第17話 敵の強さがめちゃくちゃです

 陸が見えてきて、新しい町も見えてきた。新しい町には新しい情報がある。そして、新しい展開が待っている。

 だから、新しい町を発見して嬉しいのだが、そこに行くまでに明らかな困難が待ち受けている。

 ……見慣れないモンスターが町に行くまでにいっぱいいる。

 大型の昆虫っぽいやつもいれば、樹木っぽいのが動き回っていたりもするし、蛇もいるな。なんかおどろおどろしい色をしている。


 あいつらの強さは全く分からない。大型の昆虫も樹木系のモンスターも初めてだ。

色が違うだけで別種の強さになるのに、姿形から新種となると、未知数だ。

町には行きたいが、モンスターとは戦いたくない。悩んで、少し船をとめる。

「どうしたもんかな」

誰に対して言ったわけでもなく、自然と口から出た。

「どうしたもんかどうなのかもないと思うよ?」

 七海が話す。


「新しいところに行けば、新しい敵がいる。強さは分からないというのはおそらくどこに行っても変わらないし、昔から虎穴に入らずんば虎児を得ずというから、とりあえず、進んでみよう」

 確かに七海の言うとおりなんだが、この言葉を額面通りに受け取ってはならない。こいつの目が妙に輝いている。本当は単に新しい町に行きたいだけだな。とはいえ、七海のいうことももっともでやってみなくちゃ分からないところはある。


「とりあえず、上陸するか」

 七海もうなづく。

 問題は船を手に入れて一番に来る場所がここで合っているかだ。ここまでは一本道で敵も順を追って強くなっていったが、仮にここが順路でなければ、強すぎることもある。

 上陸して、すぐに戦闘に入る。相手は樹木系のモンスターで、妖樹というようだ。

 根の部分が足になっていて、大きな二本の枝が左右に生えていて、その枝に葉はなく、まるで腕のようになっている。上には髪の毛のように葉が生い茂っていて、根のすぐ上あたりに口はあるが、歯は見えない。

 そして、幹のど真ん中に赤い大きな目がある。

 ……すごく気持ち悪い。真っ赤な目はそれだけで気持ち悪いのだが、自分の顔ほどもある目は怖いを通り越して、生理的な嫌悪感を生じさせる。それが4体。

「七海、いくぞ」

「うん」

 俺が攻撃、アベルは防御、七海は氷結魔法。

 まず、物理攻撃がどれだけダメージを与えられるか、試さないといけない。アベルが防御なのは攻撃されたときに倒される可能性があるから。七海は魔法。シシザルのように打撃が効きにくいこともある。

 なんていうか、基本的にこの形になる。

 アベルの防御はデフォルトだな。


 剣を下に構え、攻撃の体勢をとる。

 が、瞬間、妖樹の根がまるでムカデの足のように細かく動く。

 っ!速いっ!

 妖樹の右側の太い枝がアベルの持っている盾を突く。しかし、その盾は衝撃を吸収しきれず、アベルの体がくの字に折れ曲がり、アベルはそのまま4、5メートルほど吹っ飛ばされる。

 ……これはシャレになってない。

 防御していたからまだ3分の1程度ですんだが、防御していなかったら3分の2を削られるところだった。これだけの攻撃力だと、下手すると俺でも2回で倒されて、3回で確実ってところか。七海なら間違いなく一撃必殺。

 

 相手は4体で、3体の攻撃が残っている。

 ……ターン終了時、こっちは全員が生き残っているものの俺とアベルは瀕死。七海は無傷だが、七海に関しては1か0か世界の話なので、残りHPはほとんど関係がない。

 ちなみに敵は4体とも健在。元気だよね。

 俺の攻撃も七海の魔法もしっかりと効いて、ダメージはあった。それでも倒しきれないということは純粋にHPが多い。

 逃げるで生き残れる可能性は66.7%。攻撃しにいって生き残れる可能性は0%。

「七海、この敵に睡眠魔法の効く確率は分かるか?」

「おおざっぱにカテゴリーに分けて記憶してきた。確か、こういった樹木系というか動物系以外のものには睡眠魔法は効かない」

「それなら、逃げるしかないよな」

「まぁ、その通りではある」

 逃げるを選択して、敵とは反対方向に走る。

 

…………

「おお、奏よ。死んでしまうとは情けない。お前にもう一度機会を与えよう……」

 ですよねー(棒)としかいいようのない結果。

 とりあえず、敵、強すぎ。

 あそこには上陸しない方がよい。


 今度は北へ向かった後に上陸する前に東に向かうとする。

 

 ……果てしなく海、海、海。

 仕方ないので、適当に北東方向に向かう。ずっと海だったので、今どこにいるかよく分からないけど。

 

 あ、陸地。

 今度は上陸してすぐ近くに町があったものの、一人を残して鍵付きの扉があるだけの町だった。

 そういえば、この世界の町は遠くから見ると全部同じに見える。この町だって、どういう遠くから見てどんな町か分からなかったから行ってみたものの、入ってがっかりした。

 そして、町から出て、敵に襲われた。


 …………

「おお、奏よ。死んでしまうとは情けない。お前にもう一度機会を与えよう……」

 敵、強すぎ。

 妖樹の色違いで妖樹よりも強かった。

 船を手に入れて、どこにでも行けるが、どこにも行けない。

 海上の敵がそんなに強くないだけに、上陸した時の敵の強さが際立つ。


 どういう配置をしているんだか分からないが、もうちょっと段階ってものを踏めるようにしてもらいたい。

 

「……奏、一つ聞きたいのだが、どうしてこのゲームを選んだのだい? どうもバランスが悪いように思えるのだが?」


 俺だって知らなかったんだよ!

 こんなにバランスがめちゃくちゃだってことは!

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