第1話 定番の異世者召喚

『儂はサンドリオン帝国が宮廷魔導師長のナハトラ・コーンウェル。 汝らは神々に勇者として選ばれ、世界を救う栄誉を賜ったのだ! 感謝感激するが良い!』


 などと訳の分からない事を宣う言葉が頭の中に聞こえて来た。

 耳から聞こえる言葉は日本語ではなく何処かの外国語の様で話の内容が全く分からない。


 声の方向に顔を向けるが人垣で視界を遮られているので僕には確認できない。

 僕が先程まで居た博物館とは全く違う石造りの天井とその角に壁がある事から何処かの建物の中だと言う事は分かる。

 声の主は感じからして年配の男性だと推測できる位。

 もしかして、僕達がここに居る原因の関係者なのかな?


『神々がお主達をこの世界”ファーレシア”に召喚した。 全ては復活する邪神を討伐するため。 これからお主達は邪神討伐のためにこの国、サンドリオン帝国で訓練を受けてもらう。 見事、邪神が討伐された暁には神々がお主らの望みを叶えてくれよう。 勿論、元の世界に帰還する事もな』


 僕達は絶句する。

 どうやら僕の予想は当たったようだ。


「チョッ!? 何勝手な事言いやがるんだ、糞爺!!」


「そうよっ!! 私達にそんな力あるわけないじゃない!!」


「これは立派な誘拐だぞ!!」


「今すぐ返してくれ!!」


「私、そんなのと戦いたくない!! 死にたくない!!」


 そこかしこから不満と拒否の声が聞こえる。

 そりゃあ、みんな反発するよ。

 僕だってこんな分け分かんない事に巻き込まれて腹立つし!


『ええい! 静かにせぬか! これは我らが決めた事ではない! 全ては神々が決められた事! 我らにもどうしようもないのだ! それに、これは我々の世界だけの問題ではないぞ。 お主らの世界にも関わりがある事じゃ』


「ど、どう言う事だよ!」


「この世界と地球は関係ないでしょ!」


『お主らは知らぬのか? この世界”ファーレシア”とお主らが地球と呼ぶ、お主達の世界”トゥーレシア”は表裏一体。 もしこの世界が滅びれば、お主達の世界も滅びる。 それにな――お主達の事は、この世界の神々が日本国を支配する神々に知らせてあるそうだ。 特例という形で既に許可も下りておると聞く。 ――逃げる事は叶わんぞ』


「そんな!」


 ちょ、ちょっとっ!? そりゃ、日本政府は十年以上前に解体されて今は実質的に高天原の神様が治めているけど! これは流石に横暴だよ、神様!


「……邪神とやらを倒したら、本当に神が何でも願いを叶えてくれるのか?」


 僕と同い年位の少年が壇上に立つナハトラと名乗る人物に対して不遜な態度と言葉遣いで話す。

 その人は少年の態度を気にせず話を続ける。


『ああ、そうじゃ。 余程の無茶な願いでなければな。 それと高天原の神々は報酬として多額の財貨か希望する貴重な魔道具を一つ下賜するそうじゃ』


「俺はやるぜ! こんな機会滅多にないしな! 邪神を殺すのは俺達にしか出来ないんだろ?」


『そうらしいのう(正確にはお主達の内の誰からしいが)』


「ん? 何か言ったか? 後の方が聞き取れなかったが」


『何でもない。 では、話を進めよう』


 少年、お前も勝手に話を決めるなよ……。


 でも、向こうでも僕達が邪神退治に駆り出されるのは了承されてるのか。

 それではどうしようもないね。

 他の人達も不承不承で了承してるし。


 これはアレだ。

 第二次大戦中の民間人の徴兵と同じだ。


 世界では僕が生まれる十五年以上前は神様なんて迷信だった。

 けど、今では実在が確認されて実質日本を支配している。

 つまり、僕達は神様に逆らえない。


 嫌な世の中に成ったもんだ……


『お主ら自身の能力を儂らに教えて欲しい。 それを元に儂らが訓練メニューを組み立て個別に鍛錬してもらう。 そのために先ずはスキルカードを自分の体の中から出してくれ』


「何それ?」


「そんなの出来ないよ……」


 皆動揺している。

 そりゃそうだ。

 スキルカードなんて出せないし、そもそもそんな物知らない。


『なんと!? そこから!?』


 ナハトラさんは一つ溜息を吐くとスキルカードについて僕達に説明を行う。


『良いか? マナの世界に抱かれて生きるもの、生きとし生けるものは皆成長すると己の魂と心の欠片からスキルカードというモノが生まれる。 人の場合は十五歳じゃな。 そのスキルカードは鉱石や金属、非金属で出来ており、その種類によってその持ち主の強さを測る事が可能なのじゃ。 まずは出し方を説明する。 なに、簡単な事じゃ。 己の内にあるモノを感じれば良い。 後はソレに集中しながら体外に出すイメージをすれば勝手に出てきてくれる』


 簡単に言うけどそんな事出来るわけ……出たよ!?

 何か体の中心が暖かく光りながら出て来たよ!!


 ふ~ん、これがスキルカードとかいう奴なんだ。

 僕のスキルカードは七色の光沢を放つ石で出来ていた。


 その表面には何やら文字が表示されて――







霧島きりしま幸璃こうり舘梨たてなし運幸うんこう/ウ○コ)


スキルカード【アンモライト】


スキル適正:技能スキル、魔法スキル、具現スキル、特殊スキル(1)


取得スキル


  技能 【一般教養(地球トゥーレシア・日本)】

      【家事】

      【料理】

      【小柄投擲】

      【月影流剣術】

      【月影流二刀術】

      【月影流大太刀術】


  特殊 【甲殻】(1)







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