水中。

ラーは太陽神。エジプトの最高神だ。


象徴とする力は火と赤。


太陽そのものともたとえらる神だ。


ラーが発する真っ赤なオーラは、嵐のごとく吹き荒れ、触れたもの、近づくもの、直視したものの目すら焼き尽くした。



……しかし、


「ゴポゴポゴポゴポ……」


オーラは消え、ラーは溺れていた。



真っ青な水の中で。



(なんだ?……何が起きた?)


内心疑問に埋め尽くされるラー。


ラーの力は太陽そのものと同じだと言っていい。


先程吹き荒れていた赤い嵐は、太陽のエネルギーと同じ力を持っていた。


なのに……


(太陽のエネルギーを、打ち消しただと?)


"太陽のエネルギーを打ち消す"


そのことが意味するものは、


(それも、たかが『水』で⁉︎ありえない‼︎)


たしかに、火に大量の水をかければ火は消える。



だが、


例えば、山火事を消すのにどれくらいの水が必要か?


ガス火災は?


石油火災を水で消化できるか?



太陽はただの火の塊ではない。


そもそも、太陽はただ『燃えている』わけではないのだ。


太陽の中心は特殊な世界で、中心核では熱核融合が起きていて、物質からエネルギーを取り出している。

熱核融合反応により、水素がヘリウムに変換されているのだ。


核融合によって生まれるエネルギーは膨大で、現に太陽は、100億年以上燃え続けているのに、燃え尽きることはない。


『燃える』


とは、燃やすもの、火、酸素



の三つが揃って初めて成立する現象なのだ。


太陽にはこれらはどれも当てはまらない。


つまり、太陽は『燃えて』いるわけではないのだ。



どれだけの量の水を用意しても、消すなんてことはできやしないのだ。



なのに、現在ラーが纏っていた太陽の力は完全に消え去り、代わりに真っ青な水中が広がっている。


水面を見ようと、上を向くラー。



だが、


(……どれだけ深いんだ、ここは)


全く見なかった。



それどころか、上も、下も、右も左も、


360度、どこを見ても、この水中に終わりがあるようには思えない。


(なんなんだ、この水は……)


これは明らかに敵の力だ。



このままではまずい……



と、必死に打開策を探すラー。



ゴゴゴゴゴ‼︎


その時、


視界の中の、水中に何か巨大な影が蠢き出した。

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