第9話1000

「大気圏突入シークエンスに入ります。一部レーダーが使用不可になるのでマグネトロンをOFFにして下さい。」


凛としたミコトの声がアナウンスする。


現在ヒューマンとおぼしき知的生命体がいる三つの惑星のうち、もっとも地球と環境が似通っていると言う理由で第1惑星の衛星軌道上まで転移してきた。



「あるじ!重力ソナーに飛行船っぽいのが映ったでござる!」


「なに!?すぐにエコー画像を出せ!」


中央の巨大モニターに白黒のエコー画像が再生される。そこには確かに海でよく見る船そのもの(大きさはかなりあるが)が地表12m付近で浮かんでいた。


「ん?10個の点のかたまりと、少し離れた所に5つの点のかたまりがあるな。これは…艦隊か?」


だとしたら、今二つの艦隊はこのままいけば正面から向かい合う形になる。しかも数が多い艦隊の方は明らかに待ち伏せをしていた。


「ソナー、そこで固定。このまま大気圏突破まで二つの艦隊を観察する。それと以後10隻艦隊をα,5隻艦隊をβとする」


「了解でござる」


少しして、ついにお互い顔を合わせたようだ。しかし特に戦闘や陣営が変わるといった事はない。


いやそもそも戦闘が起きる前提で考えていた事が間違いかもしれない。単に別動隊で合流しただけかもしれないし、密会をしてると言う説もある。


やはり未知の世界で先入観は無くした方がいいだろうと思った時だった。


「あっ、」


β艦隊が動いた。後方の大きな船に道を譲るように左右へ側転(横移動)したのだ。


「β母艦とおぼしき船から強力な電磁を確認したでござる!」


ユノがそう告げた次の瞬間


ザザザ…


重力ソナーをも乱す電磁場が発生し、一瞬だが雷が水平に走るのを見た。そして…


「α艦隊の前衛2隻が撃沈ですか…」


ミコトが言ったように先ほどの雷で一気に2隻を撃破、それを合図に本格的な戦闘が始まる。


α艦隊は2隻やられたもののβ艦隊とはまだ数の有利にある。先ほどの雷撃はそう何発も打てるものではなかったらしく、徐々に周りを囲まれじわじわと追い詰められていった。


「ゆうと司令、いかがなさいますか」


「それは今行われている戦いに介入するかどうかと言う事か?」


「はい。私は介入すべきだと提案します」


「その心は?そしてもし介入するならどちらかに加担する形になる。まだ謎が多い環境下で相手の戦力も未知数の中、リスクを犯してまで介入する意図を聞きたい」


「はい。今この場で都合よく戦闘が起こり、β艦隊はどう見ても負けます。そこで我々が加担し、味方と言う認知をさせればこの世界の情報を効率よく収集出来ると考えました」


「つまりは恩を売っておこうと言う事だな?」


「端的に申し上げればそうなります」


「んー…よし分かった。俺はミコトの提案に乗る。他に意見があれば聞く」


「問題ない。」


「やっちゃお〜」


「せっしゃは主人に従うでござるよ」


「よし。ではこれより大気圏を突破後、目下戦闘中のβ艦隊への支援を行う。α艦隊への攻撃は極力避け、β艦隊に撤退を推進。β艦隊が撤退を開始次第重力フィールドでα艦隊を引き剥がす!」


「「「「了解!」」〜」でござる!」


こうしてファーストコンタクトを取るべく準備に取り掛かっていたまさにその時。


「!」


いきなりβ艦隊の母艦が沈み(落ち)はじめた。それに続いて最後の1隻も突如崩壊し始め、大気圏突入を目前にして戦闘は終結を迎えてしまった。


「大気圏突破!急速降下で目標上空に出ます!」



こうして二つの世界が顔を合わせた。

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