最高温度の神

「周囲の温度は1000度を超え、ありとあらゆるものが融解していく……」


――女神の空間。



一人、女神ガイアは鏡でベヒモスとラーの戦いを観戦していた。



鏡に映るのは、壁際に追い詰められ、自らの象徴とする『火』の力を解放したラーと、その力に押し返されているベヒモス。


ラーの力は凄まじく、その身にまとうオーラに触れたものを跡形もなく焼き尽くす。


オーラは、赤い旋風のごとく、ラーを中心に、球状に広がっていく。


その光景はまさに小さな太陽が生まれるかのごとくだ。


ラーの背中に立ち塞がっていた壁も、足元の地面も、誰もいない観客席も、問答無用で焼き尽くしていく。



戦いを映す鏡も真っ赤になり、もはや中がどうなっているのかも分からなくなっている。


「あらゆる防御も、攻撃も、触れたものも、近づくものも、視界に入れただけでもそのものの目すら、関係なく焼き尽くす……まさしく太陽ですね……」




ラーの力を分析して、解説していくガイア。


「さすがはエジプトの最高神。こんな攻撃を隠していたなんて、こんなものをまともに受けたら、ひとたまりもありませんね」



一人つぶやきながら考え込むガイア。



「ほんとうに、なんてデタラメな力なのでしょう……」


ガイアの背後から、『黙示録のラッパ吹き』の唯一の大人、第七が姿をあらわす。


第七は、ラーの一撃を見て、初戦の終わりを感じて現れたのだ。


「第七……そうですね、確かにデタラメな力です」


ガイアは、振り向いて第七に答える。


「これではさすがにベヒモスも耐えられないでしょう」



まるで諦めたかのように、間の抜けた声のガイア。


しかし、




その口元には笑みが浮かんでいた。



"ザザザザザザザザザザザザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーー‼︎‼︎"



そして鏡から響き出した凄まじい轟音。


「――っ!?」


突如として響いた轟音に困惑する第七。


先程まで真っ赤だった鏡は、今や真っ青に染まっている。


「これは……?」


常軌を逸した事態に、言葉が出ない第七。



ガイアは、待ってましたとばかりにガッツポーズをして、ウキウキした様子で鏡にしがみつく。


「そう‼︎そうです‼︎あなたの本来の力はこれなのですよ、ベヒモス‼︎いや……」



ベヒモスと言ったのを、取り消すガイア。


「?」


それを見て首をかしげる第七。


「そうですね、紹介しましょう!!」


まるで、子供が自慢のおもちゃを紹介するかのように、第七へ向けて鏡の画面を見せびらかすガイア。




「紹介しましょう‼︎これがベヒモスの本来の姿。その名も『バハムート』‼︎」


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