第10話1001

side:帝国側ガドア強襲部隊


まさに壮絶な光景だった。流線型の物体が空を埋め尽くし、さらにその物体には星々をちりばめたかの様に光の点が点滅している。


そして一番目を引くのが黒い物体が集まっている中心部分にいる巨大な目玉を持つワームだった。


「おいおい、神話にもこんなもの載ってねぇぞ…神の使か?それともオクスからの天使の新兵器か?なんにしても穏便には行きそうにねぇが…。おい第2駆逐少佐」


「はっ!」


「一応念のためだ、念声で戦う意思は無いと伝えろ」


「もし…応じなかったら、どうなされますか」


「あんな怪物を相手に出来るわけねぇ、帝旗船と盾船を残して後は突貫させつつ全力撤退だ」



side:悠人


俺たちはどうすべきか迷っていた。何せ助けようとしたβ艦隊が予想より早く壊滅してしまったからだ。


「ゆうと司令、たたかう?。」


「だめだスズ、今は迂闊な行動はできな…っ!」


“我々は帝国ガドア強襲部隊である。まず、私達は貴君らに敵対する意思はない。繰り返す、貴君らに敵対する意思は…”


「なんだこれは…頭に直接…!?」


「ゆうと司令!?まずい!精神汚染の可能性があります、至急α艦隊を撃沈しなさい!」


「待て、ミコトッ!くっ」


なんだこの声は、明らかに相手側の艦からなのは間違いない。だがこの頭を揺さぶられる感覚はなんだ!?それにミコト達アンドロイドには何も聞こえていないようだし…


「副官権限で戦闘を開始します、全Tデルタビットを出撃、クルーザーを盾にさせデストロイヤーで弾幕を張りつつバトルシップで狙撃を!」


ミコトの命令を実行し、スターイート=ワームキャリアーの節目から黒い三角錐状のビットが一斉飛び立ち、クルーザーは前方にウォールトライシールドを展開し駆逐からは重粒子ミサイルが発射され、さらに後方ではエントロピー重狙撃砲台が一斉に敵艦を射抜く。


ここに蹂躙が開始された。



side:ガドア


「さぁて…あれは我々を逃してくれるのか…。念話が通じればいいが」


「我々は帝国ガドア強襲部隊である。まず、私達は貴君らに敵対する意思はない。繰り返す、貴君らに敵対する意思はない」


繰り返される降伏念話、しかし真っ黒な船は何も反応してるようには見えなかった。


「何か原因で念話が届かないかも知れない、出力を上げて再度呼びかけるようにしろ。それとくれぐれも妙な真似はするなよ?」


「はっ!直ちに!」


そして念声の出力を上げた時だった。


「おいおい、嘘だろ!」


いきなり中央の巨大ワームの節々から無数の黒い三角形の物体がこちらめがけて猛スピードで突っ込んでくる


「帝旗船をすぐに囲めぇ!魔道衝壁の出力を最大にして全速力で逃げろぉお!」


ガドアがそう命令した瞬間、ちょうど移動を開始した魔道鉄塊船が一瞬にして“破裂した”


「どこから撃たれた!?」


「分かりません!しかし撃ち抜いた物体は巨大ワームの後ろから飛来してきました!」


「あれよりもっと後方から撃って来たのか!?クソッ!最低限の魔道衝壁だけ残し、後はバラバラに動いて敵の狙いを撹乱しろ!」


「しかしそれは他の船と人員、さらには魔道機兵を失うことにっ!」


「いいか、今は何が何でも帝旗船を守らにゃここで全員煌天様に焼天される事になるぞ!」


「っっ…分かりました、」


「ああ!まずい!」


一人の兵がそう叫んだ。それに合わせてガドアは見た、小型船程の大きさがある黒光りした三角錐が回転しながら眼前まで迫って来ている事に。


ドォォォオオオオン!


左を見ると敵から発射されたと見られる空撃により重迫撃船が一撃で葬られ、右を見るとすでに空中で瓦礫の山と化した広域偵察船が落ちて行く所であった。


「なんだよ、これ。なんなんですか!ガドア大佐!」


「しのもの言ってないでさっさと飛行ハーネスを付けろ!もうこの空域にあれを止めれる物はない!命を優先するんだ」


だが避難するには遅過ぎた。すでにやって来た無数のデルタビットにより、人も物も関係なく空中でミキサーのように引き千切られ、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられてガドア強襲部隊はなすすべもなくほんの数分で粉砕されのであった。



「ははっ!神は私に最後だけこの光景を見させて下さいました!彼女たちの無念は晴らされたのだ!」


アハハ!と狂ったようにノノラは笑う。


「もう、これで…」



無数の破砕音から入れ違いに重低音が響きわたるのを最後にノノラの意識は暗闇に落ちた。

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