第14話1101
私です。最近すっかり宇宙環境に慣れたノノラです。今は出発のために第23発艦場に来ています。
「護衛は格闘タイプ2体。さすがゆうと司令。私に合わせてチューンアップしてある。」
今そこで腕組みしてうんうんと、うなっている小柄でゴスロリ銀色のツインテールをフリフリさせてるのはスズちゃん。
「そういえば今から乗るライダー?は3人乗りなんだよね?」
「ん。問題ない。液体金属である私に不可能はない。」
今日もジト目でドヤ顔を決めている。パッと見は分からないけど、私にはわかる。
「え?それってどういう…」
シュバッ!とスズが飛びかかってきた。
次の瞬間にはスズちゃんは一気に形を失い私のボディに張り付き形を変えていく。
「わ!凄い。これって…」
「ん。ノノラの着ていた鎧のデータを元にした。」
今私は宇宙服を着ている。体にぴったり密着して締め付けが少し気持ちいい感じのする服だ。
最初は全身タイツな見た目で抵抗があったが慣れると案外動きやすく、なんの素材で出来てるかわからないけど熱も篭らず着心地が良かった。
「ゆうと司令が、この方が一番安全にノノラを護衛出来るって言ってた。」
「なるほどだから最初着ていた白を基調とした見た目なんだね」
今日着ていた宇宙服は救出された時着ていた白翼騎士団の白を基調とした宇宙服だった。
そこにスズちゃんが変形して鎧を着込んだように融合し、あの時と見分けがつかない。
「これなら、元の住民にも怪しまれない。あと、万が一の時マスクは私が代わりに機能を代行する。」
フンス、と息づかいが襟元からした。
「さすがスズちゃん!なんでも出来る子なんだねー」
「む。最近ノノラ私の事、子供扱いしてない?。」
「えーそんなことないぞー」
「むー。」
そんなこんなしていたら青色に輝く半円状の形の乗り物が目の前に来た。
「これに乗るの?」
「ん。ノノラは運転席にすわって。」
「え?運転とか習ってないよ?」
「運転は自動でやってくれる。運転席の方が、万が一の時守ってくれる機械がいっぱいある。」
なるほど
私はそう思いスルッと運転席に座った。
ついでに二体のアンドロイドもスルッと後ろの席に乗り込んだ。
「そういえば後ろの二人は喋らないんだね」
「あれは戦闘特化の人形。感情エングラムコアは乗せてない。ノノラは気にしないでいい。」
よくわからないけど、多分スズちゃん達とは違う役割のアンドロイドだろうだなと思う事にした。
プシューと言う音と共に上のガラスの蓋が降りて中が密閉される。
“発進カウントを開始します。10,9,8,7…”
最近は私のために自分がよく行く施設や部屋などは英訳されたアナウンスや文字が使われる様になっていて、このカウントも普通に何を言ってるか分かる。
2…1…発進
ドゥン!と言う衝撃と共に私達は広い宇宙空間に飛び出した。
「わぁ!」
いっきに基地から離れて行くので星々がより鮮明に見え、その美しさに歓声が上がる。
「こんな綺麗な景色見た事ない…」
「ん。ノノラもこの綺麗な星々の一部。」
「スズちゃん…」
少しうるっときて私は俯いた。
「出発したか…さて、私も赴こうかな。帝国に。向こうでは頼むぞユノ」
「任せるでござる!主人には剣先一つもとい指先一本触れさせないでござるよ」
さて、腐った藁での綱引きをやろうじゃないか。
ノノラです!今すごい勢いでお星様が横に流れてます!
「ん。ノノラはワープ始めてだっけ。」
「これが遠い距離を一瞬で移動する技術ですか!」
しばらく星が引き伸ばされる光景を眺めた後、気づけば自分が住んでいた惑星が目の前にドン!と現れた。
「私達の星ってこんなに大きいんだね…」
「このぐらいの広さないとむしろ窮屈。」
“大気圏突入シークエンスに入ります“
アナウンスと共に薄い膜が乗り物を覆う。
“気体圧縮時の熱と光を遮断するため一時的にコックピット内が暗くなります”
言われた通り一瞬で暗くなり、所々機械の明かりがあるだけで外の光景は何も見えない。
しばらく暗闇と戯れていたらいきなり目の前が真っ白になった。
「眩しっ!」
次の瞬間には故郷を一望していた。
「少し緑がかっている。」
「うん、でも綺麗」
翡翠の景色はどこまでもつづき、山や湖や森がさらに色鮮やかに彩る
「ほんと、遠くに来ちゃったなぁ」
なんてため息混じりに言うとスズちゃんが真面目な顔して
「大丈夫。もっと遠くに飛んでいくから。」
なんて言われたのでクスッと笑ってしまった。
「あ。王国が見えてきた」
「ここからが本番。ノノラは安心して自分らしく言いたい事を言えばいい。」
「うん。わかったスズちゃん、頼りにしてるね?」
私は少女ノノラでは無く、トーラ王国第6王女,ノノラ=トーラ・エスミルムスに切り替えて邂逅に臨んだ。
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