第32話 長く険しい道のり

 全滅する前にらいげきの剣を手に入れることができた。

 なんか分からないが、七海が先制攻撃する確率が高くて、かなり戦えた。


 もちろん、道に迷いまくったが、その道に迷ったおかげでらいげきの剣を点に入れることができた。

 らいげきの剣を手に入れたところよりも少し先に行った瞬間に、ドラゴンに囲まれて、2グループぐらい撃退したあたりで、薬草と七海のMPが切れてジ・エンド。


 だって、ドラゴンってファンタジーのお約束通り、炎を吐いてくるんだもんな。

 4匹で表れて、みんなで仲良く炎ってHPの消耗が激しすぎる。らいげきの剣を持ってるから、一撃で倒せてはいる。

 

 数は減る。

 それに、七海の水の衣のおかげで炎のダメージは軽減できる。それでも、強いものは強いんだから仕方がない。

 

 いつものフレーズで起きて、アベルと七海を生き返らせて、薬草を補充し、再び山道へと突入する。


「勇者の鎧とらいげきの剣、これでダンジョンの装備は取れた。あとはシバミアクへと行くだけだね」

「それが険しい道のりなんだがな」


 そういえば、七海は出てくるモンスターは大体知っているみたいで、ドラゴンについても、攻撃魔法は2分の1の確率で効く、眠りは効かない。

 七海に聞いて予習をしておく。


 最初の骸骨、バーサーカー、キルマシ―ナリー、ドラゴンの他には、精霊系のサラマンダー、小悪魔系のベビデビ、悪魔系のゴールドデビル、獣人系のキングオーク、人形系のパペットと言ったところで、バラエティに富んだラインナップとなっている。


 まだあってない敵で警戒すべきなのは、まずはサラマンダー。

 ドラゴンと同じく炎を吐いてくる。ドラゴンよりも耐久性に劣るが、サラマンダーというだけあって、こちらのダメージを与えるタイプの攻撃魔法は効かない。なにせ、こちらのダメージを与えるタイプの攻撃魔法は火炎魔法に、爆発魔法。

 火炎をあやつるサラマンダーに効くわけがない。

 もっとも、即死魔法が効くので、アベルさえいれば倒しやすいらしい。


 次にゴールドデビル。とにかく速いという設定。

 この敵、その設定を活かすためか、先制攻撃率が2分の1。敵にいるだけで厄介。攻撃力は大したことないし、攻撃魔法も効くが、とにかくその存在自体が凶悪。


 そして、キングオークはとにかく耐久力が高く、中級回復魔法を使う。

 獣人系の割には回復役で、その高い耐久力で敵の攻撃を耐えている間に周りを回復する。一匹だけならたいしたことないが、他の敵と現れると、他の敵が強いだけに回復役としての優秀さが際立つ。

 

 人形系のパペットは木偶人形でくにんぎょうと同じく、MPを削る妙な踊りを踊る。木偶人形でくにんぎょうよりもHPが多く、特殊能力の厄介さは変わらない。


 こいつらは要警戒。


 つまり、小悪魔系のベビデビ以外は要警戒ってことになるが、

 しかも、警戒したからと言って、対策がとれるとは限らない。ゴールドデビルなんてその最たる例で、戦闘中は大したことないのに、現れるだけで先制攻撃される。


 っていうのは、事前知識として入れておいたが、実際に遭遇してみるとやはりひどかった。


 まず、どっちがお伴かは分からないが、ドラゴンやサラマンダーなんかがいた日には、先制からの炎の攻撃。これだけで相当きつい状況に追い込まれることもある。

  

 それに、キングオークとパペットのコンビも実に地味ないやがらせである。

 直接の攻撃力は低いものの、MPを削られる=ダンジョンを進むことができないことになるので、早めに倒してしまいたいが、キングオーク、パペットともに耐久力が高く、パペットから先に倒そうとすると、キングオークが回復するし、キングオークから先に倒そうとするとパペットが妙な踊りをしてくる。

 実にいやらしい。


 しかも、随所に無限廻廊が用意されていたり、落とし穴があったりで、凶悪そのもの。


 こんな調子でダンジョンは抜けるのに相当かかった。

 

 どのくらいかかったというと、突入回数は7回目ぐらいまでは数えていたが、途中で回数を数えるのは諦めたくらいだ。その後も、まだあるのか、そして、また最初からかという絶望感を何度味わったことか。


 しかも、俺はこのダンジョンの敵であれば、一撃で沈められるようになり、アベルは自爆魔法、蘇生魔法を使えるようになった。

 レベルが上がると、単純にあらゆる意味での耐久力が上がる。MP切れを起こさないし、完全回復魔法なら純粋に回復量も上がる。アベルが蘇生魔法を覚えたおかげで、アベルが生きてさえいれば、対処が楽になった。そういう意味では最初の方よりもずっと奥に進むことが可能になった。

 

 こうして強くなってもなかなか突破できなかったのは、結局ダンジョンは道を覚えて進むしかないからだ。

 何度、無限廻廊に惑わされ、何度、落とし穴に落とされたことか。


 こうして、何回も突入と離脱(強制離脱、つまり全滅)を繰り返して、ようやくたどり着いたシバミアク。


 山道を超えて、見えたのは一面の雪景色。


『トンネルを抜けると、雪国だった』

 あまりに有名な小説の一説であるが、まさにそんな感じ。


「よ、ようやく抜けたか」

 ここまで長かった。


「なぁ、この先にセーブポイントはあるよな?」

「ああ、町はないが、ちゃんと移動魔法で戻って来ることのできる登録ポイントがある」

「よし、あの地獄を抜けてきたんだ。これを思えば……」


 七海が鼻で笑う。


「奏、何を言っている?」












ここからが本当の『地獄』ってやつだよ











 


 

 



 

 

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