第21話 攻撃魔法の種類が少なすぎる
金の鍵まで手に入れることによって、情報源も増えたのだが、それ以上に強くなって町の外を歩いてもある程度は戦えるようになった。
どこあたりにある町なのか、女神の泉で移動しただけでは分からないし、女神の泉では行けない場所もある。金の鍵があったサカセの町には女神の泉はなくて、陸地を歩いて行かないといけない町だった。たまたま海から町までが近くて、モンスターと戦わずに済んだわけだが、もし、陸をけっこう歩かなきゃならなかったのだったら、町にたどり着けたか危うい。
だから、戦えるようになって、今まで世界が広がった。
なんだかんだと言っても、フィールドを歩かないとRPGって感じがしない。こんな風に戦えるようになったのは、鉄の鍵と金の鍵が大活躍して、装備が充実したからだ。
最初の城ジーノの宝物庫を荒らして、勇者のしるしを手に入れて、やっぱり海をさまよっていると、勇者のかぶとを手に入れることができた。アベルの城のシルハではもっと直接的に宝物庫に勇者の盾があった。どちらも防具だが、これらのおかげで受けるダメージが大体10ポイント下がった。敵が三体出てきたら、1ターンにつき30ポイント受けるダメージが下がったことになる。
今の俺のHPが134なので、2ターンだとHPの半分にあたるダメージが軽減されたことになる。
アベルと七海が貧弱なのは変わらないが、それでも俺の回復は戦闘中にはほとんどしなくてよく、攻撃やそれぞれの回復に専念できるようになったことで撃破率が上がった。
ただ、気になることがある。
レベルが上がって、アベルも七海も新たな魔法を覚えた。アベルは保護魔法と上級火炎魔法、七海は完全回復魔法。
保護魔法は毒の沼といったダメージを受けるところをダメージを受けることなく進むことができる。このシリーズではバリヤー床もあったので意外と役に立つ魔法かもしれない。
しかし、それはそれ。今のところ、役に立っていない。
攻撃呪文のアベルの上級火炎呪文。こちらが問題で上級というからには期待していたのに、七海の氷結魔法とほぼ同じ威力しかない。
一応、MP消費は氷結魔法と同じで、範囲が敵全体なので、敵グループを範囲とする氷結魔法の完全上位ではあるが……
純粋に火力が足りない。そういえば、中ボスの司祭と戦った時の威力も敵だから助かったとはいえ、低かった。この事態は予想しておくべきだった。
氷結魔法が上級火炎魔法と同じ威力があると考えるのではなく、むしろ、上級火炎魔法が氷結魔法と同じ威力しかないと考えるべきだった。
「七海、魔法の火力が物足りないな」
「そうだね。このゲームは魔法をあまり重視していないようだね」
「これっていつになれば、強い魔法を覚えるんだ」
「強い魔法というか、戦闘中に敵を攻撃する魔法なら、アベルは2つ、僕はあと1つしか覚えない」
「……少なくないか?」
偽らざる感想である。
「少ないかどうかは僕には分からないけど、今、敵を攻撃するには物足りない威力の魔法しかないことには同意するよ」
いや、絶対に少ない。
封魔魔法や睡眠魔法といった補助的な魔法はかなり充実しているのに、攻撃魔法は単純なためか少ない。多彩な攻撃をしてくるモンスターに対して、多彩な防御で封じこめて戦うのはおそらくありっちゃありだろう。
でも、いちいちそれで戦うのも面倒だし、MPもなくなる。それに補助呪文は確実に効くわけじゃない。
「そういえば、このゲームは何回かリメイクされているようだね?」
七海が確認するようにふってくる。
確かに今はスマホ版も出ていているし、最新機種のダウンロード版や古くはスーパーホムコンでも移植されている。
「リメイクだろ?そんなに変わらないだろ?」
「君の言う通り魔法の種類は変わらない。けれども、魔法の威力は違うと見た。特にアベルの上級火炎魔法は威力が40~50ぐらい与えられるように、調整されたらしいよ。開発陣も貧弱すぎると思ったんだと思うよ」
ここも調整ミスか!
どんだけ時間がなかったんだ?
「……残りの魔法はどうなんだ?」
「僕の魔法はまだ使えると思う。MPの消費は8で、与えるダメージは50~90ぐらいだったはず」
ダメージ幅がありすぎる気もするが、最大で氷結魔法の3倍程度のダメージが出るってことになる。確かにこれは使えそうだ。
しかし、七海の口振りが気になる。僕の魔法は?
「じゃあ、アベルのはどうなんだ?」
「使えないわけじゃないと思うけど、使いどころが難しいと思うよ。即死魔法と自爆魔法だよ。ちなみに僕の記憶じゃ即死魔法はその名の通りで、しかもグループに効くんだけど、即死っていう魅力的な設定のわりには、耐性をもっている敵が多すぎる。自爆魔法は雑魚なら敵を確実に全滅させることができるけど、アベルは死ぬ。しかも、経験値やお金も入らない」
確かに両方とも使いづらい。
特に自爆魔法はよほどのことがない限り、使いたくないな。
「ちなみに、蘇生魔法もあるけど、覚えるのはアベルだけだから、自爆魔法を使うと損ばかりする」
「使えねぇ!!」
どういう仕様だ! それは!!
いやいや、自爆魔法を使えるやつと蘇生魔法を使えるやつが同じで唯一無二って使えないにも程がある。
「これってつまり、『レベルを上げて物理で殴れ!』ってことだよな」
「うん。多彩な補助魔法はとりあえず、物理対物理に持ち込めって感じに思えるよ」
今の魔法の豊富さってこの時の反省から生まれたんじゃないだろうな……
そう思って否定できないところが悲しいな。
レゲー特有理不尽その8
「攻撃魔法が少なすぎる」
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