信仰の結果
PURIN
信仰の結果
あ? 何だ、あんた?
「あなたが神様でしょうか?」
私? うん、神だけど、それが何?
「ああ… 本当に会えるなんて… お会いできて光栄です。◯◯と申します。ご存知ですよね?」
はあ? 知らん。
「え… 毎日あなたのためにお祈りしたり生贄を捧げたりしていたんですが… あ、ごめんなさい。そうですよね、あなたを信仰している人はたくさんいるから、いちいち覚えてらっしゃらないですよね…」
何言ってんだ? つーか、あんた死んだ人間だろ? よくこんなところまで来れたな。何しに来たんだ?
「神様が褒めてくださった! ええ、大変でした。ですが、あなたにご報告したい一心で、必死にここまでたどりついたんです!」
ご報告?
「はい! あなた以外の神を信仰する邪教の信者共をたくさん殺したんです! 生涯をかけて、数えきれないくらい大勢!」
…
「あなたの信者として、心から誇りに思っています! 命を落とすその瞬間まで、あなたの邪魔になる連中を排除し続けられたんですから!」
お前… 何を言ってるんだ?
「はい?」
何を「さあ褒めてください」みたいな顔してんだ? 人殺しなんてダメに決まってるだろ。
そもそも、さっきからお祈りとか生贄とか私以外の神様とか、何のことだ?
「え… いや、あなたを崇める△△教の教えに従ったまでのことですよ? 『他の神を信じてはならない』と。このご本にも書いてあるじゃないですか」
何だこの本?
「ご、ご存知ないはずはないでしょう! あなたのお言葉が記された尊いご本です! 世界中で何万人もの人達が読んでいるんですよ!」
…知らん。パラパラ見てみたがこんなもん全く知らん。私こんなこと言ってないし。こんなのを何万人もが読んでるのか? 騙されてるぞ?
「ご、ご冗談を…」
いや本当。大体本ってことは、人間が勝手に想像して書いたものだろう? その時点で気付け。
「し、しかし、私は、ずっとずっとあなたのために」
「あなたのため」? 私のためになど全くなってないぞ。私は人間の世界に興味がないから、何が起こってるかも、誰が何をしてるかも知らんしな。
お前は勝手にインチキ本がでっち上げた素晴らしい「神様」のイメージに惚れて、勝手に何の根拠もない教えに従って、勝手に人殺しをしただけだろう。
あとな、ここに変なこと書いてあったけど、私は人間の生活に干渉したことなど一度もない。
「ですが、私があなたの教えに従った日はいつもいいことがあって、あれはあなたのおかげだと…」
偶然かこじつけだ。
「しかし、世界を作ってくださったり、我々を愛してくださっているのは事実…」
嘘だ。私はいつも何もせずここで眠っているだけ。
世界はいつの間にかできていたものだし、人間の身に起こる出来事に理由なんてものもない。
眠ってるだけだから、人間を愛してる暇なんてのもない。あとな、考えてもみろ、愛してる相手に「人を殺せ」なんて命令する奴なんているか?
お前の信じる「神様」など、どこにもいない。
「そんな… では私のしてきたことは、私の人生は、一体何だったのですか⁉︎」
知らん。まあ、はっきり言えば、全くの無駄だったんじゃないか?
「……………あ、で、でも、そしたら、悪いことをした人間が死後に行かなきゃいけない世界も存在しないんですよね? 良かっ…」
あの世界は実在するぞ。悪人を野放しにするわけにはいかないのでな。
そのうち迎えが来る。逃れられないぞ。残念だな、デタラメを信じて人殺しなんかしなければいいところに行けたのに。
「そんな… 助けてください!」
悪いな、どうしようもできない。まあ自業自得だ。
「こんなの… こんなの、理不尽だー!」
信仰の結果 PURIN @PURIN1125
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます