甲殻の竜騎士

真田 貴弘

プロローグ

「ここ……は……?」


 ザワザワと混乱する集団の中、僕、舘梨たてなし運幸うんこうは辺りをキョロキョロ見回す。

 僕はとある事情で背が同年代の子達と比べると背が低めなので周囲の学生達の体で視界が遮られ周りの状況が把握しづらい。


 僕は今、高校の修学旅行で京都に来ていた。

 修学旅行初日、宿に向かう途中、国立博物館に立ち寄り館内の展示物を見て回る。

 自由行動時間中は班毎に行動する事が義務付けられている。


 なので、僕はと見て回っていた。


 何故、担任の先生なのか?

 それは僕が学校から問題児認定を受けたからさ!

 理由は僕に問題があるとクラスメイトの誰かの親が話を広めたらしい。

 曰く、農地で棒を振り回して暴れている。注意しに近付けば持っている棒を使って警官相手でも暴力を振るう。

 他には居酒屋に出入りして飲酒をしているとか出鱈目な噂話もある。


 違うからね?


 僕がお世話になっている父方の伯父の勧めで始めた剣術――その鍛錬を伯父さんが所有している休耕地や倉庫でさせて貰ってるだけだから!

 ちゃんと伯父さんの承諾も貰ってるから!

 お巡りさんは剣術道場の同門で知り合いの人が時々相手してくれてるだけだから!


 あと、居酒屋も伯父さんが経営するお店を手伝ってるだけだからね!


 食費や学費、生活費だけじゃなくお小遣いも一ヶ月一万円も貰っている。お世話になりっぱなしじゃあ心苦しいんで、代わりに手伝ってるだけだったのに……。


 ――と、学校側に訴えても信じてもらえず。

 結局、僕は高校入学して数日で学校や教師達から目を付けられてしまいました……。


 担任と一緒なのも僕が悪さをしないか監視のためなんスよ。


 ちなみみに、僕は普段から髪も染めてないし、制服も正しく着用している。

 学校の授業も真面目に受けてるし、成績も全国で上位に入るくらい努力している。

 それでも不正をしたとか言われて疑われてるけど、そこはグッと堪えて我慢している。


 それもこれもお世話になっている伯父さんに迷惑掛けたくないからだ。


 そりゃあ、普段は無口で剣術の指導はとても厳しいけど、それ以外はとても穏やかで優し良い人さ。

 その奥さんや娘のお姉さんも良くしてくれるし。


 僕が両親のネグレクトで碌な食べ物も与えられずガリガリに痩せて死に掛けた時だって、夫婦揃って両親を怒鳴り付けて強引に僕を引き取ってくれたくらいだ。


 ただその後、伯父さんに連れて行かれた病院で診察を受けた時、僕は医者から栄養失調の後遺症であまり身長が伸びないだろうと宣告を受けた。

 その医者の言う通り、僕の今の身長は150cmちょっと。

 これ以上の成長は望めないだろう。


 でも、あのまま死なずに済んだのは紛れもなく伯父さんのお陰だ。

 感謝こそすれ、恨む筋合いはない。


 なのに、僕は伯父さんに迷惑を掛けてしまっている。


 ごめんね、伯父さん……。


 などと回想していたら行き成り眩い光に包まれた。

 そして気が付いたら大勢の他の学校の修学旅行中の生徒達と一緒にこの場所にいたんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る