第5話 勇者の予備

 あの後、レッドバルトさんに確認してもらったら、召喚勇者は必ず相性の良い神様から加護スキルを得ているそうだ。

 

 僕は持ってない。

 スキルカードを目を皿の様にして見たけれど、何処にも書いてないのだ。

 ナノレベルで書かれていたら分からないけど、流石にそんなお巫山戯はないよね!

 と、言う訳で僕の処遇について会議が行われた結果、僕は暫定で近衛騎士隊管轄になりました!


「悪いな。 待遇は他の勇者より低くなる」


 申し訳なさそうに僕がこれから生活する部屋に案内してくれたレッドバルト近衛騎士隊副隊長。

 僕を直接指導してくれる担当はこのレッドバルトさんに決定した。

 近衛騎士隊の隊長さんは勇者達の指導に就く事に決まっていて忙しいらしく、僕は一度も会っていない。


「いえ、寧ろ待遇が上がりました。 お城の中庭でサバイバル生活しなくて済みます」


 お陰で僕も一国一部屋の主になれました。

 要は一部屋貸して貰えたんですね。

 それに三食御飯が食べられます!

 着替えも支給して貰えました!


「……ウチの魔術師長が迷惑を掛けてすまない」


 険しい顔で眉間を指で揉むレッドさん。


「それで召喚された勇者の人数は減ってしまったんですよね?」


 勇者召喚された人数は僕を含めて総勢三十名。

 一人減ってニ十九名に。


「いや、それがダダ君が召喚されたのは手違いではないらしい」


「手違いではない?」


 レッドバルトさんが顔を逸して何か言い難そうにしている。

 何か拙い事でもあるのかな?


「予備、だそうだ」


「予備って……」


 僕は唖然としてしまった。


「神託によるとたまたまタダ君が召喚予定の勇者達と一緒に纏まっていたのでオマケで呼び込んだらしい。 最初から勇者の空きが一つあり、かつ、優秀そうなので次いでに、と……。 加護が無いのは与える予定を組んでいなかったからだそうだ。 神々からは”申し訳ないが加護無しで頑張って欲しい。 その代り報酬は割増するから頼む”――だ、そうだ……」


 何ですか、その無茶振りは!

 そちらが召喚しといてアフターフォロー無しですか!

 まぁ、御蔭で僕の出生が知れたので、それはそれで感謝するけど……。


「そもそも、この世界で最強の女神様達が相打ちして倒したのに僕達人間に太刀打ち出来ると思えません。 ましてや、オマケの僕では……」


 聞いた話では神々の中でもリヴィナ、オア、シェラザードと言う究極戦力の三柱女神を投入してようやく邪神と互角なのである。

 たかが人類に毛が生えた程度の強さで何が出来るというのか。


「それが、神々の中で未来を見通す運命の女神が予見したそうだ。 異世界トゥーレシア――君達が地球と呼ぶ君達の世界から召喚した三十人の勇者の内の一人が邪神を殺す、と」


「本当ですか?」


 どうも胡散臭い。

 何か裏があるように思えてならない。

 気にし過ぎかな?


「そこは倒してみないと分からない。 そして、一応君もその中に含まれる。 だが、クソじ――ナハトラ様は君の指導を拒絶された。 私としては君の才能は実に惜しい。 このままでは邪神と戦う前に下らないちっぽけな人間のプライドとランク偏重差別で潰されてしまう。 だから隊長を通して何とか君を指導できるよう掛け合った」


「それは感謝してますレッドバルトさん。 ……とこで、僕は今日から訓練ですか?」


「先ず教えるのはスキルカードとスキルについての補足説明だな。 君達の世界ではスキルカードは無かったと聞いている。 後、スキルについても説明が必要そうだ。 それから訓練に入ろう」


「よろしくお願いします」


「こちらこそだよ、タダ君。 それと名前はレッドでいい」


「はい、レッドさん」


 その後、僕は近衛騎士隊が使う専用の会議室に案内されてレッドさんの説明を受けたのだった。

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