第29話 神様とか精霊って一体……

 光のお守りを手に入れたことで、5つのお守りが手に入った。

 後は、世界のどこかにある祠に行って聖なる首飾りを手に入れることになる。その祠の位置は今はどこか分かっている。

 いろいろと世界を回ったからな。


 その時は、何の祠かよくわからなかった。

 とにかく海底につながる階段を下っていくと、神殿のようなところに出た。なんか5つほど燭台があるわりには一つも火はついていなかった。

 真ん中に、これ見よがしに祭壇みたいなのがあったから、おそらく、あそこが5つのお守りを持っていく場所だろう。


 今の拠点はタミト。シバミアクへと続く山道に一番近い。

 ここから、ちょっと遠いが、もはや海の敵で全滅することはまずない。アベルの攻撃でも一応敵を倒すことができるぐらいにはなっている。


 ちょっと面倒なだけの船旅だ。

 

 危なげなく、祠についた。

 どちらかというと、敵と遭遇するやいなや大爆発魔法をぶっぱなす七海がヤバかった。


 ずっと海底に向かっていく。

 ここの階段は螺旋になっていて、ぐるぐると回っている。最初に来たときは無限に続くかとさえ思ったぐらいに深い。


 その階段を降りきり、祭壇に行く。

 突然、5つの燭台に1つずつ炎がともる。

 どこからともなく声が聞こえる……


「よくぞ、ここまで来ました。私はこの世界を司る精霊ライア。古の勇者の子孫よ……私には分かります。はるか昔、私は勇者と約束をしました。……勇者に対するせめてもの罪滅ぼし。勇者の子孫が困るようなことがあれば、必ず助けると。その約束を果たす時が来たようです。この首飾りを授けましょう。この首飾りを握りしめれば、邪悪な呪いや幻を打ち破ることができるでしょう。では、お行きなさい。あなたたちにはいくべき場所があるはずです。私はあなたたちをいつも見守っていますよ」


 ……

 手元には聖なる首飾り。そしてその代わりにお守りがすべてなくなっていた。


 俺が第一に思ったことは『アイテム欄に空きができた』である。

 きつかった。5つものアイテム欄の圧迫は本当にきつかった。イベントアイテムをえられた喜びよりもずっと大きい。

 思わず、ガッツポーズをしていた。


 これで『薬草』をもって、シバミアクへと続く山道に挑める。


「そんなに嬉しいか?」

「いや、5つのお守りがなくなったことが嬉しくて」

 不思議に思っても仕方ないから、説明をする。


「なるほど、それなら分かるが……」

 七海が続ける。


「精霊というものは控えめに言っても、不親切極まりないな。考えてもみるがいい。自称とはいえ、仮にも『世界を司る』精霊だろ? このような魔物だらけの世界になるまで何故放置しておいたのだ。それとも何か? 魔物は管轄外なのか? 魔物が管轄外としても、それに対抗できるだけの力を人間に与えなかったのは何故だ? それに勇者の子孫が困ることがあれば、必ず助けると言うほどの約束の品が邪悪な呪いや幻を打ち破る程度のものとは、出し惜しみにも程があるだろう。ましてや、精霊は勇者に対して何らかの罪を犯したみたいだった。『罪滅ぼし』と言っていたからね。そうであるにもかかわらず、伝説の装備を用意するわけでもなければ、大魔法を用意するわけでもない。この程度の協力が伝説になっている勇者との約束を果たすことと思っているというのは、勇者を低く見積もっているか、もしくは自身を高く評価しすぎているかのいずれかだろう。こういうのを傲慢というのだ。さきほどは不親切と言ったが、それ以上のものだ。なんなら……」


 うわぁぁああああ。七海が止まらねぇ。

 確かに正論だが、ズタボロだ。

 いや、確かに不親切……を通り越して、傲慢とも取れなくはないが、RPGの神様役ってこういう感じだ。


 だって、神様的な何かが問題解決したら、それはもはやRPGではないだろう。

 神様はとても奥ゆかしいか、もしくは封印されているか、あるいは相手の力が神様の力を上回っているかのどれかで神様は直接手を下してはならないのだ。


 ここらへんはレゲー特有のものではなく、もはやRPGにおけるお約束と言ってもいいだろう。神様とは肝心なところで役に立たないお助けキャラなのだ。


「七海、そうは言っても、敵を倒して世界を救うのが主人公たちの目的だから、神様が倒したら冒険できないだろう?」

「ご都合主義ってやつだね」

 そんなもんかもしれない。


 海底神殿から抜け出して、タミトの町に戻って薬草を補給して、シバミアクへの山道へと行く。このゲーム最後の最後まで薬草に頼りっぱなしだな。この頼り方からすれば、むしろ、道具屋が神様に思えてきた。

 

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