第6話0101
白翼の騎士団が王国を出発して約5日が経った時だった。もう少しで帝国領に着くと思われた矢先、突如黒紫色の艦隊が行く手を阻んだ。帝国の魔導飛空船である。
「帝国の魔導飛行船を発見!数、前方に10隻!」
「戦闘体制!各魔導船は法撃の準備!急げ!」
空の曇天はさらに黒くなっている。遅かれ早かれ嵐が来る。
「まずいな…嵐が来れば主砲である雷震法撃が使えなくなってしまう。ルーシャ、戦闘になったら真っ先に雷震を撃つ。射線から他の船は遠ざける様、艦隊を編成させろ」
「了解!」
敵との交戦がまじかになった時、敵艦の方からおそらく拡声魔法で言っているのだろう僅かにノイズが走った様な音で、しかし確かに男の声で
「あー。そちらは王国の騎士団と見受ける。ここからもう少し先は帝国の領土に踏み込む事になる。進路上帝国に用が有るのは間違い無いが…王国からの連絡は無かった筈だ」
男は気だるそうに言ってきた。この時ノノラは戦闘を回避出来ると思い、嘘をつく事にした。
「ああ。緊急の知らせがあって帝国におもむいた。事が急なため連絡はまだの筈だ」
こちらも拡声魔法の結晶を使い答える。
「ハァ…ったく、嫌な役回りだよ」
一瞬音がボソッと呟いた気がした。
「ここから先に行った所は帝国の研究施設だ…まだ一部にしか知らされてない。ついでに言うとまだ王国には詳細を伝えていない」
この時ノノラは悟った。何処からか情報が漏れ、自分達は待ち伏せをされたのだと。そしてその瞬間ノノラはルーシャに命令を下していた。
「さらに言うと、軍司令官殿からこの区域に進行する船は全て排除せよとの命令だ」
ノノラは拡声魔法を切り、騎士団に有無を言わさず行った。
「総員!戦闘開始!」
だがなおも男は何かを言っている様だった。
「だが俺は非常に面倒くさがりの性格だ、面倒事になりたくない。だから引けば…って、おいまじかよ」
ノノラの王旗船、船首部分が大きく開き中に3本の鉄心の様な物が見えた。しかし次の瞬間、鉄心中央から大きくそして精緻な魔方陣が展開された。
「放てぇぇぇええええ!」
ノノラの怒号とともに魔法陣が眩い光を一瞬放ち、王旗船の直線上に眩い電撃が走った。いや、あれは電撃などと言う生易しいものではない。天から落ちてくる雷を水平に撃った様な光景だった。
直線上にいた敵艦の壁であろう頑丈そうな黒紫の船体2隻が一瞬で崩壊した。そしてこの時、敵艦の男は盛大に舌打ちをした。
男は彼女らが引くならば軍司令官に嘘をついてでも逃すつもりだった。しかし流石に任された艦隊を一瞬で2隻破壊されたとあってはタダでは戻れなくなったのだ。
「クソ!こうなったら実験機の性能を試すしかないな」
黒紫の船が一斉に前へ出る。10隻のうち前方2隻が破壊され8隻となり、旗艦含め2隻が左右に分かれ、残り6隻が一斉に砲撃を始める。
ここに両者の戦いの火蓋が切って落とされたのである。
敵艦は2隻破壊したとは言え、騎士団の艦隊はたった5隻しかない。そして開戦の狼煙であった雷震砲の威力は絶大であったが、そう何度も使える代物では無い。
さらに言うと雨が降れば使う事が出来なくなるため嵐が迫った今、開戦で撃たねば倍の戦力を有する帝国艦隊に勝てる確率はかなり低かったであろう。
しかしだ、主砲を使って2隻破壊したは良いが帝国の船の火力は予想を上回っていた。
「第2トライデント艦の魔導障壁損失!兵装の4割が使用不可能な状態です!」
「くっ。よもやここまでとは…あれが魔導機兵の性能という訳か」
帝国の艦隊には人間ならざる者が乗船していた。目にクリスタルがはめ込まれたゴーレム技術の転用である魔導機兵である。
人の数十倍の筋力を持ち、さらには人工魔結晶でできたバックパックの様な魔畜機を保有し、本体に刻まれた魔術回路を組み合わせ無数の法撃を飛ばす。
それは単純に4人でやっと動かせる波瘴魔導砲などの大型戦艦用武装を、一体の魔導機兵でまかなえると言う事だ。これだけでどの位火力が上がるかは容易に想像が付く。
そして戦いは更に苛烈さを増す。
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