第3話 衝撃の真実

 とにかく、このままじゃ埒が明かない。


 もう一度スキルカードの内容を確認してみる。


 何か有用な能力はないかな?


 それにしてもコレってゲームメニューみたいだな。

 趣味のVRMMOのロボゲーをプレイしていたから何となく分かる。

 詳しい内容が表示されていないけど、これってタップすれば表示されるんじゃないかな……あ、やっぱりそうだ!


 ちなみに名前をタップすると驚くべき内容が表示された。


 ”本名 霧島きりしま幸璃こうり。赤子の頃、天生真てんせいしん大学総合病院にて霧島

司郎しろうと霧島・百合ゆり(旧姓 三千院さんぜんいん)の長子として誕生。その当時、看護師として努めていた小沢おざわ明笑あきえ(旧姓 野田のだ)が悪戯心から同じ時期に生まれた舘梨たてなし運幸うんこうと取り替えられた。その後、舘梨・運幸として十五年の人生を歩む”


「……」


 頭痛がする。


 立ちくらみも。


 僕の名は本当は霧島・幸璃。

 この小沢 明笑とか言う看護師に、悪戯で僕の人生を無茶苦茶にした人物。


 当然許せる筈ない。


 自分の実の父親、母親と思っていた人達に殺され掛けた事も一度や二度じゃない。

 もし、伯父さんが居なければ、僕はとうの昔にこの世に居なかった。

 

 必ず生きて復讐してやる!


 それには先ず生き残らなければ。

 邪神なんかに殺されてたまるか!


 次に能力、スキルをタップして行く。


 ……駄目だ! 使えそうなスキルが無い!


 最後に【甲殻】というスキルをタップする。


 これで駄目なら手詰まりだ! どうしようもない! 頼む!


 祈るような気持ちで内容を確認する。


 ”甲殻を生み出す。甲殻の硬さや弾力などを調節できる。甲殻は大気中などに存在する微量なマナを吸収する事で活動に必要なエネルギーを効率的に確保・運用する謎物質である。甲殻は加工や組み合わせ次第で様々な道具や甲殻を持つ生物を生み出せる”


 ……よし! 何とかなりそうだ!


 でも、どうやればこのスキルが使えるんだ?

 

 取り敢えず想像してみる。


 今はお腹が減っている。

 食べられる甲殻類の生き物。

 火が無いので生でも食べられる。


 となると、あれかな?


「いでよ、車海老! ……駄目か~」


 余計にお腹が空いてきた。 どうすれば……ん?

 失敗したと思いきや、僕の視線の先の空中で灰紫色の光の粒子が発生し、それが収束して見た事ある形になる。


「お……おおっ! 車海老だ! この色、形! 紛う事なき車海老だーーっ!」


 光が収まると車海老は地面に向かって落下する。

 僕はそれを慌てて両手で受け止めた。


 ピチピチ!


「い、生きてる……」


 これなら、生でも行けそうだ。

 車海老の頭をもいで殻を剥く。 するとプリッとした身が顕になる。


 ゴクリッ!


 僕は意を決してその身にかぶりついた。


 噛む度に弾ける海老の身。

 プリッとした食感と身から出たトロリとした甘みが口一杯に拡がる。


「美味しい……」


 海老の身を食べ終わったので最後に海老の頭に詰まっている味噌を口で吸い出して食べる。

 新鮮な海老ならではの食べ方だ。


 濃厚な海老味噌は塩味が良い塩梅ですごく美味しい。

 海老味噌を一滴残らず吸い出す。


「食べ足りない……もっと、欲しい!」


 僕は先程の要領で車海老を十匹出して貪り食った。




 ☆




「はあ~、お腹一杯! ご馳走様!」


 車海老の残った殻の残骸に手を合わせて感謝!


 さて、お腹も膨れたので頭が冷静になれた。

 食料確保は出来た。


 後の問題は住む所。


 そして着る物。


 【甲殻】のスキルで住む所は何とかなりそうだ。

 甲殻を作り出してそれを壁や屋根にして小屋を作れば良い。


 早速、挑戦してみる。


 スキルを使って甲殻を作っていると段々コツが掴めてきた。

 甲殻を作るスピードが増していく。

 途中、甲殻を同士をくっ付けると癒着して一体になる事に気が付いた。

 これなら甲殻同士を接合するネジやクギが要らない。 助かる。


「ふう……出来た!」


 ようやく完成した我が家。

 空を見上げるともう日も暮れて月が夜空に浮かんでる。

 それに天の川のように金色の粒子が空を流れてる。


「この世界の月って六個もあるんだ……」


 何処か遠くから賑やかな声が聞こえる。

 多分、僕以外の勇者の歓迎会をやっているのだろう。

 でも、僕は呼ばれていない。 関係ない。


 今日は色々あり過ぎて疲れた。


「……もう寝よう」


 僕は出来たばかりの甲殻製の家の中に入る。


「お休みなさい……」


 誰ともなく就寝の挨拶を呟いて、僕は眠りに付いた。

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