大地が揺れる。
ベヒモス――。
『旧約聖書』に登場する、神が世界を作る5日目に作られたという、陸の怪物。
その体はあまりに巨大で、一頭しか存在しないにも関わらず、複数系で数えられたりする。
豊穣のシンボルである。
時に悪魔にも見られたりする。
モデルはゾウやカバと言われるが、サイのような姿で描かれたりする。
実際のベヒモスも、筋肉質な四足歩行の胴体に、全身を黒い硬い毛に覆われ、首元から背中まで続く金色の鬣、背後からの攻撃からも身を守れるようになっている。
鼻先には大きなツノが生えていて、サイのようにも見えなくもない。
さらに、杉のような尾と、鉄の棒のような骨を持つ頑丈な体に、硬く分厚い皮膚を持ち、まさしく完璧な体を持つ。
そのため、ベヒモスは、神の傑作、最高の生物だと言われている。
が、
一つ、その説には誤りがある。
それは、体の大きさ。
あまりに巨大に伝えられていることだ。
実際のベヒモスの体長は、せいぜい5メートルほどだ。
そんなベヒモスは、久しぶりの大地を踏みしめて、光の中から出現する。
「グルルルル……」
唸り声を上げながら、土を蹴って足場の感触を確かめている。
ベヒモスがいるのは、人里離れた、何もない広大な更地に作られた円形闘技場、
大地を揺るがして突如として現れた、巨大な建造物だ。
通称『コロシアム』
女神が、ゼウスとのドンパチに使うために作り出した建造物だ。
だだっ広い建造物にも関わらず、観客席には人気は一切ない。
当然。
そこは女神が作り出した建造物、
自分達の都合だけで関係ない人間を巻き添えになどならないようにしてある。
というのも、
互いに呼び出したのはどれも世界を破壊する力を秘めた怪物達。そんな奴らが何の制限もなく好き勝手に暴れ出したらそれこそ世界がいくつあっても足りない事態になる。
ここでは、たとえ世界を破壊する威力の攻撃をしても、外には一切影響がないように隔離してあるのだ。
観戦できるのは、各代表の女神とゼウスのみ。
中に入れるのも戦う本人達のみだ。
ガイアが作り出した世界を破壊したがっているゼウスだが、別に本当に世界を破壊したいわけではなく、女神に嫌がらせをするのが目的。
ゆえに、ガイアがそれぞれが持つ自慢の駒同士のタイマンを望んでいる意図を汲んだゼウスも、世界各地に設置されたコロシアムへ、それぞれ一人ずつ戦士をおくりこんだ。
互いに何の示し合わせもないのに、ガイアが作ったこの隔離フィールドに、互いの戦士を召喚し、世界の命運をかけた戦いを始めようとする。
ザッザッ、
と、陸のコロシアムに送り込まれたベヒモス
の視線の先、入場口からフィールドへ入る人影が一つ。
音のする先を睨みつけるベヒモス。
ついに、対戦する二人がフィールドに出揃った。
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