譲れないモノ

今日も相変わらずのアイドル活動しか、予定がない。

後輩に当たる汎用機を纏った彼らが居れば、僕の仕事は、それだけで済んでしまう。

適材適所と言う奴だな。


平和な世界で、どこか気持ちの抜けてしまっている自分には気が付いているが、幸せそうな人たちを見ていると、それだけで充たされている気持ちも沸き上がる。

そんな葛藤にも似た気持ちの中で


ドンッ!

最初は何か、大きな衝撃の様なモノを感じた。

続けて、直後には縦にも横にも分からない大きな揺れが襲う。

地震?

それに間違いはないはず。だが、これは大きい上に長い。


かなりの長い時間、大きな揺れを感じたが、揺れが治まると辺りは一気に慌ただしくなる。


『緊急出動。○○にて火災発生。並びに△△では、ビルの倒壊を確認。

○○へは、1~3番隊が応対。△△は4、5番隊が出動してください。』

けたたましいサイレンと走り回る音、このビルには大きな被害は無さそうだが、辺りからは火が見え、煙が上り始めていた。

窓から見えた景色は一変していて、元の景色を思い出せない程だ。


「装着っ!」

僕の声に反応して耳元で


【承認。アーマーを転送します。転送完了。装着確認。】

電子的な声が聴こえて直後には、銀の戦士に姿を変えていた。

迷いはない。

そして、時間もないだろう。


「グリン・ナイトっ!

こいっ!スカイバイク!」

窓から身を乗り出し、叫ぶ様に言う。


【承認。グリン・ナイトアーマーへ変換。

スカイバイクを派遣。リンク繋ぎます。コネクト完了。】

電子的な音声が聞こえた直後にメタリックグリーンの姿に変わり、目の前に宙に浮かんだバイクっぽい乗り物がある。

その空飛ぶバイクに跨がると一気に加速。


「震源地から、津波の到達時間を予測。」


【震源地を検索。演算中・・・】

たった数秒が長く感じる。


【津波到達時間の予測、地震発生から10分から1時間と想定。大きさは1mから30m。被害予測範囲をモニターに投影します。】

くそっ、思っていたより深い所まで到達する予測になっている。

やっぱり、やるしかない。


「津波のエネルギーを中和する。最適ポイントを探ってくれ。」

もう、余裕がない。急がないと。


【津波エネルギーの中和成功率は76%と予測。

ただし、マスターへの影響度は未知数。

非推奨行為。】

警告を与えるだけで、指示の場所を表示しない。

僕の事を思っての事だし、嬉しく思う。

でも、やらなきゃ。


「ありがとう。でも、僕がやるんだ!」

その声に、即座には反応しなかったが


【・・・・最適ポイントを投影。最良時間をカウントします。急いで下さい。

残り1分42秒。】


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