第12話 巨獣と騎甲鎧

 隷属の呪いに掛けられた人々を解放しながらこの2週間で最低限身につけるべきスキルは会得した。


 後は実践で経験を積むだけだ。


 現在の僕のスキルカードの情報は――







霧島きりしま幸璃こうり舘梨たてなし運幸うんこう/ウ○コ/多田ただこう/コウ ・タダ)


スキルカード【アンモライト】


スキル適正:技能スキル、魔法スキル、具現スキル、特殊スキル(1)、加護スキル、ギフトスキル


取得スキル


  技能 【一般教養(地球トゥーレシア・日本)】

      【家事】

      【料理】

      【小柄投擲】

      【月影流剣術】

      【月影流二刀術】

      【月影流大太刀術】

      【盾術】

      【看破】

      【痛覚耐性】

      【魔法耐性】


  魔法 【言語翻訳】

      【身体強化】

      【浄化】

      【探索】

      【残留思念】


  具現 【刀剣類】


  特殊 【甲殻】(1)







 ダニエルさんには技能スキル【盾術】【痛覚耐性】【魔法耐性】。

 ランディスさんには補助系魔法スキル【身体強化】【探索】。

 ミハエルさんには補助系魔法スキル【残留思念】、具現スキル【刀剣類】をそれぞれ教えてもらい、会得した。

      

 具現スキルが得意なミハエルさんによると、補助系魔法スキル【残留思念】は単体では何の効果も無いが、同じ補助系魔法スキル【付与魔法】や具現スキルと組み合わせる事で作用や実体化を永続化させる事が可能となり、具現スキルや【付与魔法】を身に付ける場合は必須のスキルなのだとか。


 そうそう! それから僕の特殊スキル【甲殻】について、あれから新しい発見をした。


 僕の生み出した甲殻はガチャガチャのカプセルくらいに丸まって縮むのだ。

 しかもそれは単体から複数を組み合わせた物まで。

 組み合わせたものは、纏めて圧縮されて一つに縮まる。


 コリコリ壺貝も今は圧縮してスキルカードのストレージに仕舞ってある。


 実に便利だ。


 ただ、不便なトコもある。

 圧縮すると、どれがどれだか分からなくなるのだ。

 う~ん、何かいいアイデアはないものか?


 さて、次の段階である実践訓練なのだが問題が発生した。


 邪神に対抗するため、それに近い特性や能力を持つ悪獣――瘴気を吐き出す悪霊や悪魔といった霊体や精神生命体を相手に戦いを挑むのだが、その悪獣が出没する場所がサンドリア帝国にはないのだ。


 他の僕以外の勇者達は鍛錬のために神々が貸し与えてくれた便利道具で代用するらしいのだが、僕にはオマケ勇者である事を理由に使用させてもらえなかった。


 そこでレッドさんが出した代替案が僕の特殊スキル【甲殻】の能力を高めるために”巨獣の檻”という場所に向かい、”巨獣”と呼ばれる生物を観察して生態や能力を学習する――と言うものだった。


 ”巨獣の檻”――それは”巨獣”と呼ばれる甲殻を持つ生物や様々な植生を持つ植物の生息地。


 それらは一様に巨大で人にとってはまるで巨人の住む世界に迷い込んだ錯覚に囚われる場所であるとか。


 巨獣は全長5mから巨大なモノになると100m級の巨体を誇る”ぬし”と呼ばれるものがいる。


 だが、大抵は5~10mの大きさの巨獣が主流で、それ以上の大きさの巨獣とは滅多に遭遇しない。


 巨獣の檻は生存競争が激しい環境で巨体に成長するまでに生き延びる個体は希少なのだとか。


 巨獣には階級があり一番下からポーン級、ナイト級、ルーク級、ビッショプ級、ウィザード級、クイーン級、キング級の7つの階級が存在する。


 ポーン級は個体の能力は低いが群体で行動し、弱さを補う。


 ナイト級は攻撃力と防御力併せ持ち、ルーク級は防御と耐久力に、ビショップ級は再生能力に特化している。


 ウィザード級は特殊攻撃や魔法スキルを使い、個体ごとにその能力も違う厄介な相手だ。


 クイーン級とキング級に至っては全長100mを越す巨体そのものが脅威である。


 たが、これらに共通するのは魔獣の様に核を持っている事。

 ただし、この核が曲者で、全世界共通のルールと法律では”核を決して檻の中から持ち出してはならない”とある。


 何故ならば、この核は巨獣の因子の塊――つまり、巨獣の”種”なのだ。


 これを檻の外に持ち出した場合、外気に触れた途端に核は少しずつバラけて周辺に広がる。

 同時に巨獣の幼生体や巨獣の森の植物が発芽し誕生する。

 そして物凄い速度で成長し、一夜にして新しい巨獣の領域――”巨獣の檻”が誕生してしまう。


 その昔、巨獣の核を利用できないかと研究していた国があった。

 だがその国が巨獣の核の正体を知る時期が遅すぎた。

 その国があった大陸は瞬く間に巨獣と巨大な植物に覆われ、大陸まるごと”巨獣の檻”と化してそこに住む人々ごと滅びたという。


 以来、巨獣の核を外界から持ち出しを禁じ、もし違反すればその場で処罰され、重刑もしくは処刑もあり得るのだ。


「じゃあ副長、騎甲鎧を出すんですね!」


 レッドさんから説明を受けたミハエルさんが声を弾ませながら騎甲鎧と言う聞き慣れない言葉を使う。

 何となく男心を刺激する響きだ。

 期待に胸が膨らむな。


 僕はレッドさんに騎甲鎧について質問する。


「騎甲鎧とは騎甲と呼ばれる、主にマナを動力源にして動く有人の乗り物の一種で、騎甲鎧は全長5mほどの人型の乗り物だ」


 やはり!

 男の子の夢、ロボットの事だ!

 僕も好きなんだよ、ロボット。

 唯一の趣味でネトゲのロボットに僕はハマっている。

 いいよね、ロボット! 特に機体の部品を組み替えたり、変形や分離・合体したり!

 そういうの、いいよね!

 

「今回は神官のシュタインベルク様が御同行なされる。 何でも我々の向かう巨獣の森に行方知れずとなっている女神ルーキス様の反応があったらしい」


「リュネット・シュタインベルクです。 タダ様、皆様、よろしくお願い致します」


「リュネット様付きの神官ブリュンヒルデ・レーベンドルフです。 しばらくの間、リュネット様と共々御世話になります」


 ペコリと可愛らしくお辞儀するリュネットさん。

 それに付き従うお付きの神官のブリュンヒルデさん。


 リュネットさんはハイエルフとリトラーと呼ばれる血を引く妖精族である。


 彼女は神官であり巫女であり聖女でもある。


 純白に金糸で縁取りされたローブのようなダボダボの神官服に身を包み、身長136cmと小柄で均整のとれた可愛らしい容貌をしている。


 頭をスッポリ覆うベールから出ている顔から窺い知る事が出来る雪の様に白い肌に紫水晶のような透明感のある紫色の瞳。

 ベールから僅かにはみ出ている頭髪からは銀と金の中間――所謂プラチナブロンドと呼ばれる髪色だ。

 年齢は十七歳。


レイヤさんから聞いた話ではエルフやドワーフと言った長寿の種族は二十歳まで普通に成長し、そこからはゆっくりと歳を取るらしい。


 ブリュンヒルデさんは人族――ヒュノスで白で縁取りされた灰色の神官服を着用。

 茶色の瞳に少し癖っ毛の長い栗色の髪をうなじで一本に纏めてリボンで結び、左肩から前に垂らしている。

 レイヤさんほどではないが、服の上からでも分かる肉付きが良い健康的な体をしている中々の美人さんだ。

 年齢はリュネットさんの一つ上の十八歳。


 これでメンバー全員が揃ったので出発だ。


 日程は往復二日、滞在五日で一週間の予定。

 滞在とは言っても巨獣の檻の外でキャンプを貼る。


 巨獣の檻の中には巨獣以外に淫獣と呼ばれるゴブリンやオークなんかも生息していて危険なのだとか。


 と言うか、遭遇する機会はこいつらの方が圧倒的に多いらしい。


 淫獣にとって巨獣の檻は食料が豊富で繁殖に適した環境であるとレッドさんは語る。


 それにしても、期待外れだよ騎甲鎧。


 小学校の行事で行った玩具博物館で飾られてあったブリキ製のゼンマイ式で動くロボットのオモチャそのものだよ!

 古い方ならせめて、機動兵器な角ばったヤツのが良かったよ……


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