第5話 仲間が話してくれません

 これからのことを相談しようと、アベルの方へ向こうとする。ところが、足が進んでしまう。ゲームだし、そっちの方向に行こうと思えば、そうなる。


 しかし、アベルのやつ、話そうとすると俺の後ろに回り込みやがる。あっという間の出来事で対処のしようがない。

 話もできないし、話しかけられもしない。ただただ、後ろについてくる。

 これは新手の嫌がらせかな?

 俺、嫌われるようなことしてないよ。むしろ、嫌がらせを受けた方だよ。仕様なんだろう。そうだろう。そう思わないとやってられない。出会いからして、ほぼ無言、だもんな。

 

 冒険再開と行きたいが、まずは、アベルのステータスを確認する。

 レベル1、HP30、MP8、力4。

 装備:こん棒、皮の鎧。

 魔法は初級回復魔法のみ。

 ちなみに、MPは魔法を使うために必要で、魔法を使う度に減る。このMPだと、初級回復魔法が2回程唱えられると言ったところ。


 ……貧弱、貧弱ぅぅぅ。


 これはこいつのレベリングが必須だ。

 よく洗礼の洞窟とか行けたな。即、オオサソリの餌食だぞ、こんなの。初級回復魔法が薬草の代わりになるとはいえ、この力と装備じゃ、ろくに戦えないはず。


 これでどうして洞窟を抜けることができたのか理由も聞きたいが、話せないので仕方がない。逃げ足が異常に速いとか? それはないな。素早さも低いし。


 気を取り直して、町を出る。ハイ。出待ちのギガントアントさん、三匹ですね。ほふりますよ~。0歩エンカにも慣れた。慣れたくないけど。


「アベル、ギガントアントだ。そっちの一匹を頼む」

 ……返事もないし、動く気配すらない。おいおい。こういう時ぐらい反応してくれよ。アベルの方を見ると棒立ちだ。

 ……これ、RPGだからコマンド式の命令が必要ってことか。


「アベル!攻撃、ギガントアント!」


 アベルが動き出す。

 あっ、そっちじゃない。それは俺が相手しようと思ってたやつ。そこに行くと、……やっぱり、敵の前に立つから攻撃受けてるし。あ、攻撃した。でも、ギガントアント1匹も一発だけじゃ倒せてないし。次の瞬間、フルぼっこ。3匹から足やら手やらいろいろかじられてる。


 あー、もうめちゃくちゃだよ。


 仕方ないので、手助けして、ギガントアントを倒す。これじゃ、この先が思いやられる。


 とりあえず、この辺で戦って、どんな感じになるか、確かめてみることにした。 

 なお、幸いにもモンスターには事欠かない。笑うしかないけどな


 ――――――

 アベルのレベルが上がって、初級火炎魔法が使えるようになった。

 敵単体に15~20のダメージ。悪くない数字だ。この辺の敵なら間違いなく一撃でいける。


 それはいいのだが。さぁ、さぁ。心を落ち着けて整理をしよう。

 まず、回復魔法は個別の指定ができる。


 しかし、攻撃は魔法も含めてグループでしか指定できない。

 ギガントアント二匹、ジャイアントバット一匹なら、ギガントアントに対して攻撃か、ジャイアントバットに対して攻撃かは選べるけど、ギガントアントのAかBかは選べない。そして、体感だが、グループで指定した時、攻撃して欲しくないやつを真っ先に攻撃するように思える。

 最近のゲームじゃ、誰に攻撃するかも選べるので、この仕様は正直、苦労する。


 何度、「そっちじゃない!」と叫んだことか。


 さらに、指定したモンスターのグループを全部倒してしまうと、空振りする。

 乱数のせいで、ダメージにそれなりの幅があるので、安全策をとると結構な確率でスカる。しかも、クリティカルヒットで敵を倒しても、次の攻撃がスカると喜びも半減する。


 モンスターの攻撃は今のところ、まんべんなくあたる。隊列関係なし。

 そして、アベルの能力だが、バランスよく、低い。魔法を連発できるほどのMPもなく、打撃でモンスターを倒せるほどの力もない。


 なんだ? この微妙すぎる能力。


 この先、モンスターも強くなるだろうから、装備をととのえるとともに、一人でも行けたと思われるところを探索する。


 関所っぽいところがあったが、おそらくこれは二人じゃないと通れないところ。なので、そこ以外を探索する。


 ――――――

 ここの大陸は意外と広かったです。

 レベルは上がるし、お金も貯まりました。

 装備を一新しました。重要そうなブリキの鍵も入手しました。でも、ブリキの鍵で入ることのできた場所は大したことない場所でした。なんのための鍵か、考えたくなりました。

 モンスターはたくさん倒しました。モンスターの中には魔法を使う魔法使いもいました。アリのくせに睡眠魔法を使うやつもいました。

 初級回復魔法をずっと使うスライムもいました。ストレートに「かいふくスライム」という名前でした。

 こいつに与えるダメージが回復量を上回ることができず、逃げました。

 多種多様なモンスターがいて、とっても楽しかったです。


 ……なわけあるか、クソッ!

 全部カタカナ表記にしたいほどだったよ。


 回復スライムのうざさと言ったらありえないレベル。

 逃げたくてもなかなか逃げられないし、そしてする行動のほとんどが回復行動。ごく稀に攻撃もしてくる。


 レゲー特有理不尽その5

「おかしなぐらい特定の行動を繰り返すモンスター」


 今回、発見できた一番の問題はこっちに魔法に対する耐性がないことで、魔法使いが集団で表れた時はHP的にかなり辛かったし、アリの睡眠魔法で眠らされた時は、起きたら瀕死ということがあった。あれだけ殴られて起きないというのも、おかしい。寝るというより麻酔剤を打たれている感覚に近い。


 レゲー特有理不尽その6

「状態異常は確率によってしか治らない」 


 起きてくれよ、俺。

 眠らされた時に気づいたのだが、自分が寝ている状況を自分が把握できるという不思議な状況が発生した。これだと、麻酔というより金縛りだな。ついでに、アベルへの指示も口でする必要はなく、頭で思うだけでいいということも発見できた。

 おかげで寝ているときも状況は把握できるし、アベルにも逃げろとの指示ができる。そして、不思議だが、逃げる時だけは、寝ていても俺の身体は走ってくれて、逃げるのに成功すると昏睡状態からも回復する。

 

 新たな発見はあったが、睡眠系の状態異常が毒以上にやっかいなのは確かだ。

 

 こんなところにもう未練はない。次に行くぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る