第7話 塔の構造が理不尽すぎる

 マヤイラスから東っていうから、東に向かったのに途中に岩山があって、簡単には塔には行けなかった。

 結局、大きく南から回って、何とか塔を発見した。

 

 塔の中の探索だが、広すぎやしないっすかね。

 まず、一階には大きな広間があり、広間から伸びている通路に何個か行ってみたが、上に行くには階段しかないようで、その階段を上り、いくつか分かれた通路を探索したのだが、どこもかしこも行き止まり。


 モンスターの強さは2段階ぐらい上がっていて、ついていけない強さ。探索の途中で3,4回死んだ。耐久性が上がり、攻撃力が上がっている。それだけのシンプルな理由なのだが、シンプルなだけに対処が難しい。

 すでに、アベルの初級魔法では威力として物足りなくなってきている。


 そして、全滅させられた理由は、RPGによくある仲間呼びだった。 


 そりゃ、モンスターだって同種類の仲間を呼ぶぐらいあるだろう。それ自体はよく分かる。だが、その頻度がおかしい。5ターンあって、仲間を呼ぶのが3ターンあるってどういうことだよ。しかも、処理数の関係か、5匹以上は増えないことになっているが、そうでない限り、必ず現れる。

 絆がすごいな。こいつら。ステータスに友情とかがあったらカンスト間違いなし。


 2匹で現れた場合、必ず1匹は仲間を呼ぶ計算で、万が一、1ターン目で両方とも打ち漏らした場合、3匹に増える。そして、3匹のうち、2匹は呼ぶ。そうすると、あっという間に最大数5匹。

 こうなったら、もう手がつけられない。

 そのモンスターは赤い大きなネズミのアカドブネズミ。まさにネズミ算式に増えていきやがる。こちらは単体しか攻撃できないのも辛い。


 レゲー特有理不尽その5

「おかしなぐらい特定の行動を繰り返すモンスター」


 回復魔法の時もひどかったが、仲間を呼ぶのはもっとひどかった。しかも、5回に2回は攻撃してくる。こいつらに遭遇したら、逃げるしかない。そして、逃げられなくて、全滅したというわけだ。


 正直、全滅したときに、ダイータで目覚めたときは安堵した。ダイータで約束の言葉が聞けなかったらシルハの城まで戻されることになる。それは勘弁願いたい。もっとも、全滅した時に生きかえるのは主人公の俺だけで、アベルは生きかえらなかった。アベルを生きかえらせるには、やかたに行き、お金を払わないとならない。この蘇生費用が馬鹿にならない。

 

 全滅の時点で、持ち金は半分になる。

 それから、生きかえらせるには、レベルに応じたお金が必要になる。生きかえらせる手間は同じだと思うのだが、こっちの足下を見られているようで、気分が悪い。


「おお、神よ!アベルを生き返らせたまえ!」

 大仰に祈って生きかえらせてるけど、俺には微妙に聞こえてんだよ。ちっちゃな声で、蘇生魔法って唱えてるの。まさか、ゲームの裏側にこんな仕様があったとは思わなかった。おそらく、ゲーム内の処理で蘇生魔法と同じ効果ってことになってんだろうな。

 絶対、そんなに手間かかってない。


 ちなみに、蘇生アイテムは今のところない。確か、このゲームのシリーズでは結構な貴重品で、後のシリーズでも終盤になってからしか出てこないし、結構な対価を支払うとかすごく制限があった。おそらく、蘇生アイテムはあったとしても、そんなに手に入らないんじゃないか。


 二人でも全滅してしまうのだが、アベルがいることで、全体のゲームレベルが高くなっている感がある。アベルは足手まといではない。むしろ、最初に全滅した時にどうせ探索だけだからと、アベルを生きかえらせずに塔に行こうと思ったら、めちゃくちゃ痛い目にあった。

 まず、補助として役に立つ。封魔呪文を覚えてくれたおかげで、ある程度は魔法使いに対する対処ができるようになったし、回復魔法や解毒魔法を覚えているおかげで、道具には余裕ができた。

 それに、一体に攻撃が集中すれば、打ち漏らしもない。問題は一体に集中すれば、という条件に難点があるのだが、もはやそれは仕方ない。攻撃が分散しても、二回目の攻撃の時に俺がアベルの攻撃を受けた側を先に叩くことができれば、それはそれで早く敵を倒せる。

 アベルがいないとバランスが崩れるのは確かなのだ。


 ゲーム自体の難しさがそうなっているとしか言いようがないのである。

 もう一発でのダンジョンクリアは諦める。探索を中心にして、やばくなったら帰る。帰る用の移動アイテムを2つ買う。シリーズ物なので、おそらくこの「白の羽」が帰る用の移動アイテムだろう。


 武器と同じくどんな道具かの説明は、道具屋からはなかった。シリーズを遊んでいるので、分かるが、当時ゲームをしていた人はどうしたのだろうか? 一度使ってみるしかなかったのではないか。厳しい。


 探索している間にレベルも上がり、お金も貯まるはずだ。全滅する前に逃げる用意もした。ボスを発見するだけ発見して、一旦完全回復のため、撤退。その後、再突入。ボスまで一直線に進んで、一気に叩く。もしかしたら、塔の中にはよい武器や防具もあるかもしれない。


 それじゃ、探索行ってみようということで、塔の探索を進めたのだが、どこに行っても行き止まり。すでに、5回目の探索だが、一階の大広間の階段から行ける場所は行きつくしたはずだ。広すぎ。ちなみに武器や防具はなかった。

 

 そして、「白の羽」で発見したことが一つ。おそらく、全滅した時に復活する町に行くというのが、その効果のようだ。今のゲームだと、訪れたことのある町や城に自由に行けるが、この時代のゲームはできなかったようだ。つまり、ジーノに戻ろうと思った時は、歩いて戻らないと行けないことになる。辛い。

 

 再度一階を探索した結果、塔の外縁部分に階段を見つけた。他に階段は今度こそ、間違いなく、ない。

 そこさえ、発見できれば、踏み外しに気をつけ、外縁にある階段を上っていくだけだった。そして、最上階、物陰から様子をうかがうと、なにやら司祭のようなやつがいた。おそらく、あいつが中ボスだろう。


 よ~く、分かった。

 つまり、大広間にあった階段はダミーだった。

 これ、作った人、性格悪いよね? 仲間がそろってない序盤のダンジョンでこんな構造にするっておかしくないですか?

 

 おかげでレベルも上がり、現時点での最高装備も整ったので、再突入。

 ボスに突撃。


「むっ。お前が勇者の子孫か。我らの信仰する神に逆らうとは愚かな! 死んで悔いろっ!」


 初めてのボス。ここまでの啖呵をきるからには強いことは覚悟している。なんと言っても、初めてのボスだし。最初のボスは苦労するよね?


 ……えっと、2ターンで終了しました。耐久性が紙だったので、とても早かった。 


 弱すぎっ。

 

 司祭だけあって、上級火炎魔法で全体攻撃をしてきたが、中級というわりには俺には25、アベルには35ポイントのダメージだった。今のHPは63あるので、回復魔法で対処できなくはない攻撃だった。それに2ターン目は普通の打撃で、5ポイントのダメージだったし。


 雑魚モンスターがあれだけ強いんだから、もっともっと強いかと思っていたら、一体になると、めちゃくちゃもろかった。逆に引くわ。

 よく考えれば、今は雑魚敵は一撃で絶対に倒せる。それだけの攻撃力があるのだから、今は相当強くなっているのだろう。


 司祭もモンスター扱いだから、倒した瞬間に消えた。ふっと手応えがなくなったのだ。通貨も拾って、さぁ、やれやれと思っていると

「お、愚かな、神に逆らうとは……我が神よ、破壊神よ。彼のものに災いを! ぐふっ!」

司祭が復活して、また消えた。忙しいやつだな。


 司祭が消えると同時に、奥にある牢屋の扉が開く。何の操作もしていないのだが、これはイベントフラグでそうなっているのだろう。


 牢屋には王女がいるに違いない。王女とはお姫様。

 勇者がお姫様を救出する。これは王道中の王道。俺が求めていたのはこれだよ。

 さぁ、美しいと評判の王女の対面だ。

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