第22話 みんなよく知っている

 もう攻撃魔法が貧弱なのは仕方ない。

 アベルは打撃も魔法もできるというのが売りだったわけだが、七海から聞くに攻撃魔法も貧弱だし、即死魔法も微妙、自爆魔法にいたっては蘇生魔法を使えるのがアベルしかいないせいでおよそ使えない。

 器用貧乏というか、単なる貧乏じゃないのかな?


 アベルの弱さを嘆いても仕方ない。

 鍵はそろっているので、世界中で情報を集める。

 

 まぁ、出るわ出るわ。重要情報がいっぱい。囚人たちの情報網は半端ない。


 例えば、火山への入り方。

 入口には跳ね橋がかかっていて、鍵がないと入れない。鍵は邪教の信者しか持っていなくて、手に入れるには盗むぐらいしかないんじゃないかとは囚人の言葉。


 なるほど、ここにあの跳ね橋の鍵が出てくるってわけだ。

 鍵がそろえば、どこにでも行けるわけで、順番が逆になることもある。


 例えば、5つのお守りのありか。

 光のお守り、火のお守り、水のお守り、風のお守り、土のお守り。

 このうち、水のお守りは世界中をめぐっているうちに牢屋にいたモンスターがいたので、入って倒したら持っていた。

 

 おそらくボス扱いなのだろうが、この異常な敵の数を誇るこのゲームで世界中の旅ができるというのは、かなり強くなっているってことでもある。連戦をこなせることは、そんじょそこらのモンスターが連続で襲ってきても戦えるってこと。

 そんな中で単発のモンスターなんて、相当格上でもない限り、恐れる敵ではない。

 

 風のお守りはどっかのお城の王様がなんかモンスターと戦ったら、『あっぱれ』とかでくれた。

 実に軽いノリだった。

 水のお守りと同様、単発のモンスターなど恐れるに足りない。


 まだ手に入れていないのは3つ。

 光のお守りは、最終フィールドのシバミアクに続く山道のどこかで手に入る。シバミアクは言ってしまえば、邪教の大司教フーリガが支配するフィールドであり、闇に包まれたフィールドと言っていい。

 そこに続く山道のどこかに光のお守りはあるという。

 逆説的な話だ。


 火のお守りは獅子王の子孫が持っているらしい。

 ちなみに獅子王は、シリーズ第1作のラスボスらしい。もともとこのシリーズは3部作で構成されていて、第1作は原始的なRPGの面白さ、第2作はパーティの面白さ、第3作はキャラ作りの面白さを追及したかったのだという。

 ちなみに、3部作構成以外はすべて七海の受け売りだ。


 シリーズ第2作にしてシリーズ第1作のファンにも配慮した内容になっているあたり、さすがに伝説のシナリオライター堀内洋一のシナリオと言っていいと思う。

 世界観としては、第1作のフィールドの外がこの世界らしい。


 そして、最後の土のお守り。

 これは女神の泉が集まる祠のどこかに落ちているらしい。

 この土のお守りのぞんざいな扱い。どっかの祠に落ちている扱い。いつの時代も土は不遇だ。このシリーズと肩を並べるファイナルクエストでは、いつも四天王とか言って火水風土のそれぞれの力を操る中ボスが出てくる。


 このうち、火水風については序列が変わることもある。火が強いことが多いが、シリーズによっては、水が強くなったり、風が強くなったりもする。

 ところが、土はいつも最弱で固定なのだ。


 たいがい、他の四天王に

「くくくっ、やつは四天王の中でも最弱……」

と言われる扱い。


 そして、このドラゴンファンタジーでも土は不遇の扱いだと思う。誰に所有されているわけでもなく、落ちているだけの扱い。


 しかも、一番、場所が分かりにくい。祠に落ちているっていうことはある程度の目星はつくが、そこからはしらみつぶしに探さなければならない。

 土のお守りだけが後回しにされそうな感じな上、そうな感じすらある。小学生達にウザがられている土のお守りが容易に想像できる。ただ、これについてはそう苦労はしなさそうだ。


 そして、各お守りを集めた後は、精霊のお告げ所に行くと、精霊のお守りがもらえる。この精霊のお守りが大司教フーリガの幻術を破るとのことだ。


 さらに、シバミアクへの山道への入り口の場所。

 邪神像をかかげると、山が割れて、山道が出てくるらしい。この場所に行くには、タミトの町にあるバリアに守られている女神の泉を通ることになるらしい。


 これらの情報をかき集めると、大司教フーリガまでの情報がほとんど集まったということになるだろう。

 確かにすべての鍵を持っていて、集まらない情報がある方がおかしい。


 しかし、なんのために囚人達は牢屋に入れられているのだろう? 牢番は囚人について語らない。

 こんな重要な情報を持っている人物だぞ。

 むしろ、国が厚遇してもいいぐらいだと思う。ここまで、囚人たちが重要な情報を持っていると、逆に情報が出回らないように閉じ込めているとしか思えない。

 

 考え方としては逆で、もしかしたら、重要な情報を持っている人物をかくまうことができる施設が牢屋ぐらいしかないのかもしれない。

 王族の部屋ですら、自由に出入りできたからな。


 そういえば、七海の城マヤイラスでは、直進していたら王の部屋に着いたな。大した警備もなく。

 牢屋は最も安全な場所。そう考えれば納得できないこともないか。


 そういえば、囚人とは言い難い服装のやつもいたな。

 行く場所も決まったし、あとはモンスターを蹴散らしながら、それぞれのお守りを集めて、進むだけだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る