第41話 究極の脳筋

 祠に戻されて、さっそくもう一回デスキエルに挑戦しようと思ったが七海に止められた。


「ラストは必ず二連戦になる。フーリガにあんなに苦戦しているようじゃ、デスキエル戦はおぼつかない」

「フーリガは身を捧げて、デスキエルを召喚してんだろ? どうして、またフーリガと戦う羽目になるんだ?」

「その感覚は正しいのだが、おそらく、デスキエル戦はイベント扱いでフーリガとは1つのイベントになっている。だから、フーリガは倒しても、復活する仕様になっている。なんなら今から会いに行ってみるかい?」

「いや、いい」


 ……頭痛がしてきた。命を捧げて、召喚したんじゃないのかよ。フーリガを倒せば、次からはデスキエルから戦いたかった。

 あの様子では何回も連戦はきつすぎる。アベルの会心の一撃に頼っての撃破で、再現性がないこともないが、デスキエルの強さからしたら、何回か全滅することはもう前提。優しいデスキエル君を探すことにしても、フーリガの短時間での撃破は必須だ。


 まずはもう一回レベル上げをする。

 

 とにかく、レベルを上げて殴れ、殴られてもいいように体力(HP)をつけろの脳筋ゲーム。


 フェンリルだの、バロールだの、デビルエンペラーだのを駆逐するかのように倒していく。


 目標を捕捉次第、殴る。基本はこれの繰り返し。実に単調だ。レベル上げというものはそういうものかもしれない。


 そうして、レベルを上げて挑んだフーリガ戦。

 ……実に簡単に倒せた。


 普通にゲームをしていて到達するレベルと適正レベルがずれているだけで、想定としてはゲームバランスとしてはちゃんとできていたのかもしれない。

 もちろん、普通にゲームをしていて到達するレベルをちゃんと考えろとは思う。


 さて、2回目のデスキエル戦。


 ……強い。強いよ。

 1回目のデスキエル戦。強さを感じる前に瞬殺された。なるほど瞬殺されるはずだ。もちろん、2回目も負けました。

 おかげで、七海から聞いていた情報と合わせて戦力分析もできた。


 デスキエルの特徴を一言で表すと


『究極の脳筋』


 これだ。


 まず、単体攻撃で95前後のダメージ。全体攻撃に85前後のダメージ。前よりわずかながらも受ける打撃が減っているのはこちらの防御力がレベルアップによって上がっているからだ。


 単体攻撃と全体攻撃の違いこそあるものの、基本的に物理で殴られている。ランダム二回攻撃。守備力はカンスト。HPは255。

 魔法は、完全回復魔法のみ。ただし、完全回復魔法を唱えるターンは攻撃してこない。


 完全回復魔法はフーリガとは違いランダムに唱える。要するにフーリガとは違って『馬鹿』

 脳筋仕様、ここに極まる。


 そして、単体攻撃の時に、こちらの攻撃力が減る可能性がある。一度、攻撃を受けた時に驚いたが、武器が弾かれた。もちろん、そのターンのダメージは1。これでは勝てないので、武器はデスキエル戦に限って、使うことで装備扱いになる。


 どういう処理をしているのかは分からないが、この再装備のおかげで次のターンからは一応普通の攻撃ができるようになる。


 ただ、この戦闘に限りというのがポイントで、これに気づかず下がった攻撃力のままなすすべもなく、全滅してしまった小学生が後をたたなかったという。


 そして、何回も挑戦して半ばやけくそになった小学生が道具として使うとなぜか普通に攻撃できて、何とか倒したのが口コミで全国に広まっていったとか。

 このことから、何を学ぶべきか。理不尽を学ぶのか、口コミネットワークのすごさを学ぶのか、試すことの大切を学ぶのか、あるいは折れない心の強さを学ぶのか。


 当時の小学生の心の強さに感心するばかりだ。


 しかし、戦えてはいたものの、ジリ貧だ。理由は簡単で、敵の攻撃に回復が追いつかないからで、ランダムとは言え、2回攻撃は脅威だ。

 

 また、レベル上げかぁ。

 なんせダメージソースが足りない。


 やられる前にやれということが基本のこのゲーム。ダメージソースがないことは致命的だ。


 ところが、そんな俺を見て七海が笑う。

「もうレベル上げは必要ない。十分勝てるはずだ。フーリガをある程度楽に倒せるだけのレベルがあれば、デスキエルは倒せる。もちろん、運は必要だけどね」

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