東洋の、特に日本の花火の輝きは、とても優美で繊細だと聞いております。しかし、日本と我が国には、いまだ国交がありません。この大胆不敵な願いは叶うのでしょうか?」
看守はその二つ目の無遠慮な願いを聞かされても、これにまったく怯むことなく、自信ありげに、大きくひとつ頷いた。
「普通なら遠慮しがちな局面だが、よくそんなことが言えるものだな。よし、わかった。それもお安いご用だ。微力な私の力でも、どうにかなりそうだ」
そう答えると、看守はまたもや携帯電話を取り出し、どこかの部署へと連絡をとり始めた。囚人は居心地悪く、ただ黙って見守る他はない。それから二十分もすると、刑務所の外の広場が、にわかに騒がしくなってきた。男は背伸びをして、太い鉄格子の嵌った窓から、外の世界を覗いてみた。すると、鉢巻きを締めた和服姿の男たちが数十人も集まって、砂丘のなるべく平たい場所を選びつつ、何か大量の筒のような物を、忙しなく並べていき、大舞台の準備をしていた。
「ようし、そろそろいくぞー!」
頭領と思われるひとりが、大声でそう呼びかけると、多くのスタッフの手により、用意された花火に次々と着火がなされ、夜空にひとつの輝きが生まれると、また、新しい花火と取り替えられ、たちまちにして、紺色であったはずの空は、美しい華模様で彩られていった。ここは絶望の世界であるはずだが、いつしか、まったく場に合わないほどの幻想的な空間が拡がっていたのだ。もちろん、孤独に押し込められていた囚人は、またしても我が目を見張った。赤い光、青い閃光、緑色の残光などが次々と夜空を彩っていく。花火職人たちは高い費用を投じて作成した巨大な花火を、惜しげもなく次々と打ち上げていくのであった。わずか二時間の間に、五百発を超える花火が夜空を輝かせ、そして一瞬の輝きとともに散っていった。囚人はまるで人類にとって未知の、天上界にいるかのような幻惑に浸り、その素晴らしい光景にすっかり見惚れていた。
「いや、これは美しい。名状しがたい無数の輝きの奇跡。とても言葉にはならない。私は体験したこともない感動に浸っています。大罪を犯して独房に放り込まれた人間が、こんなにも素晴らしい時間を独り占めに出来たんですからね。この砂漠の空虚な世界において、これに勝る贅沢はありますまい」
「そうか、おまえさんがそこまで喜んでくれれば嬉しいよ。何しろ、これはおまえさんの人生にとって最後の贅沢なんだからな」
看守は自分の為した善行に一応の満足を得たようであったが、なぜか、囚人の側は少しばかり暗い表情になり、考え込んでしまった。
「しかし、こんなことまでして頂いて、本当に大丈夫なんでしょうか? 日本の花火といえば、一発だけの打ち上げとしましても、とても高価なもののはずです。たとえ、先進国の水準にあっても、一般の人の手が届くものではないはずです。それを次々と……、あんなふうに惜しげもなく打ち上げてしまって……、おそらく、費用の方は天井知らずなのでしょうが、お支払いの方は大丈夫なのですか? いったい、散っていったあの花火たちの莫大な費用は、この貧しい国のどこから出てくるのでしょう」
看守はそれを聞いても、まったく余裕の表情のままに小さく首を振った。その疑念は最初から折り込み済みさ、とでも言わんばかりである。
「何度も言うようだが、今夜のひと時は、一般の人には当たり前に過ぎるが、おまえさんにとっては、人生で最も貴重な一刻ではないか。たとえ、処刑直前の囚人であれ、人間の命には金や手間などでは計り得ない、それ相応の価値があるものだ。明日になれば冷酷な処刑により、哀れにも命を奪われる運命(さだめ)にある、おまえさんの寂しさをいくらかでも慰めるためならば、費用はどこからでも、いくらでも湧いてくるものさ。国家というものは、人ひとりの存在の重さにそこまでズブくはない。何せ、長きにせよ、短きにせよ、たった一度きりの人生だからな。おまえさんには、この世で起こったすべての事象について、すっかり満足してから、あの世へと旅立って欲しいのだ」
囚人はそれを聞いてある程度の納得を得た。なるほど、今夜の自分のための特別な計らいは、国家の要人たちが熟慮の上で支払ってくれているのだと、そう湾曲して理解することにした。あるいは、死刑廃止運動に携わる非営利団体からの多額の寄付金があったのかもしれない。これらは曖昧な推測になるが、それ以外に納得のいく説明は見つけようもなかった。
「その答えを聞いて安心しました。犯罪者である私に対して、国政を司る偉大な人々が、そこまで気を使ってくれるとは夢にも思わなかったのです。あなたの丁寧な説明を聞いて、とても感動しました」
「まだ夜明けまでは多少の時間がある。何か他に願い事はないのか? もし、思いつかないなら、それでもいいのだが、もし、まだこの世にいくらかの執着があるのならば、何か希望を出して見るといい」
そう尋ねられてはみたものの、己の半生のこれまでの勝手気ままで横暴なる振る舞いのことを思い出すと、またしても贅沢なる願いを繰り出すなどというのは、あまりにも図々しいのでは、とも思われた。だが、ここまできたなら、その丁寧な誘いに対して、今さら無下に断るのも、かえって悪いかもと思い直し、遠慮もなしにさらなる願い事を打ち明けることにした。
「そういうことで有れば、図々しくも申し上げます。位置としては、ここからさほど遠くない位置になりますが、ジェンダという港町の一角におきまして、二十歳にも満たぬようなダイヤのような磨き抜かれた美女たちを数十人も雇うダンスホールがあるのです。その店では、彼女らに薄い水着のような淫らな格好をさせて、夜な夜な踊り明かすそうです。私も重大な犯罪を犯す以前から、その店の存在はよく知っておりまして、折あらば、一度でいいから通ってみたいものだと妄想を膨らませていたわけです。しかし、根が純情なのと、その店の入場料がべらぼうに高額なこともあって、結局訪れないままになっていました。あの美女たちの華麗なダンスを、もし、生きているうちに見られるのであれば、それはもう、この世にはなんの未練もなくなるでしょう」
「まだ、そのような欲望に満ち満ちた願い事があったわけか。その言葉はどうあれ、いつまでもこの世への未練の断ち切れぬところに人間の本性はあるようだな。それにしても、人の腸(はらわた)の中には、人生の最後の最後に至るまで、何かが残っているということなのだな。では、了解しよう。希望はジェンダの踊り子たちだな。よし、すぐに準備をさせるから、そこで大人しく待っていろよ」
看守は今度も落ち着いた様子でそう応じると、三たび携帯電話を取り出し、どこかへ電話をかけ始めた。その電話のやり取りも、ほんの十数秒で、すぐに話はついたようだった。緊急時であるのに、そのかけ慣れている様子が、次第に薄ら寒い印象を与えてきたのも事実である。囚人はもしかしたら今度も、という大いなる期待に心躍らせながら、表面上はそれを表すこともなく、命じられた通り、冷静な態度で微動だにせず待っていた。
それから二十分ほどもすると、監獄内がにわかに騒がしくなり、どたどたという明らかに大人数と思しき、短靴の軽やかな足音が辺りに響き渡った。三十人以上もの水着美女たちが、一列に並んで唄い踊りながら、賑やかな振る舞いでやってきたのだ。太鼓や角笛や巨大なラッパを背負った演奏役の男たちも、その美女たちのあとに続いてやってきた。
一行は監房の中に入り込んでくると、囚人の男を取り囲み、なかなか打ち解けようとしない彼の顔に向けて、にこやかに手を振り、それから、うやうやしく一礼をした。そして、次の瞬間、たちまちに派手なリズムが辺り一帯に鳴り響き、大勢の美女たちによる、華やかな舞台が始められた。汚れを知らず、若々しく爽やかな美女たちは、ほとんど全裸のような淫らな格好で、頭には純金の髪飾りを刺し、純金の首飾りを下げ、銀色に光り輝くプラチナ製の鞭を振りかざし、腰をくねらせて天女のように踊り続けた。その姿にすっかり魅せられた囚人の興奮は、今やピークに達していた。最初は座って声援を送りながら、拍手を合わせているだけだったが、彼女らのリズムカルで陽気なダンスを見ているうちに、居ても立っても居られなくなり、彼自身もやおら立ち上がると、美女の肩や腰に手を回して、一緒に踊り始めたのだ。本来なら、ここは重大犯罪者の巣である。その陰鬱な雰囲気とかけ離れた、あまりの大きな騒ぎにより、いったい何が始まったのかと、付近の監房の囚人たちも鉄格子越しにこちらを覗き見ようとしているが、角度的にそれは難しいように思えた。
今夜の優美な、そして淫らなダンスパーティーを享受できるのは、処刑を明日に控えた、地上でもっとも不幸なはずの囚人ひとりだけなのだ。その踊りも終盤に差しかかる頃、彼はもうすべての苦悩を忘れ去り、有頂天になっていた。汗だくになりながら、約一時間に渡って、踊り子たちと共に踊り続けた。その結果として、自分の人生で成し遂げるべき目的のすべてを、すでに達成していたように感じていた。あまりの幸福により、自分が明日死ぬべき運命にあることさえ、忘れてしまっていたらしい。やがて、夜空が東の方から白みだすと、ダンスチームの一行は素早く後片付けをして、ここに入ってきたときと同様に、うやうやしく礼をして、引き下がっていった。囚人はこの夜の数時間の出来事に、すっかり満足していた。もう、地上に思い残すことなど、何もなかった。何しろ、犯罪に手を染める前は、何ひとつ叶わなかったことが、人生の崖っぷちに立つ今になって、すべて叶えられたのだから。彼は熱い幻想から覚めると、看守の靴の前に跪き、熱くお礼を言うのだった。
「ああ、果たして、今の私以上に幸せな人間がこの世にいるのでしょうか。たった数時間の有り難い施しにより、この世の楽しみをすべて味わい尽くしたように思えます。もはや、この地上には、一切の未練はありません。天国への土産話も十分にできました。もうすぐ直面するであろう処刑の時を、喜んで受け入れます」
看守も囚人のその素直な反応を見て、ようやく緊張の解けた暖かい笑顔を浮かべると、満足そうにひとつ頷いた。
「そうか、この世で過ごす最後の一夜に、思う存分満足出来たのなら、それはとても良いことだ。俗人は往々にして死を前にした時、こちらが如何に喜ばせようとも、思考がどうしようもなく暗い方向へと傾いてしまい、目の前において突発的な喜びごとが起きていても、脳の理解がそれを取り入れられず、素直には喜べないものだ。だが、君のその達観した表情を見る限り、すっかり今夜のイベントに満足してくれたようだな。そこまで喜んでくれたのなら、長い時間をかけて準備をしてきた私としても嬉しいよ。さあ、あとはふたりで雑談でもしながら、その時を待とうではないか」
二人は牢屋の床に粗末な敷物を敷いて、その上に肩を並べて座り、処刑場の役人がその運命を伝えに来るのを静かに待っていた。普段なら、その残酷さに誰もが目を背ける瞬間である。看守は時折すぐ横にいる、囚人の様子を伺ったが、男の表情には、怖気付く様子は、少しも見られなかった。すでにこの広い世界のどこにも未練はないようで、少年のような清々しい表情で、天からの迎えがくるその時を待っていた。しかし、夜がすっかり明けてしまってから、さらに二時間ほどが経っても、刑場からの迎えの使者は来なかった。処刑当日の前例によれば、この時間には、とっくに迎えがきているはずなのだが……。看守は痺れを切らし、首をひねるようになった。
「おかしい……、まだ、迎えが来ない……。もしかすると、何か不測の事態が起こったのかな?」
その時だった。監獄の薄暗く長い廊下を、けたたましい足音が響き渡って、一人の下っ端の役人が腕を振り上げながら大声で何か喚き散らし、凄い勢いで駆け寄ってきた。
「大変だ! 大変なことが起きたぞ! 天地がひっくり返ったんだ!」
その腕白の役人は顔面蒼白になって、狂ったようにそう叫んだ。
「どうした、いったい何が起きたというのだ。何にしても、取り乱してはいけない。まずは落ち着けよ」
看守は真に驚くべき報告を携えて、ここまで駆けてきた同僚を冷静な態度でなだめると、ガラスコップに冷たい水をついでやり、それをひとくち飲ませてやった。長距離を懸命に走ってきた、その小役人は水を飲むことで、ようやく、ある程度の落ち着きを取り戻したようだった。
「それが、大変なことが起きたんだ! まさに革命的だ。長年世継ぎに恵まれずに深く悩まれていた我が国のお妃が、つい先ほど念願の男の赤ちゃんを授かったんだ!」
「おお、それはめでたい! この国の行く末を気にしていた、政界の要人や高級官吏の皆様も、今ごろは、さぞかし喜んでおられるだろう」
看守も素直に顔をほころばせて、そう言った。
「ところが、話はそれで終わりじゃないんだ。いいか、正気を保ってよく聴けよ。国王は念願のご子息を天から授かったことを、この上なくお喜びになられて、ただちに国中に恩赦を発せられたんだ。それによると、すでに十年以上牢獄に囚われている重大犯罪者たちは、今日この時点において、全員無罪放免になるということだ」
「そ、それは本当ですか? ということはつまり……」
処刑直前の立ち位置であったはずの囚人は、すがりつくようにして、この急報を携えてきた役人の男の足下に身を投げた。
「そうなんだ、そういうことなんだ。つまり、君はこの瞬間に無罪放免だ!」
役人は男の肩を何度も強く叩いて、正気を取り戻すように、あるいは励ますようにそう言った。すでに十三年も監獄に囚われてきた男は、その夢物語を聞いても、まったく実感が湧かず、信じられないような思いだった。
「さあ、君は今から自由の身だ!」
役人は勢いよくそう告げると、男の手錠と足かせをすぐさま外して、牢屋から外へと出してやった。囚人は膨大な時間を乗り越えて、ようやく無実の身となり、監獄の外に出られる喜びを噛みしめるように、よろよろと監房の外の世界をゆっくり歩き回った。
「ああ、これは本当のことだろうか……。何度ほっぺたをつねっても、この夢からは覚めない……。看守さん、あなたは先ほど言ってくれましたよね。私は十三年もの間、自分の手で死へ追いやってしまった、哀れな被害者の方々に心からの祈りを捧げてきた。彼らも私の罪を許してくれる頃合いだと……。まさにその通りのことが起きたんです。我が祈りは天へと届き、神の御意志がついに私を許してくれたんです!」
囚人は天を仰ぎながら、感極まってそう叫んだ。彼は看守の手を握って激しく嗚咽した。これは無念のままにこの世を去っていった、これまでの多くの囚人が決して為しえなかった勝利であった。
「本当にありがとうございました。あなたの温かい思いやりのおかげで、今日まで絶望に屈することなく生きてこられたんです。その甲斐があって、私はふたたび無実の身になりました。これからは人の役に立つ職業に就いて、他人には温かく接し、自由に生きていきたいと思います」
しかし、不思議なことに、恩人であるはずの看守は、その真剣な感謝の言葉を聞いても、あまり嬉しそうな様子には見えなかった。奥歯に物が挟まったような複雑な表情をしていた。彼は囚人には決して聞かれないように、謎めいた独り言を発した。
「いや…、しかし、本当にこんなことでいいのかな?」
囚人が何度も両手を空に向けて突き上げ、甲高い雄叫びを上げ、喜びを噛み締めていたが、恩人であるはずの看守は、戸惑いを隠せないように、少しうつむきながら呆然と立ち尽くしていた。その態度は、今後の成り行きを不安視しているようにも見えた。囚人は二人の役人に対して、もう一度丁寧な礼を述べてから、いよいよ、敷地の外へ、つまり自由の空へと旅立って行こうとした。今日が終点と決まっていたはずの運命は、にわかに翻ったかに見えた。しかし、監獄の入り口では、黒いスーツを着込んで、サングラスをかけ、その手には目に余る物騒な武器を多数携帯した、不気味な男たちが囚人を待っていた。
「あなたたちは、どういった方々ですか?」
新たな訪問者に、多少脅えながらも、釈放されたばかりの囚人は勇気を振り絞ってそう尋ねてみた。
「うるせえ! 何をとぼけてやがる! さっさとこっちに来い! 今日処刑されるはずだった囚人ってのは、おまえのことだな?」
その風貌から、明らかにマフィアの一味と思われる男たちの怒りの矛先は、どうやら無実に転じたばかりの囚人に向いているようだった。
「こ、これは、いったいどういうことです?」
囚人は震えながらも振り返り、無言のまま、申し訳なさそうに立ち尽くしていた看守に尋ねた。
「うむ…、君の処刑については、確定事項と考えていたからな…。この私としても、まさか、こんなことになるとは…」
看守は申し訳なさそうに、後頭部を二三回かいてから事情を説明した。
「実は今日の処刑によって、間違いなく失われるはずだった、おまえさんの命を、生命保険会社への担保にして、マフィア系の金融機関から大金を融通してもらっていたんだ。おまえさんには事前に何も伝えなかった。伝えても意味はないと思い込んでいたんだ。だが、今となっては状況が暗転してしまった……。ほんの少しでも、助かりたいと思っていたのなら、勝手なことをして悪かったな。でもな、そうでもしなければ、花火やら食事やら、あんな贅沢をさせる費用は、この私には捻出できなかったろうしな。だから、マフィアの連中にしてみれば、君が予定通り、この時刻にきちんと死んでくれないと、こちら側に貸した多額の金銭が取り戻せなくて困るというわけさ」
看守はそれほどの罪の意識もない様子で、淡々とそう話したが、囚人はそれを聞いて、絶望の谷に一気に叩き落とされ、その顔は真っ青になった。
「ちょっと待ってください! つまり……、恩赦の特例によって、せっかく無実になれたというのに、私は結局死ななければならないというわけですか?」
「すまん、どう計算してみても、そうならないとまずいんだ…」
看守は申し訳なさそうに、何度も頭を下げた。
「何をぶつぶつ言ってやがる! おまえは死刑囚だろうが! さっさとこっちに来やがれ!」
マフィアの男たちは、身体中から殺意をほど走らせながら、数人がかりで囚人を羽交い締めにした。男は一度地獄から天国へと引き上げられ、今また一転して地獄に突き落とされ、もうすでに、自分の身に何が起きているのか、わけがわからなくなっていた。
「いやだあ、死にたくない! なんでこんな目に、私は何も、何も悪いことなどしていないのに~」
囚人はすっかり錯乱して泣き叫んだが、マフィアたちは乱暴にその身体を引きずって外に連れ出そうとしていた。
「今さら、抵抗するな! さっさと来やがれ! 砂漠でも海底でも、おまえの好きな方に埋めてやるぜ!」
囚人は必死に抵抗して、泣き叫びながら、周囲に助けを求めたわけだが、看守も他の役人も、ことの成り行きを、ただ黙って見守ることしかできなかった。
最後の夜の願い つっちーfrom千葉 @kekuhunter
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