化身

暗い暗い、どこまでも闇に包まれた世界。



そこに一筋の光が差す。


「父上‼︎」


どこからか、懐かしい声が聞こえてきた。


「……ホルスか」


聞き間違いようのないこの声の主、息子のホルス名を呼ぶラー。


「父上‼︎まだ諦めないでください‼︎こんなところで死んではなりません‼︎」


姿は見えないが、ホルスにはあらゆるものを見通す目がある。あちらからはこの無様な父の姿が見えているのだろう。


「声は神力で届けているのか、全く無駄に力を使うなと教えただろう……」



そう言って通信を切ろうとするラー。


「待ってください父上‼︎これは必要なことです‼︎父上‼︎」

そう言って力を強め、無理やり通信を続けるホルス。


「無駄だ。この海に囚われた時点で勝敗は決した。俺の負けだ。」


手をひらひらしてもう手がないことを訴えるラー。


「いえ、まだです‼︎まだ父上には力が残されている」


「……フン」


このタイミングでホルスが絡んできた時点である程度予想はできていた。


「……アレをやりましょう‼︎」

「……しかたない」


いつのまにか目を開いていたラー。


真っ暗なはずの水中に現れた眩しいくらいに輝く光、ホルスの伸ばした手を取る。


キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン‼︎



真っ暗な海が、光に包まれた。

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