第8話0111
ベース基地の一画にある“テラ格納庫”。ここには基地最大の戦力が待機している。
「出発の準備出来ました。ゆうと司令」
「ああ、ご苦労。しかしまさかこんな状況下で“テラオブシディアン艦隊”を使う事になろうとは」
テラオブシディアン。これはゲーム時代、特定の条件下で発見される研究項目で、その条件も発見されるまで不明というレアテクノロジーに分類され、そのあまりの希少性と破格の性能ゆえ発見されれば即秘匿される研究分野であった。
テラオブシディアンの研究項目を発見したのは約2年程前。惑星研究項目の地質学の研究を進めていた時に偶然発見しそれ以来、大学時代からの親友である“トミ”こと「富岡 隆一」だけにこの事を打ち明け日々二人で研究を進めて行った。
精製の概要は「主成分が二酸化珪素である石英の一種である黒曜石を極限環境下(9000万気圧で-253℃以下の環境)で加工すると物質の振る舞いが変わり、ダイヤモンドの3倍硬いと言われるカーバインの7倍の硬度と柔軟性を持つ“金属”へと変わる。
-253℃を実現するには液体ヘリウムを使えばよかったが、問題は9000万気圧と言う地球の中心気圧の約26倍もの圧力をどう再現すれば良いか。俺たちはそう言った課題を次々とクリアし、ついにテラオブシディアンを用いた戦艦を建造するに至った。
その性能は破格で当時環境で最も威力が高かった重粒子電離光線をいとも容易く受け止める程であった。さらに専用シールド、各種武装はどれも既存戦艦の数十倍もの耐久性と破壊力を有していた。だが欠点もあり、そのあまりの質量故の鈍足や、レーザーおよび光学兵器が一切装備不可。さらには通常の3倍以上燃料を食うなどのペナルティがある。
今回の惑星系調査にこれらの技術をつぎ込んだ艦隊を使用するに至った理由はまさにその圧倒的な耐久性があったからである。高度な文明を築けるほどの技術力を有しているのならば、当然武装もそれなりに充実しているはず。万が一相手の火力が想定より大きかった場合でも、撤退用のワームホール発生を待つ時間が稼げると踏んだ。
俺と副官達は母艦である“スター・イート=ワームキャリアー”に乗り込む。その他約20機以上のアンドロイド達がクルーザーやデストロイヤーに乗り込む。
「基地からの支援はナツメに任せる。ミコトは副官として操舵を、ハヴィは各種兵装の切り替え。ユノはレーダーおよび重力ソナーを。スズは機関制御を頼む」
「わかりました」
「りょぉ〜か〜い」
「任されたでござる!」
「ん。問題ない。」
「それじゃ燃料を投下。オブシディアン艦隊、ドッグから出た後に守備陣形に以降しそのままワームゲートで第1惑星の衛星軌道上に出る」
ブォ“ォ”ォ“
という重低音を発しながら次々に艦が発進する。各種役割を持った艦が配置につく。
「コンパスシップ、座標にワームゲートを開け!」
ちなみに各種艦名称を日本語にすると
・クルーザー:巡洋艦
・デストロイヤー:駆逐艦
・バトルシップ:戦艦
・キャリアー:空母
・コンパスシップ:羅針盤船
となり、
さらにゲームだった頃の各種役割をまとめると
クルーザー:武装は左舷と右舷のみ装備でき、装甲はそれなりにあり、広範囲索敵用レーダーと高出力重力波ソナーを装備。味方艦隊を守る事が主な役割。
デストロイヤー:武装は前方のみ集中して装備。装甲は薄くバトルシップより小型で小回りが効き、バトルシップ並みの高火力武装を装備可能。敵の撃滅が主な役割。
バトルシップ:武装は後方以外装備可能。装甲は厚く大型のカノン砲などの高火力長射程の武を多数装備でき、資源輸送用の貨物庫を有している。
キャリアー:武装は専用のビットユニットのみ。艦隊編成で1機のみ配置可能。味方艦隊の索敵強化やシールド増幅など多数の支援が主な役割だが、ビットユニットの種類によっては攻撃力が一番高くなる。
コンパスシップ:武装は空間波衝砲のみ固定。艦隊編成で1機のみ配置可能。装甲は無く、シールド容量が大きい。味方艦隊の航行速度上昇とワームゲートによる艦隊を転移させるのが役割。
現状のテラオブシディアン艦隊の編成は、星型陣形で前方にクルーザー3隻、左右にデストロイヤー2隻、後方にバトルシップ2隻に中央にキャリアーとコンパスシップがそれぞれ入っている。ちなみにこれ以上のテラオブシディアン艦はコスト問題で建造出来ていない。
一応全艦全て惑星内用に換装してあるので火力は下がるが、今回は偵察が目的のためこのまま大気圏に突入し、接触を試みる予定だ。
ワームゲート抜けた先は地球とよく似た(地球よりサイズは小さいが)惑星が視界いっぱいに広がる。
「わぁ…綺麗ですね」
「ああ。綺麗な青だ…」
「ん。美しい。」
「これは、宝石みたいでござるなぁ!」
「ところどころ色んな色が輝いているよぉお〜」
無数の宝石を散りばめた巨大なサファイアがそこにはあった。
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