第4話 加護がないっ!?
ドッカン! ガンガン! ゴンゴン!
「うわっ!?」
翌日、甲殻の小屋に響く大音量と凄まじい揺れで眠りから目を覚ました。
じ、地震か! 異世界にも地震があるのか!
僕は堪らず甲殻の小屋の中から外に慌てて飛び出す。
「※※※、※※※※※※」
「※※※※※※※※※※※※」
「※※※、※※※※※※※※※無茶苦茶硬いな、これ……何の魔獣だ?」
「わっ! 中から子供が飛び出て来た!」
「なんだなんだ?」
外には銀色に輝く金属製の軽装鎧を着込んだ男達が両手に大鎚を持って僕の甲殻の小屋を無遠慮にぶっ叩いていた。
僕に向かって何か叫んでいるようだけれど最初はサッパリ分からない。
だけど彼等の言葉を聞いている内に何故か徐々に意味が理解できるようになってきた。
それならと小屋の破壊活動を止めてもらうよう必死で訴えかける。
「ちょ、ちょと、止めて下さい! これは僕の家ですから! そんな事されたら壊れちゃいますよ!」
叫ぶ僕を見咎めた男達は大鎚を地面に放り出し、腰に佩いた剣を抜き放ち、僕にその切っ先を向けた。
「お前は何者だ! 何故、ここにいる! 返答如何によっては――斬る」
僕を睨みつけ、殺気を放つ男達。
不穏な空気の中、僕は自身の潔白と身分の証明を求められた。
手を軽く挙げ、何も持ってない事をアピールしながら話し始める。
「えっ、と……僕は、邪神を討伐する為に地球から召喚された者です」
「はあ!? 貴様、何を言っている! 勇者様達は全員、各々割り当てられた部屋でお休みになられているぞ!」
「いや、それが……宮廷魔術師長のナハトラさんと言う方が、僕は勇者の中で一番弱いのでこの中庭で生活しろと指示されまして……」
「えっ? 勇者の中で一番弱い? 何を……っ!? ……スキルカードは何だ?」
「アンモライトです」
「アンモライト!? ランクAじゃないか!! どこが弱いんだよ!!」
え? 何驚いてるんだろ、この人?
「それが……僕以外に召喚された勇者は全員ランクがS以上で、その中では僕は弱いんだそうです」
「ランクS以上だとAは確かに一番低いが……はあ…少し待ってくれ。 今、ナハトラ様に確認を取る」
僕と喋っていた男が嘆息して別の男に指示を出し、その指示された男は建物の中に走っていった。
暫くすると先程、指示を受けた男が急いで戻って来て、指示を出した男に報告する。
「……何っ!? あんの、糞爺~!! また勝手をっ!!!!」
報告を受けた男は憤懣遣る方無いといった感じで怒りを顕にする。
「失礼しました勇者様! 先程の無礼、お許しください! 私はサンドリオン帝国近衛騎士隊所属、副隊長のレッドバルト・アーサーと申します!」
「確認取れたんですね? 良かった~……。 あ、僕は、た……
咄嗟に偽名を考えそれを名乗る。
それに地球の外国と同じで姓と名が逆になっているようなので逆にして言い直した。
ホッと溜息を吐く。 誤解が解けてホントに良かった……。 あのまま斬り殺されるかと思ったよ!
「本来、この中庭は我々近衛騎士専用の訓練場なのですが……宮廷魔術師長のナハトラ様が急遽、貴方のためにこの訓練場の一部を貸し出されたそうです。 我々は、その……連絡を受けていなかったものでして。 てっきり、このサンドリオン城に忍び込んだ魔獣か何かとだと思い、討伐しようとしていたところだったのです……」
最後は尻すぼみで声が小さくなるレッドバルト副隊長。
危なっ!? あのままのんびり寝てたら僕、甲殻の小屋事潰されてあの大槌で殴り殺されてるところだったよ!!
「それにしても流石勇者様。 もうこちらの世界の言葉を覚えられましたか。 凄いですね……」
「ああ、そう言えば。 最初は何を言っているのか分からなかたんですが、途中から理解出来るようになりました」
「え?……すみませんがスキルカードを確認して頂けますか。 もしかしたら、スキルが増えているかも知れないので」
「わかりました」
そういえばスキルカード、ポケットに入れていたのにいつの間にか無くなっていた。
レッドバルトさんに訪ねてみると、スキルカードは必要がない時は体の中に戻るらしい。
後、スキルカードはアイテムストレージ――物品の収納機能も兼ね備えていると教えてもらえた。
これは非常に有用な情報だ。
では、スキルカードを取り出して内容を確認してみよう。
スキルカード【アンモライト】
スキル適正:技能スキル、魔法スキル、具現スキル、特殊スキル(1)、加護スキル、ギフトスキル
取得スキル
技能 【一般教養(
【家事】
【料理】
【小柄投擲】
【月影流剣術】
【月影流二刀術】
【月影流大太刀術】
魔法 【言語翻訳】
特殊 【甲殻】(1)
……魔法? 言語翻訳? 魔法なんて知らないんですけど?
「あの~、スキルの項目に魔法【言語翻訳】とか言うのがあるんですが。 もしかしてこれが原因ですか?」
「ッ!? 技能スキルではなく、魔法スキルですか!? 貴方は魔法スキルの使い手なのですね!!」
「いえ、違います。 僕の世界では今でこそ魔法が使える人がいますが、僕が生まれる十数年前まで魔法は空想上の技術でした。 それにいたとしても少数で、使える魔法も火種を出すとか涼を取るのに涼しいそよ風程度を発生させたりと、大した事ではありません」
「では、貴方御自身は?」
「魔法なんて使えませんでした」
「それで、昨日の今日でいきなり魔法を覚えるとは……。 では、この殻のような物も魔法で?」
「いえ、それも違います。 特殊【甲殻】とか言うスキルで甲殻を出して繋ぎ合わせました」
「とっ、特殊スキルもお持ちなのですか!? さすがは勇者様ですね!!」
「そんなに凄いんですか? このスキル」
「特殊スキルは神から与えられるギフトスキルと同列で常軌を逸した非常に強力な力なのです。 ただ、強力すぎる故、所持する数が増えると逆に全体のスキルが弱体します。 あと、体質・使役・変質系スキルもこれを所持する数が増えると全体のスキルが弱体化します。 これを防ぐには神から与えられる加護かギフトを持つか、自身が神になるしかないのです。 しかし、加護やギフトは相手が相手だけに滅多に手にする事は出来ないでしょう。 また、神へと至るには大変難しい試練が幾つもあると聞き及んでおります。 まあ、加護スキルを持つ勇者様には制限などありませんから関係ありませんね」
要約すると、特殊スキルはとても強力。
そして体質・使役・変質・特殊の四つのスキル系統は所持する数が一つだけなら問題ないが、数が増えると技能スキルや魔法スキルといったものにも影響を与えて全てのスキルが弱体化する。
スキルの弱体化を防ぐには神様から加護スキルやギフトスキルを貰うか、自分が神様になるしか無い。
レッドバルトさんに確認したらその認識で間違いないと答えてくれた。
そしてもう一つ、僕には見過ごせない文言が。
「僕、加護スキルなんて持ってませんが」
「えっ!?」
「え?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます