第47話 エピローグ

 ゲームをクリアして1ヶ月。

 七海に毎日のように狩りだされ、改善点などを洗い出した。


 そういえば、七海がダンジョンの壁を参考に、自己修復するコンクリートを開発していた。クラックが生じても時間とともに、そのクラックが直っていくし、少し傷をつけて欠けても、その部分が直るというとんでもないものだ。ただ、1週間くらいしかもたないのが難点で、どうやったらもっと長い時間もつようになるのかが課題らしい。


 ただ、七海に言わせればそちらは行き詰まった時の遊びのようなもので、別のことを中心にしているようだ。


 ここ3日間、七海はようやく落ち着いたのか、学校が終わるなり研究だと言って、俺を学校からそのまま研究室へと拉致していたが、それもなくなった。


 これでようやく最近していなかった最近のゲームができるというものだ。確かにレゲーにはレゲーなりの面白さがあるし、七海の研究も面白いから、それはそれでいいのだが、自分の時間を自由に使うのも必要なことなのだ。


 そして、俺は家に帰り、最新ゲームに興じる……予定だったのだ。

 そう予定。予定は未定であり、決定ではなかったのだ。


 家に帰り、自分の部屋の扉を開けると、七海が待っていた。


「やぁ、奏、待っていたよ」

 

 秒速で扉を閉じる。


 ……いやいや、待て待て。ここは俺の家だ。そして、この扉は俺の部屋だ。さらに、両親は今仕事でいない。なので、この家には物理的に俺しかいない。

 よし、今のは幻。もう一度、扉を開ける。


「奏、なんのためにさっきは扉を閉めたんだい?」


 もう一度、扉を閉める。

 ……頭を冷やし、再度、扉を開ける。やはり、いる。


「新しい運動かい?」

 頭痛のタネが問いかける。

「運動じゃない。……お前が俺の部屋に入ることのできたのはどうしてだ?」 


「キミの部屋に入れたのは、ボクがキミのご両親から鍵をもらったからだ。この年になれば、逆にキミにはボクの監視があったがいいだろうとの判断だ。これでも、成績優秀なものだから、信頼されたと見える。それに比べ、キミの成績は下降していると聞く。ご両親も心配していたぞ」


 なんてことしやがる。

 俺のプライバシーはどこにいった。


「ちなみに、仮にもボクの性別は生物学上メスであり、奏はオスであることをやんわりと伝えると、キミのご両親は『あいつにそんな度胸があるならとっくの昔にそうなっている』とのことだった。ボクも大きく得心して、鍵をもらい、ここにいるわけだ」


 なんてこと言いやがる。

 俺の尊厳はどこにいった。


「……で、ここにいるのは、俺の勉強を見るのが目的か?」


「確かに、それが目当てで鍵をもらっているわけだから、それはしなければならない仕事だが、今、ボクがここにいる目的だが、今度は携帯ゲーム機で実験に成功したからだ。今度は脳への負担を考えて、いろいろと工夫をした。問題ないだ」


 『』か。


「ここのソフトから自由に選んでくれてかまわない。あのゲームは数あるゲームの中でも鬼畜として有名らしい。だから、あのゲームをクリアしたボクなら、どんなゲームも必ずクリアできる。さぁ、やろう」


 そう言って、七海が得意げにソフトと猫耳を取り出した。実に楽しそうだ。うん。その笑顔はかわいい。俺だって認めてやる。


 だが、その中身は絶対に認めるわけにはいかない。

 七海を前に俺は叫んだ。


「……レゲーなんて理不尽、もう二度とやらねぇ!!!!!」


(終)





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レゲー特有の理不尽と偏りが想像以上にきつい件 水瀬 由良 @styraco

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